ショートショート「高いところが怖いサンタ」
俺はサンタ。父がサンタ65代目を引退して早10年。
長男である俺は生まれた頃から将来が決まっていた。
小学校のサッカー部で点を決めれば「お見事66代目!」、
中学校でバレンタインデーにひとつチョコを貰って帰れば「よ!66代目!」、
高校で生徒会長を務めれば「さすが66代目!」そんな調子だった。
本当はサッカーの試合では俺の前を走っていたエドワードがゴール前でつまづいてたまたま俺の足に当たったボールがゴールに入っただけだし、バレンタインは帰りに寄った本屋のおばちゃんが皆に配っていたものだし、生徒会長はジャンケンで負けて決まっただけだ。みんな俺に期待しすぎなんだよ。しかも俺は・・・
高所恐怖症なんだ。
今年も恐怖のエックスデーがやってくる。
毎年気絶しそうになる。
トナカイの野郎は3年目で俺のこの秘密に気づいたようで、それ以来スピードを逆にあげてくるんだ。結膜炎で目が痛い、と嘘をついて飛んでる間はずっと目をつむっていた。
今年はドローンが俺をずっと追いかけるという噂もある。アップで顔が映るのだろうか。だとしたらどう言い訳しようか。手元も映ったら俺は終わりだ。指先がブルブル震えているんだもの。
いっそのこと今年はクリスマスを中止にしようと何度思ったことか。
66代続いたこの伝統ももう終わりにして構わない。
怖い。
怖すぎるんだ空が。
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