[リメイク版]闘う!調理補助ー信用回復ー
その年、私は調理補助に就職して 初めての会社交代で、新しい工程、新しい人間関係に翻弄させられていた。
2019年7月、勤める病院の患者さんも 天候の変わり目でうなぎ昇り、提供する食事も数が多く、洗う食器も多い。
新しい工程、多くなった盛り付け量、私だけでなく、その事業所のチーム全体が疲労困憊していた。
私は、そんな中で大事件を犯した。
あろうことか、顧客である病院側の介護士さんに「配膳車を厨房に下げるのを手伝ってくれ」と、言ってしまったのだ。(顧客です!今までは、ご好意で降ろしてくれていた。わざわざこちらから要求なんて、できるコトではない)
病院側は、当然怒り、それ以来、M介護士さん以外の介護士さんは、配膳車を降ろしてくれなくなった。
私は、厳しく叱られた。
……………………………。
私は、辞めようとしたが、結局それができなかった。
なんだろう。わたしは………
どうして何時までも、ここに居るんだろう……何時までも、皆の足を引っ張ってるのに…………
私は、それ以来 抜け殻のように淡々と仕事をするだけになった。職場の皆にも多大な迷惑をかけたのだ。
朝の配膳、
職員さんの食堂から見える、竹林や小さな山々が青く、まだ葉の緑を残し、朝日に照らされ、風に揺れていた……。
お父さん、 お母さん…………
私は、わけあって駆け落ちしてこの土地に来た。
そして、ここで働いている……
いまの家に帰り、編み物をし、家事を終え、読み物をしながら、ふと思った。
そういえば、お父さんは私が大人になった頃、台所のシンクの水は最後にキレイに拭き取るコトだ、と教えていたな………
(明日、仕事場の職員食堂のシンク、キレイに拭き取るか……どうせ、1分、2分も違わないし……)
つぎの朝、
私は、ていねいにシンクの水を拭き取った。
最初は、上手く行かなかった。
水滴が少し残った。
次のときは、うまく拭き取れ、さらに私は配膳車の当直職員さんの箸やスプーンをキレイに揃えた。
そして、厨房にさがった。
私は、厨房にさがって
小鉢の盛り付けを始めた。
食堂直結のエレベーターのべルが鳴る……食器を下げる配膳車などを下ろすものだ。
「まもなく、エレベーターが到着します」アナウンスが鳴る。
(?…………、いつもは配膳車降りてこない筈なのに………、)
あの事件以来、介護士さんはこぞって配膳車を下ろすのをボイコットしている筈だった。なのに、………
奇跡がおきたのだーーーーー
配膳車は、3台ある……………。
一台 降りてきた……
そして、もう一台………
そして、もう一台……………
おわり
©2023.6.19.山田えみこ
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