ざっくり源氏物語#8 夕顔②
源氏に歌を送ってきた女性の素性を知りたい源氏。
よく考えてみれば、これは「逆ナン」でございます。
さらっと読むと、風流なさみしい女性(というかその後のこともあり薄倖感ある美人)と思われますが、かなり積極的なナンパでございますね。
隣の家の人は貴人の関係者である、ということもわかっていたのかもしれませんしね、なんなら乳母、源氏自慢とかめっちゃしてたかもしれませんし。
そしていよいよ源氏が見舞いに来た時、「これがあれだ!」と思って観察している感じ。そして、花を手折ったとたん扇を出してくるあたり、準備してますよね感ありよりのあり。
だから、「その気があるんだな」と源氏もめちゃくちゃ調査するわけです。
空蝉はすごく冷たくフッたから、心に残る。もし相手もすごく乗り気だったら、きっと一夜の遊びで終わってた、と書いてあります。まあそうだろうな。あと、あの「雨夜の品定め」の話を聞いた後だと、人を見る目が広くなるよね、と書いてありますね。(いとど隈なくなりぬる御心なめりかし。、隈なく見るようになった、と)
空蝉の夫が任地から帰ってきた。空蝉はいろいろ心苦しく思うけれど、源氏についてはもう分不相応な思いをすることはない、けれど、やっぱりすこしは心残りがあるもので…夫は次は任地に連れて行くと言っているので、もう会うこともないだろう。とはいえ、空蝉にも女心はあるわけです。
「さるべき折々の御答へなど、なつかしく聞こえつつ、なげの筆づかひにつけたる言の葉、あやしくらうたげに、目とまるべきふし加へなどして、あはれと思しぬべき人のけはひなれば、つれなくねたきものの、忘れがたきに思す。」
折々にお手紙をくれるからその返事は工夫するし、筆使いや言葉選びにも工夫して「あわれ」がわかる人であることを感じさせるやり取りで、忘れがたい人になっていました。
そうこうしているうちに秋になりました。
「人やりならず、心づくしに思し乱るることどもありて」
人やりならず、っていうのは人のせいにできないこと。「心づくしに」
というのは古今集から「木の間よりもりくる月の影見れば心づくしの秋はきにけり」という巻第四 秋歌上(詠み人知らず)の歌の一部引用です。
木々の間から漏れる月の光をみていると、さまざまに物思いをさせる秋が来たことだ。月の光に秋の訪れを感じとり、秋になると心静かに物思いに耽る姿が描かれていますが、物思い、とはだれかを思う、ということで、好きな人のことで物思いにふけるわけですから、お相手は藤壺女御ですね。現在残っている限り、源氏と藤壺の女御がいつ関係を持ったか、ということは書いていないので、(ってどっかでもう書きましたね)そんなこんなで、御所から移動しない日々が続いていました。ゆえに、本妻、葵の上(左大臣家の姫)は全然源氏が来ないので、恨みがましく思っていました。もう一人、六条の方には、なびかない間は一生懸命に通っていたけれど、口説き落としてからはつまらなくなって熱意がなくなって疎遠になっていました。
六条は思い詰めるたちで、年齢も源氏と自分はつりあっていないのでは、とも思うし、源氏が来ない日は何があったのか、もう来ないのではないか…など考え込んでしまうのでした。(ほかに趣味を見つけたほうがいいよ!)
源氏が六条のところから帰る時、ご丁寧に女房の中将の君を口説こうとする場面がすごく美しく描かれていて、「なんなん?」と思うのですが、そういう姿すら、六条さんにとっては美しい(そしてかわゆい)わが君なのでしょう…
源氏は若くて神々しいのです。
「大方に、うち見たてまつる人だに、心とめたてまつらぬはなし。」
大方に、とは一般的に、みたいな意味です。だから特に知らない何のかかわりあいもない人でも源氏を一目見たら心にとめない人はいないだろう、という意味で、ただのイケメンじゃない、ってことですね。
たとえ何の風流もわからいような山賊だってどうせ休むなら花の下がいい、と思うくらい源氏を見たら人目で好きになっちゃうそんな花のような人であった。
そんな中、惟光は毎日隣んちを観察して報告してくれる。(暇だからだ)
「どうも隠れて暮らしているらしい。ある日頭中将の車が通った時に童女があの人がいる!この人がいる!と名前を上げていたので頭中将の関係者では
ないだろうか」というので源氏はピンときた。「雨夜に話していたあの話じゃないだろうか。確かめたい!」
どうも惟光は内部に情報源を持ち手引きが出来るようになっていました。
夕顔のことを教えてくれた随身と惟光、そして童を一人だけ連れて、牛車も使わず(惟光の馬を源氏に貸して、惟光は走っていった、とあります。)「こんな熱心とは何かある」と惟光は手引きをした。
源氏は身分を隠して女の家に行くときは、身をやつしていたし、女も不思議に思っていたので、後をつけさせたりしたが、それを撒いて帰るという状態で、そういう恋愛は楽しくて源氏は夢中になってしまい、昼はぼーっとして夜はいそいそ出かけるが、顔も見せず、身分も明かさずなので、女はどうしたものかと思っていたのでした。
というわけで事件が勃発するんだよね!