忘れたい人
タイトルを見ると、「忘れたい人」=「人」のことと思ったかもしれませんが、今回の内容は少し違います。今回は、「人」だけではなく、「何か」を「忘れたい」と思っている人に向けて書きます。
世間では高齢化の波が押し寄せ、認知症になりたくないと思う人はいっぱいいるのではないでしょうか。
一方で、「忘れたい」と思う人もいっぱいいると思います。
失敗を忘れたい
嫌いな人を忘れたい
好きな人を忘れたい
傷ついたことを忘れたい
苦しいことを忘れたい
宿題を忘れたい
仕事を忘れたい
数えきれないほどの「忘れたい」があります。
そして、すぐに「忘れられる」人もいれば、「忘れられない」人もいて、すぐに「忘れられる」内容もあれば、「忘れられない」内容もあります。
でも、今これを興味をもって読んでくれている人は、おそらく「忘れたいのに忘れられない」と苦しんでいる人ではないでしょうか。
安心してください。
忘れます。
厳密にいうと、記憶としては忘れないかもしれませんが、「忘れられなくて苦しい、辛い、悲しい」という思いは薄くなります。
時間がすべて解決してくれる、とはよく言ったものです。
もし、「そんなことはない。私は何年も何十年も忘れられなくて、苦しい思いをしている」というのであれば、それは、その人自身がその「苦しみの中にいる」ことを選択しているのです。自分自身では気が付いていないかもしれませんが、自らの意思でそこに留まっているのです。
エビングハウスの忘却曲線をご存じですか?
ヘルマン・エビングハウスはドイツの生理学者で、記憶を科学的に測定する実験を始めて考案した人です。
覚えた無意味なつづりを忘れる過程を記録したんですね。
で、この図を見てみると、なんと今日の出来事を明日には74%も忘れているんです。
忘れないようにするには、定期的に何度も思い出して記憶を定着していく必要があります。
そして、フレデリック・Ⅽ・バートレットというイギリスの心理学者の研究では、自分になじみのない記憶は、自分に都合よくわかりやすい情報に変化して記憶すると言っています。
つまり、今日の記憶は、明日には74%も忘れているうえに、残っている記憶は自分の都合のいいように書き換えられているのです。
そういえば、この間、久々に電話をくれた友人と車の話になり、「あなたは10年前は赤い車に乗っていたよね」と言ったら、「私が10年前に乗っていた車はシルバーだよ」と訂正されました。私の記憶の中ではその子はいつも赤い車に乗っていたので、間違えているはずはないと納得できず、実際に写真を見返したら、車の色はシルバーでした。
シルバーが赤に変わって覚えられていたことが、どのように私にとって都合がいいのかはわかりませんが、とりあえず、記憶が変化していたことは確かです。
話は戻ります。
その「事」や「物」や「人」と関わらない限り、何度も思い出さない限り、確実に忘れます。
そして、もし覚えていたとしても、それは、あなたが屈曲した、あなたにとって都合の良い記憶にすり替えられます。
都合の良い記憶とは、嫌な記憶を良い記憶に変えることではありません。
あなたが生きていくのに都合の良い記憶です。
苦しみの渦中にいたい人にとっては、苦しみを反芻できる記憶を。
好きな人に振られたとしたら、その人の良いところだけの記憶を。
だから、いつかは苦しみから抜け出すことができます。
それでも、時間がたつと忘れてしまうという事実を受け入れられない人は
「いま」に集中することです。
過去や未来に意識が持っていかれて、空想の世界にいたとしても、そのことに気が付き、「いま」に集中することです。
それを繰り返すことで、忘れられない苦しみから早く抜け出せることができます。
「いま」に集中することが難しかったら、運動をしてみてください。ひとりでする項目より、勝負する項目がお勧めです。趣味を作ることもお勧めです。これも人と一緒に楽しんでできることがお勧めです。
そうやって、目の前のことに気持ちを集中しているうちに、手元の仕事に没入しているうちに、いつの間にか忘れています。
ゴールはあります。