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【写真日記】雨のなかを歩く郡上八幡・水のまち

GMに入って最初の日曜日。
私と夫は車に乗り込んだ。
向かった先は、郡上八幡(岐阜県郡上市八幡町)。
私達が住んでいる高山市からは、車で1時間半ほど。高速道路を通れば、約1時間で着く。


振り返ると、先月4月の1か月間は、私も夫も、心身共に深い海の底に潜り込んだような毎日だった。お互いにそれぞれの雑事に振り回されて忙しく、ずっと気持ちが鬱々していた。
スイッチを切り替えて、表向きには元気に乗り越えたものの、どこか気が滅入ってすっきりしない。

だから、5月に入ったら、どこか遠くへ行きたかった。
いつも居る場所とは異なる、ちょっと雰囲気が変わった違う場所に自分を置いてみたかった。そして、日常を離れて、煮詰まった心のガス抜きがしたかった。

こんなところから、お互いに「どこか遠くへ行こう」で意見が一致したので、休日を待ったのだ。

朝から100%の雨予報で、決して良いお天気ではなかったけど、夫が仕事を休めるのはこの日しかなかった。私たちは無理やり出かけることにした。

朝10時に出発して、11時頃には郡上八幡に到着。
郡上市役所の横にある有料駐車場に車を停めて、傘をさして外に出た。

時々、雨脚が強くなる。
しまった。布地のスニーカーを履いて来てしまった。
駐車場を出て歩道を歩き始めたところで、もう左側の靴のつま先部分に雨水が浸水している。気が付くと、右側も靴の中に水がしみこんできた。仕方がない。今日は濡れることを自分に許可しよう。無駄な抵抗はせず、しっかり歩くことを心から楽しむ決心をした。

この日の散歩は、
昭和後期の雰囲気が残るエリアからのスタート。

いつもは車で通り過ぎるだけの郡上八幡の町。
こうして歩くのは初めてだ。

市役所から市街地へ続く道は、どこか昭和の雰囲気が漂う町並みだった。
雨のせいか、人はあまり歩いていない。

町内の家の前出に、このような句が飾ってあった。

やがて、格子窓の町家が並んでいる通りに出てきた。

時々、激しく雨が降る。

この感じ、高山の雰囲気とちょっと似ている。
でも、ここは奥美濃。微妙に飛騨とは少し異なる空気が流れていた。

町内はどこもきれいに掃き清められていた。とても清々しい。

歩いていたら、郡上けいちゃんの看板を発見。店頭の張り紙を見たら、今は飲食はやっていないけど、販売のみやっているとのこと。

郡上けいちゃんのお店

そうそう、郡上はけいちゃんが有名だ。
けいちゃんとは、味噌や醤油のたれに付け込んだ鶏肉を焼いた料理のこと。地域や店舗によっていろんな種類がある。
ちなみに、「けいちやん」の「けい」は「鶏」である。飛騨でもよく食べられている、岐阜県民のソウルフードだ。ご飯のおかずによし、お酒のあてにもよし。

この時点で、私の靴の中は、内部全体がグジョ濡れ状態。足元は最悪の状態だ。もうどうにでもなれ。歩くたびにグチュグチュと水の感触がしてすごく気持ち悪いけど、もう気にしないぞ。さらに歩く。

格子戸の古い家が連なる。
用水路にかかる小さな橋。


防火バケツが並ぶ。
染物屋さん。素敵なこいのぼり。
オサレなブックcafe。郡上八幡は町家カフェが結構多いことを発見。
次回はカフェ巡りをしよう。

立ち寄ってみたいお店をいくつか見つけるけど、休日で閉まっていたり、満席だったりして、なかなか入店できない。あと、狭そうなお店だと、雨気を帯びた私が入ったら迷惑をかけそうなので、躊躇してしまう。


この町は、荒れたり劣化したりせず、割りときれいな状態で現存している古い店舗が多いんだな。そんなことを歩きながら知った。

年季が入った履き物屋さん。
ほぉ…懐かしい店構えのお店。

入口が開いていたので、吸い込まれるようにスーと中に入ってみた。

入口近くの席に座る。

寒かったので、私はとろろそば(かけ)をいただく。

自然薯がたっぷり入っていて、食べたら内から元気がでた。

お腹が満たされたので、また、雨の中を歩く。

閉まっているお店が多い。


街の中心部に近づくにしたがって、道行く人や車とすれ違うようになった。
道案内の看板。日本語は縦書きになっていた。
この道の先に、八幡町役場旧庁舎がある。


昭和チックな中日新聞の建物。


八幡町の市街地に入る。

レトロな西洋風の洋館が目に入った。
こちらは「郡上八幡樂藝らくげい館」という施設。明治~大正時代に建てられた病院の建物をそのまま利用していて、今は博物館になっている。
中に入りたかったけど、靴を脱いで入館するシステムらしく、雨で足元がずぶ濡れの私は(残念だけど)断念した。

郡上八幡楽藝館」次は絶対に入って見学したい。


さらに進んでいくと、またもう一つ、木造の洋館が見えてきた。

こちらは、「八幡町役場旧庁舎」。
昭和11年に建てられた建物で、平成6年まで八幡町役場として使われていたそうだ。

郡上八幡の素敵なところは、飛騨地方と異なり、明治・大正・昭和期の洋風建築物が残っていて、どこかハイカラなところだと思う。
城下町特有の品の良さと、明治時代以降のモダンなデザインの建物、この両方が良い感じでミックスされていて、町全体が独特の風情を醸し出している。
奥美濃の山の中にありながら、自然と水が豊富で、文化的で、ほどよく豊かで、品がよい。
こじんまりとした小さな町なのに、古き良き日本の文化的な要素が、洗練された形で今も残っている。そんなところに、多くの旅人たちが心惹かれるのだろう。


私達は、この八幡町役場旧庁舎に入ってみた。

建物の中は、お土産屋さん&セルフサービスの食堂になっていた。

小腹が空いたので、甘いものを食べる。雨に濡れた体に、ほどよい甘味が心地よく沁みる。温かくて美味しい。

「お母さんの田舎ぜんざい」
私達が座った席。ここは売店で食券を買ったとき、席札を渡される。
席札に記された番号の客席に座るシステム。

館内では、郡上八幡産の土産物に混じって、さくらももこさんの「GJエイトマン」のグッズが販売されていた。

「GJエイトマン」グッズ

生前、さくらももこさんは郡上八幡の大ファンだったそうで、よく訪れていたらしい。好きが高じて、この町のためにキャラを創作されたそうだ。(さくらさんのコメントはここ)

GJエイトマンのガチャガチャもあったよ。


さて、八幡町役場旧庁舎を出て、もう少し散策してみよう。

相変わらず、雨が降り続く。
郡上八幡は水が豊かな町だ。

郡上八幡では、街中にたくさんの用水路が流れていて、こうして歩いている最中も、大小さまざまな水路を見つける。ここが「水のまち」と言われるのも頷ける。

マンホール。これはあまご。
新町通のアーチの上は、郡上踊りのモチーフ。郡上八幡は「踊りのまち」でもある。


食品サンプルのお店を見つけたので、ちょっと入ってみよう。
こちらは「食品サンプル創作館さんぷる工房」

郡上市は、食品サンプルの製造で有名な町。
見ているだけでお腹が空いてきた。ここで夫は源氏パイのキーホルダーを購入。

市内を流れる吉田川。

雨で水量が増している川に、釣り糸を垂らす人がいるのを見つけた。
夜になると明かりが灯って、しっとりした雰囲気になるんだろうなぁ。
轟々と流れる吉田川
橋を渡って更に進む。
この先には、かつて城下町だった頃の風情が残る「古い町並み」地域がある。
重厚な造りの酒屋。
ここを左折。
宗祇水へと向かう。
この石畳みの道の横にも、小さな水路が流れていた。
宗祇水に到着。

こちらが宗祇水。昭和60年に「全国名水百選」が選出される際、この郡上八幡の宗祇水が、なんと一番手として環境庁の指定を受けたそうだ。
名実ともに郡上八幡のシンボル的スポットである。

この泉は歴史は古く、室町時代にさかのぼる。

室町時代の連歌の達人である飯尾宗祇が、この湧水の傍らで庵を結んで愛用したことから「宗祇水」と呼ばれるようになったという。(TABITABI郡上より)

雨の中だからこその風情。しっとりと情緒漂う。

この宗祇水の周辺にも、素敵なカフェやお店がいくつかあったのだけど、雨でずぶ濡れのため、残念だけと遠慮することにした。

今度はいいお天気の日に、のんびり訪れよう。

タイムリミットの14時になったので、駐車場へ戻ることにした。

雨に打たれる若葉とツツジ。鮮やかで美しい。

約3時間の散策だったけど、鬱々した気分がすっきりした。
雨の中を歩くのって、意外と楽しいものだな。
足元は相変わらずズブ濡れで悲惨な状態だけど、かえって「禊」になったのかもしれない。今まで自分の中に溜まっていた諸々のものが、雨に打たれ水に濡れたことで、全部サッパリと押し流されて浄化したような感じがした。

カラフルなシャッター。
郡上八幡の「踊りのまち」「水のまち」のイラスト。

清らかな水のまち。今度は踊りの季節に、また訪れたいな。


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