性被害者が風俗に堕ちた話

この話はうまく書ける自信がない。
無理をしない程度に(それが分からないんだけど)書いてみようと思う。

まず前提として、私は幼少期から問題のある家庭で育った。統合失調症の姉が暴れて暴力をふるう環境だった。家庭内は常に恐怖に溢れていたし、両親は私のことを気にかける余裕はなかった。

中学で不登校を経験し、地元の私立女子高に入った。そこで出会ったのが定年間際の教師のSだった。Sは私のように問題を抱えた生徒を専門に見ていた。Sは私の状況を理解してくれた。Sに言われて学問に打ち込み、成果を上げた。毎日一緒にごはんを食べて勉強した。Sと一緒に旅行にも行った。今で言うグルーミングというやつなのだろう。大学もSの言った通りの女子大に入った。

当時は携帯電話が普及していたので(これが不幸だった)、大学進学後もSと連絡を取っていた。逐一あったことを報告させられていた。Sには学問に打ち込むことを命令されていた。男子との交際は禁じられていた。「お前は男で身を滅ぼす」。そう暗示をかけられていた。

ある冬、私はとある男性と知り合って、恋愛関係に発展しそうになった。ところが、Sの暗示が拭えず、恐怖からパニック発作を起こして実家に帰ることになった。
そこでSは私をスキー場に連れていった。高校時代から行っていたので、誰も疑わなかった。スキー場の宿で、私はレイプされた。逆らったら酷いことが起きると思っていたので、逆らえなかった。気持ち良いと言うようになるまで毎晩犯された。痛かった。辛かった。

Sの洗脳はますます強くなっていった。毎晩裸の写真を送らされる。休みのたびに旅行に連れて行かれて犯される。私は奈良も伊勢も大嫌いになった。男性と恋愛関係になりそうになるとバレてSが男性に暴力を振るった。そんな生活が何年も続いた。

とあるきっかけでSの洗脳から逃れることができた。ここでも大変な目にあったのだけど詳細は省く。

そこからだった。私がおかしくなったのは。手当たり次第に男性と関係を持つようになったのだ。最初は職場や研究室など身の回りの男性だった。それから出会い系を利用して毎日違う男性と会うようになった。トラウマの再演と呼ばれる現象が起こってしまったのだ。

男性を屈服させられれば、トラウマから逃れられる。
私の受けた傷は大したものじゃない。

そう思いたくて、毎日楽しくもない行為に精を出した。

気がついたら双極性障害を発病していて、お金は当時の夫に使い果たされていて、夫は夜も帰ってこなくて、いよいよ性を売って稼ぐことを考えるようになった。病気のせいで子どもが持てないと言われたのが決定打になった。私がどんなに汚れても、子どもに影響がないならいいだろう。

近くの繁華街のデリヘルの事務所に行った。写真を撮られて、源氏名をつけられて、いきなり仕事に行かされた。既に感覚が麻痺していて、嫌だという気持ちにもならなかった。デリヘルなのに本番を強要されることに驚いた。その日は震えて帰宅したのを覚えている。

最初の1ヶ月くらいはぜんぜんお客さんがつかなかった。ところが、2ヶ月目から指名のお客さんがつくようになった。あっという間に売り上げ2位の人気嬢になっていた。今思うと、いいお客さんに恵まれた。優しい人や理解してくれる人が多かった。店長にもいいお客さんがついていると褒められた。だから私はいまだに、あの仕事がすごく悪いものだと思えずにいる。お客さんに救われた。男性に救われた。

ひょんなきっかけで、私は4ヶ月で風俗から足を洗った。それ以来すっかり男性関係に悩まされることはなくなった。

トラウマが克服できたのかどうかは分からない。
ひどい末路を辿ったと言われればそうなのかもしれない。
Sはとっくに苦しんで死んでいて、私にはもう殺したい相手もいない。
私は明日からも生きていく。
何もなかったかのような顔で。

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