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『氷点』 三浦綾子 #22-1


前々から気になっていた三浦綾子の氷点を読破。
最初不倫モノっていうことに抵抗を感じたけれど、読んでみたら65年作とは思えないくらい面白かった。
難しい、哲学的な物語かなって思っていたけれど、朝日新聞で連載されていた小説だからか娯楽面でも楽しく話のテンポも良かった。

登場人物がとても魅力的で、個人的に辰子が気に入った。辰子は主人公の母・夏枝の親友なのだけれど、夏枝の利己的な部分を認知しながらも、それでも友達として助けてあげる部分が印象深かった。

韓国生活での影響か、私はいくら親しい中でも相手が罪を犯した時には縁を切ることも必要だと思ったりしていて、ある意味辰子の夏枝に対する態度は興味深かったし学ぶ面が多かった。

物語始終夏枝は特に利己的に描写されるのだが、それでも夏枝を本気で嫌う人がいないというのは、夏枝がそれだけ愛される人物なのだからなんだろうなと思う。

それと同時に高木さんについて、読み始めた頃と、読み終えた頃には評価が変わっていた。
高木さんも辰子さんみたいに、人としてしてはいけないことがなんなのか心得ている人物で、始終主人公である陽子の身を案じていた。
けれど、最初っから陽子の素性を話していたら、このような悲劇が起こらなかったのではないだろうかと思えてならなかった。

人を許すこと、人を罰すること、人を評価すること。
この小説は冷徹に登場人物の底の利己的心理をを描きながらも、物語の構造において彼らを罰する場面はなかった。

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