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"創造性"を学習可能にする最新の研究ー進化思考を読んで
友人から勧められて「進化思考ー生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」という書籍をGW中に読みました。
創造性を高めたい理由は人それぞれですが、デザインや企画といったクリエイティブな職種についている人だけでなく、近年では、日々の業務のなかで提案力を高めたい、兼業で収入を上げたいなど、誰にとっても必要なスキルや能力として関心が高まっていると感じています。
進化思考を読んで改めて感じたのは、これまでデザイナーやアーティストといった限られた人の特権と考えられていた「創造性(クリエイティビティ )」は誰でも「学習可能かつ実践可能」になりつつあるということです。
その背景には、いわゆる「デザイン思考」に代表されるような、創造性の型のような体系知が「研究」により急速に進んでいることがあります。
創造性に関する研究は、
1. 創造性が高いといわれるデザイナーについての研究
2. 人工知能に創造性を実装する研究
3. 創造的に発想している脳のネットワークについての研究
など、さまざまな分野で発展してきています。
進化思考では、生物の進化とのアナロジー(比喩)により、創造性に馴染みの薄い人でも体系知を学習しやすいこと、自然科学に近い視点からより創造性の本質に迫ることができること、といった点でとても参考になります。
だれでも学習可能で実践可能になりつつある創造性(クリエイティビティ)について、その研究分野を少し振り返り、私たちが創造性を実践するヒントを探ってみたいと思います。
1. デザイナーの暗黙知の研究
創造性と聞いて真っ先に想像する第一線で活躍するデザイナーの思考法を研究する領域があります。
Double Diamond Process(出典)
例えば、イギリスデザイン評議会が、Appleや任天堂などのトップデザイナー約50名に深くインタビューをして、そのアプローチを体系化したものにDouble Diamond Processと呼ばれるデザインモデルがあります。
元々デザイナーとして活動している人にとっては、言われてみれば当たり前のアプローチではあるのですが、私のように非デザイナーから創造的に事業やサービスを発想する取り組みをする人にとって、強力な武器になります。
デザイン思考やUXの考え方、あるいは、エフェクチュエーション(デザイナーではないが、成功した起業家の思考を研究したもの)など、創造性を発揮する人を対象とした研究の成果が活用されています。
一方、デザイナー視点というよりも、ユーザーの立場から使いやすさや心地よさについて、心理学や認知科学の視点から研究された成果を創造性に活かそうとする領域もあります。
人間の認知(どういったモノや体験が価値だと認識されるか)に関する研究は、想像的な発想方法やデザインアプローチに取り入れられてきています。
2. 人工知能(AI)に創造性を実装する研究
創造性は人間のみが発揮できる能力であるとかんがえられていますが、現在急速に進化する人工知能(AI)にいかに創造性を搭載するかという研究が、進んでいます。
人工知能(AI)が自動生成したロゴ
この分野で有名な認知科学のMargaret Boden先生は、創造性には次の3つの方法があるといいます(引用文献)。
・結合型:新しい組み合わせ
・探索型:まだ知られていないことを深掘りをする
・変革型:これまでに領域で発想する
このように3つに分解したうえで(実際にはより詳細に考えていますが)、人工知能にそのプログラムを実装することを試みています。
この分野の歴史は想像以上に長く、少なくとも1990年代から取り組まれているようです。(2004年にThe Creative Mind: Myths and Mechanismsという名著が出版)
私たちが創造性を実践するうえでは、この3つの型がどのようなプロセスで構築されているか知ることで、意識的に活用しやすくなると思います。
3. 脳のネットワークから創造性を研究する領域
上記の2つと異なり、人間の脳というミクロな世界に踏み込み、神経科学的にクリエイティビティを発揮するうえで重要な脳内のネットワークについて研究が進んでいます。
神経科学におけるクリエイティビティの論文発行数
例えば、新しいアイデアが生まれるときの脳活動の起点は、デフォルトモード・ネットワークと呼ばれる「あれをやろうと意識的にタスクをこなそうとしていない状態」だと言われています。
脳のクリエイティビティを高める心理的安全な状態
目を閉じて自分の心臓の音を聞いたり、頭の中で思いつくことを考えたりするなど、自分自身の内側にあるいろいろな状態を目を向けている時に、ふといいアイデアを思いついたりすることがあると思います
起業家に瞑想を習慣にしている人が多いのも創造的になりやすい状態を作るためと言われていたり、既に一般用語になりつつある心理的安全な状態も、このデフォルトモード・ネットワークに入るための前提条件だと考えられているようです。
出典:BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは
4. 生物の進化と創造性の関係性についての研究
ここまで3つの視点から創造性について研究されている例を見てきました。
冒頭でご紹介した進化思考は、ヒトが作り出した発明より、「自然のほうがはるかに緻密で効率的なデザインを構築している」、つまり、自然のほうが創造がうまいという視点から、生物の進化とのアナロジーを用いて、創造性の本質を説明しています。
人類の起源と進化(wikipedia)
たしかに、上述の3つの研究では、「人間を中心」に創造性が分析されていますが、自然のほうが創造性に長けているのであれば、生物の進化を分析をする方が、より創造性の本質に近づけるのではないか、と思います。
内容については、ここで短くまとめるよりも、書籍を読んでいただいた方がいいと思いますが、経験的に実践してきた創造性という捉えどころのない、コンセプトについて、生物が「変異」と「適応」を繰り返しながら進化してきたように、自在にその進化思考を往復させることで、意図的に「創造的になる可能性を高める」素晴らしい視点をいただけます。
個人的には、前半の「変異(HOW)」ーどのように固定観念を超えて新しい発想を生むかの章よりも、後半の「適応(WHY)」ー創造性の全体構造を探る4つの観点についての視点が特に面白かったです。
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「創造性(クリエイティビティ)」というテーマについて、さまざまな領域で進む研究を振り返りながら、誰でも学習可能で実践可能な時代に入りつつあるということを書いてきました。
詳細には踏み込みませんでしたので、興味がある方は参考文献など見ていただけれたらと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
コメントや質問、今後取り扱って欲しいテーマなどあればご気軽に連絡ください。
Photo:Espoo Museum, Espoo, Finland
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