1月に内定辞退した話
「挑戦してよかったこと」というお題を見つけたので、思い当たる私のエピソードを書いてみようと思う。
人生の中であまり挑戦してこなかった私だけど、「たしかにあれは挑戦だったかもしれない」という話がある。12月に新卒の就活をやり直したことだ。
大学生の就活のスタート時期は時代によって変わるから最先端の情報はわからないんだけど、私が就活をしていた8年前は3月くらいに就活が解禁されて、早い人で5月くらいに内定が出ていた気がする。
私も多くの大学生と同じように3月に就活を始めて、5月くらいに地元企業の内定をもらった。
就活スタート当初は、東京に本社を構える企業ばかりを受けていた。地方出身で大学も地元だった私は「東京で働きたい!」と夢を膨らませ、メーカーを中心にESを送りまくった。
しかし地方私大学生の就活は厳しいのなんの。しかもFラン。東京の企業はことごとく不採用が続く。エントリーシートで落ちる。ESが通っても一次審査で落ちる。こんなことなら東京の私大に行けばよかったと何度後悔しただろう。地方から東京まで採用試験を受けに行くから、お金も厳しくなっていく。
一方で、保険として受けていた地元企業の就活はうまくいく。あれよあれよと最終面接まで進む企業が複数でてくる。地方の企業だから大学名とかはあんまり気にしないんだろう。フジテレビ系地方局のアナウンサースクールに通っていたこともあり、結構ハキハキ喋れるわたし。好感触が続いていた。
就活の辛いところは「このまま落ち続けたらどうしよう」という不安と戦うところだ。懐事情も厳しい。3月に始めて、私は5月に根を上げた。2ヶ月前までは「絶対に東京で働きたい!」と思っていたにも関わらず、全く一次面接以上に進めない状況から簡単に東京の企業を諦め、1番早くに内定をくれた地元のメーカーに就職を決めてしまった。
今思うと「もっと頑張れよ自分!!!」と喝をいれたくなる。挫折した経験があまりなく、「このまま落ち続ける」という恐怖に打ち勝てなかったのだ。あと他にも友達が内定したとか、彼氏が地元で働いていたとか、そんなしょうもないことも気にならなかったわけではない。
そして内定をもらった地元メーカーでは、7月頃から早速インターンが始まった。実際はインターンと称したただのアルバイトなのだが、ほぼ強制で働くことが決まる。内定中の学生には「バイトなんてしたくありません」なんて言う権利はない。
最初は期待に胸を膨らませ、「頑張ろう!!!」と意気込んでいた私。内定式では「入社一年目の教科書」をもらった。しっかり熟読し、「自分から動ける人間になろう!」なんてことを考えていた気がする。
しかし。
現実はそんな甘いものではなかった。
インターン(という名のただのバイト)を始めてみると、気づいたことがある。
辛いのだ。仕事が。
そう。めっちゃ辛い。
難しいことを要求されていたわけではない。
なんなら作業は簡単なものが多かった。
パワハラやいじめに遭っていたわけでもない。
同世代の子がたくさんいて、友達もできた。
大学1年生からずっとアルバイトをしていて、就業経験がないわけでもない。
今まで私にとっていつもアルバイトは「楽しいもの」だった。
でも、辛いのだ。
なにが?という感じだが、私は「なにが辛いか分からないけれどなんか辛い」という状態に陥ってしまった。
なにが辛いかを言葉にできない、自分でなにが問題なのか認識できない。けれど、「なんか辛い」と感じている。そんな状態が数ヶ月続く。
最終的にバイトに行く日は朝起きれないという状態にまでなってしまった。結局ギリギリまで布団にいて、ギリギリ出勤はするのだが、こういった状態になることが始めてで、自分自身に絶望を感じたのを覚えている。
自分で言うのもなんだが私は割と要領が良いタイプで、学校の課題やアルバイトなど、何でもそつなくこなしてきた。目立つほどできるわけではないが、平均ちょっと上くらいはできる。自分が「仕事ができない」と思ったことがなく(社会に出てもいないのに)、自分の人生は順風満帆にいくものだと思っていた。(こういう「自分は結構できるタイプ」なんて思っているところが典型的なゆとり)
しかし、辛い。
まだインターンなのに辛い。
春からは社員として働かなきゃいけない。
「嫌だ」と思った。
しかし、それが自分のせいなのか、仕事のせいなのか分からない。
ゆとり世代のわたし。「すぐに辞める新卒社員」みたいなのに批判が集まる世の中。
私自身が「ゆとりの出来損ない」だから働くのが辛いのか?私自身が社会人に向いていないのか?こんなことで辛いと感じる自分が悪いのか?
季節は秋。もうすぐ冬が始まる。ただひたすら「辛い」という気持ちだけが溜まっていく。
「どうしよう。働きたくない。どうしよう。嫌だ。働きたくない。4月から社員になんてなりたくない。」
そんな迫り来る将来(具体的には来年4月)への絶望が最高潮に達していた時期、ある言葉を目にする。どこで目にしたのかは忘れてしまった。割とよく聞く言葉かもしれない。
それは
「めんどくさいことはやった方がいい。嫌なことはやめたほうがいい。」
というもの。
私はこの仕事をめんどくさいのではなく「嫌」と感じている。
これはやめたほうがいいんだ。
「よし、違うところに就職しよう」
私の決意が固まる。
しかしその頃にはもう12月。マイナビを見てもブラック企業だと囁かれるような企業しか求人は残っていない。今の内定先よりも何だか辛そう。
絶望の果てに私が目をつけたのは、中途採用の求人サイトだ。
もはや中途採用で出てるところに頼み込めば新卒として雇ってもらえるのでは??もうヤケクソだ。
するとひとつ、気になる求人を見つけた。聞いたことある名前の製造メーカー。総合営業職。
「ここだ!」と思い、応募するとすぐに連絡がきた。12月末。一次面接は支店で行われ、オフィス内の小さな小部屋で支社長と二人で面談をした。優しい支社長で穏やかに面接が進む。新卒の時の殺伐とした面接の雰囲気とはずいぶん違う。リラックスして話せたのがよかったのか、次の日にすぐ最終面接の連絡がきた。
最終面接は1月の年始明けだった。飛行機に乗り、本社へ向かう。一次面接の雰囲気がのんびりしていたから、そんな感じかな?と思い面接に臨んだら、役員や営業部長勢揃いのガチ面接で恐れ慄いたのを覚えている。
「大丈夫かな…」と少し不安になったが、次の日に電話で内定を告げられた。
なんと、1月に内定が出たのだ。
中途採用として応募したが、新卒採用でとってもらえることになった。
こんな最高なことがあるだろうか。
1月の内定辞退が企業に迷惑をかけることは知っている。
その後、元々内定していた企業の役員と人事担当の人にはしっかり怒られた。
ついでに父親にも怒られ「お前みたいな奴はどこに行っても通用しない!」と数ヶ月口をきいてもらえなかった。
あと大学の就職課の人にも呼ばれて、小言を言われたっけ。
しかし、インターンで一緒に働いていた現場の社員の人はみんな口を揃えて「そっちの方がいいと思うよ」と言ってくれた。これが私が辛いと感じていた理由なんだろうと自覚したのを覚えている。
社員が内定者に「この会社じゃない方がいい」というのは、かなり深刻な状況なんだと思う。
従業員が不満を持っている環境。
この職場が良いものではないと従業員が思っている雰囲気。
言葉では言い表せないけれど、やっぱり長くは働けない職場だったんだと思う。
私は結局1月に内定した企業に就職した。
元々内定をもらっていた会社よりも給料も年間休日数も多く、同期もいい子で今でも仲が良い。先輩上司に恵まれ、「こんな楽しくてお金稼げるなんて最高〜!」という日々だった。
こんな就活失敗体験を通して私が悟ったのは「仕事は合う合わないがある」ということ。
「なんか辛い」という違和感を無視するのは良くないんだと思う。「なんか辛い」っていうのは、絶対に自分の内なるサインだ。
めんどくさいなら頑張った方がいい。でも嫌だと感じるならやめたほうがいい。
日本には「頑張れない自分が悪い」みたいな風潮がある気がする。だから、多少嫌なことがあっても我慢して頑張り続ける人が多いし、それが良いことだとされる。でも、私は個人の努力よりも結局は環境の方が大事だと思う。自分に合った職場が見つければ、自分の力を最大限に発揮できる。そして正当な評価を得ることができる。
内定辞退は迷惑をかけるけど、でもその人たちに気を遣って自分をすり減らすのはばかばかしいと思う。人事部の人たちが自分の人生の責任をとってくれるわけじゃない。
10月に入って、もう多くの学生が企業に内定していると思う。でも、私みたいに「なんか違う」と感じているなら、やり直すのも大いにアリだと思う。就職してからよりも、絶対に今の方が動きやすいはず。
自分の人生に責任を持てるのは自分だけ。
「嫌だ」と思うことは切り捨てたっていいと思う。
自分のために。
これが私が人生で1番「挑戦してよかった」と思っている体験。
12月でも就活挑戦してよかった!!