私にとっていいお店 ドラフト
駅前のツタヤで「太陽はひとりぼっち」を100円で借りた後、いつもの赤い自転車にのって帰っていたら、見慣れない古本屋を見つける。窓枠がまるっこくてかわいい。お客はゼロ。こんなところに本屋なんてこないだまでなかったのに、と思う。「2階は自習室」という看板を入り口に見つける。「自習?え、なんの自習?だれの、、?」子猫は私の存在にはまだきづかない物量の少ない本屋だった。男の人が目一杯手を広げたくらいの奥行きのふたと底のないワイン箱みたいなのが積み上げられていてそこに本が、すかすかにならんでいる。値札もない、、とおもってレイモンド・カーヴァーの本を手に取る。私は子猫の存在にはまだきづかない。これいくらですか?私はレジにいる男性の店員に訪ねる。「ここに、、」ページの間に挟まった紙に印刷されている。「これ買います。いつここオープンされたんですか?」「1週間ほど前から、、」私は子猫の存在にはまだきづかない。たぶん子猫も私の存在にはきづかない、もしくはきづく必要がない、もしくは気配くらいは。「猫は好きですか?」と訪ねられる。「はい、好きですけど、、?」「すぐ下に、、」眠そうな子猫がすぐ足下にいた。しゃがんで小さなかごの中の子猫をなでる。子猫の小さな顔が手のひらにすっぱり入る。ほとんど目を閉じている。寝転んだまま足をぴんと伸ばしあくびをした。まだ外の世界など何も気にする必要のない優雅な子猫がそこに。