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模写することで味わう世界

誰しも、文章にクセがある。

クセ、というと何か悲観的な響きだが、特徴やトーン、雰囲気、言い回し……。本当に、人それぞれだ。

現在、web案件は書評だけに絞っているが、その多くは本書から引用を書き、そこに基づきつつ、本そのものが語る主旨や、私の見解を添えていくスタイルだ。

そして、この引用を模写するのが、私にとってなかなかいい時間になっている。

書評で扱う本は、個人的な読書と違い、日ごろ自分ではあまり手に取らない本もたまにある。

そして、文章は、目で追うのと、実際に自分の手で書いてみるのとでは、少し感じ方が違うものだ。

もちろん、編集さんが組んだり調整したりする中で、著者純正の文章ではないことも、大いにある。海外の本は、訳した人のニュアンスでも、また違ってくる。

それでも、本文を模写する作業は、興味深い。

自分では日ごろ使わない言葉や言い回し、句読点のつけ方。

技術的なことだけではなく、それらのチョイスは、その奥にセンスや人柄や、人生やらが見え隠れしている。

不思議なもので、するすると模写できる文章と、引っかかり引っかかり、なかなか進まない文章と、私の場合はだいたい二分する。

自分に近しい文章とそうでない文章。心から共感できるものと、そうではないもの。人間だから、どうしても多少の選り好みは、無きにしもあらず。

どこかで目にしたが、良い文章を書くには、多読するよりも、良書や良文を読み込むことを推薦している人がいた。

それは一理あり、少し違う気もする。

もしかすると、正解がどちらというものではなく、タイミングにもよるのかもしれない。

私にとって、引用部分を模写する作業は、いろいろな食べ物の味を知って、じっくり味わうような感覚があり。

その技やニュアンスを取り入れるかどうかは、また別の話。

甘い、辛い、苦い、あまり好きじゃない、上手い!

さまざまなテイストを味わう時間は、なかなかいい。


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