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ビジネスxデザインの海外ニュースと雑感(2020.07.25)

今週も最近読んだ海外記事の中で、社会変化を予感させる「ビジネスxデザイン」に関する情報を、一言添えてご紹介します。前回分はこちらです。

時代が変わっても本質的に変化がないものを抑えつつ、急速に社会変化が進むなかで、グローバルの動向をウォッチしていこうと思っています。現代人が1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分だったとも言われ、ますます、最新の情報を高速にキャッチしていくことが重要です(元記事)。

お金のバラマキの誘惑

経済誌エコノミストの記事「政府は無料のお金の誘惑に意識的になるべき」から。世界各国でコロナによる経済の落ち込みを安定させるため、政府と中央銀行による大規模な金融緩和が進められています。日本でも、企業向けの融資を110兆円規模で資金繰りを支援したり、給付金の支給、国債やETF買い入れなど、かつてないほどの金融緩和を実施しています。IMF曰く、先進国は今年、GDPの約17%を借り入れすると予測しており、短期的なものではなく、新しい経済の時代に入ったと考えられ、1930年代の大恐慌、1970年、80年代の経済動揺などと同様に新しい金融政策が必要だろうと述べている。チャレンジはいかにして「経済を政策によって、支配することなく、ビジネスサイクルが回るようにマネージしていけるのか」だと言います。日本でも日経平均がコロナ以前の水準に戻っていますが、経済が回復したからなのか?消費者の心理が上向いたのか?あるいは日銀の積極的な介入を反映しているのでしょうか?世界的に、衛生的であること、密にならないことが最優先されるなかで、フィンテックやデジタル通過のような新しいお金の仕組みが急速に進展しています。加えて、例を見ないほどの金融緩和が実施され、世界的にダウンシフトを迎えていることから、歴史的にみても教科書に載るような新しい経済を迎えていくこと(どんな形であれ)は間違いないのだろうと感じます。

消費者心理をくすぐる"メディカルミニマリズム"

Decimというスキンケアブランドの"売らない"ブランド戦略についての記事。パッケージのデザインからも分かるように、プロダクトを積極的に売ろうというよりは、売ろうとしていないようにも見えるミニマルなデザインは意図的に、消費者の心理をくすぐるものになっているという。美しくきらびやかなデザインではなく、白・黒・グレーという落ち着いて色を用いている。しかし、スキンケアといったメディカルブランドではこういった例は少なくないと言います。クリニークは1968年に世界で初めて、売らない(ミニマリズム)の思想でブランド戦略をとったそうです。この戦略はどの顧客層にもささるわけではないが、唯一確実に響く層がいて、それがミレニアル世代(1989年~1995年生まれ25歳~30歳程度)だといいます。この世代は非常に身体に何を使うのかに対して非常に敏感で、ブランドに対して、透明性や信頼性を他の世代以上に求めるという。この世代をターゲットにするのであれば、シンプルで洗練されたデザインに数字や実績を示すといったパッケージングが必要だと考えられる。質にこだわるミニマルなプロダクト/サービスを好む傾向は、スキンケアに限らず、ファッション、カフェなど、ライフスタイル領域全般に共通していると感じています。その先駆者としてのスキンケアミニマリズムから学ぶべきことは多いのではないでしょうか。

パスワードに潜むバイアス

デジタル化の進展とともに、私たちが使用するパスワードは増え続けている。できるだけ覚えるパスワードの数を減らし、できるだけ簡単にかつ安全にパスワードを保管したいと思う人は多いのではないでしょうか。この記事では、LGが採用しているノックパスワードと呼ばれるパスワードの脆弱性についての研究を紹介している。下図に示すように、自分の好きな順番で画面をタップしていくスタイルのパスワードで、LGは、完璧なセキュリティで、覚えやすいとうたっている。米国だけで250万人がこのパスワードを使用している。ランダムに設定されれば、想像以上にパターンが多く安全性が高いと信じられていた。しかし、実際には、全パスワードの約18%がわずか4つの順番を採用していた。問題は左上からタップし始める人が多いという。この記事を読んで、人間はある程度共通の性質を持ち(覚えやすいパターンや癖のあるパターンが似通っているなど)、他の人から推測されにくいものを生成するためには、自分自身も覚えにくいものにする必要がある。我々は、いかに無意識なバイアスをもっていることを考えさせられる記事でした。

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歴史を刻むー特別な1年を記録しよう

美術館は新型コロナウィルスのパンデミックに関する物を夜なべして収集しているという。記事のトップ写真にあるのは、3月5日にコロナの感染が発覚した患者さんの日記だ。他にも、ロサンゼルスの都市に人がいない光景の写真、閑散としているを収録したもの、自主隔離中に住民らが窓から手を振っている姿など、今、日常的に行われている多くのことは、貴重な資料になりうるかもしれない。何年後か過去を振り返ってみてみると、あるいは、歴史の教科書に載る未来になれば、今、私たちが経験している社会の混乱は重要な1ページになっているのかもしれない。だとすると、たとえ私たちがコロナが感染拡大している社会に慣れてきているとしても、できるだけこの当たり前な日常の非日常的である面を認識し、日記をつけたり、写真をとったり、記録していくことは面白いのかもしれない。もしかすると、スーパーではなく、ネットショッピングで、1週間分の食材を買ったり、一切外食をしないという手帳も2度と訪れない記録なのかもしれない。

マスターのための新しい学校

毎週、Derek Siver氏(元ミュージシャンでオンラインCDストアの起業家)のブログから抜粋しています。今、教育のオンライン化が物凄い速度で進んでいます。「習得のための学校」という新しい学校に関するアイデアは、リモートを基本とする小さな学校で、自分が選択したスキルを身につける場所です。同じスキルを身に付けたいがオンライン上で集い、あとは、その分野のエキスパートである数名の"コーチ"がいるだけ。今までの「宿題」と「教室」の概念をひっくり返したようなアイデアです。基本はオンラインでの独学であり、コーチがその習得するという仕組みです。実際の学校はそのスキルに1番適した場所にあります。スキーならば北海道、プログラミングであれば、静かで集中できるインターネットが早い場所、デザインであれば芸術の街にといった具合で。今の時代に置き換えてみると、この学校のいいところは、好きなスキルを選択できる、オンラインで自分のペースで場所にとらわれずにできる、でも、友人やコーチといった繋がりがあり、インプットは効率的に行い、アウトプット(スキルの習得)をコーチのサポートのもとで行うことができる、いわば、リアルとリモートのいいところどりの教育方法だということです。日本でもタブレットの支給が遅れたり、先生も教室とは違うリモート環境での講義に慣れなかったりと、様々な問題が浮き彫りになってきています。私が留学していたフィンランドではスムーズに対応できている(比較的)とニュースをみました。その背景にはITリテラシーだけではなく、「先生の役割がティーチャーというよりファシリテーター(コーチ)に近い存在である」ことがあると感じています。教えられるではなく、自らが勉強したい、習得したいことを学びに行っているからこそ、オンラインで自ら学び、コーチとしての先生にサポートをしてもらう仕組みが機能しているのではないでしょうか。リアルとリモートのベストミックスがどのような形になるのか楽しみに感じます。

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コロナの状況によって我々のライフスタイルや経済環境、グローバルな移動が変わるなか、ますますマクロ環境の変化をウォッチする重要性が上がっているような気がします。毎日SNSをなんとなく見る時間を、能動的なインプットの時間に変えていきたいと思っています。

Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash





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