ネットでの危険な出会い体験談5
⬛︎その五「どさくさ男」
11歳年上のこの男には事前に顔写真を送ってもらっていた。好みではないが、ラテン系っぽい雰囲気を持ったいわゆるイケメンだった。なんだか少し楽しみになっていた当日、待ち合わせ場所に現れた男を見て愕然とした。こいつチビじゃん。私より背低くない?期待はしないことだ。
初めから泊まりがけで会う予定にしてあったのだが、ごはんを食べてホテルに行こうという流れになった時、予約をしていないことを知らされた。今から探すのか…。相手に任せきりにした私も悪いが、段取りの悪さに少し苛立ちを覚えた。
夜も更けてからネットで探したホテルは、健康的な朝食を売りにしたビジネスホテル。空いているのはシングルだけだとのこと。「いいよね?」と確認してくる男。いいも何もそれ以外選択肢がないならそこにせざるを得ない。
先程予約したそのホテルに行き、フロントでチェックインする。こんな時間に男女2人で来る客、受付の女性になんと思われているんだろうと思うと恥ずかしかった。部屋に着くと、薄暗い部屋にベッドが1つ壁にぴったりとくっ付けられていた。人がやっと2人すれ違える通路を挟んで向こうの壁際には簡易的なデスクが置いてある。狭い。壁の薄さも気になった。こんなところで男と2人、一晩過ごすのか。
かなり気が引けた。色んなことに気を取られて純粋にその時間や空間に没頭できないことは容易に想像が付いた。
男がどうだとか私の感情がとか考える以前に、音を立てないように、振動を周り近所に伝えないように、ということで思考を支配された。そんな環境で私が安心できるはずがない。男にはなんとかそれがバレないようにしてやる気遣いが私にはあった。なぜこんな男の前ですら演じてしまうのだろう。私はなんてエンターテイナーなんだろう。
男が持ってきた避妊具のパッケージにはLサイズと書いてあった。ほう、チビのくせにあそこはデカいのか。私は男には男性経験がないと嘘を付いていた。さあ、いよいよというタイミングで男はそのまま入ってこようとした。「ねえ、着けて。」私はガチトーンで言った。「ちゃんとしてるね、偉い。」は?人の家に土足で上がり込んできてんじゃねえぞ、この野郎。初めてなら知識がないとでも思ったか?
体の向きを変えて後ろからという時、「痛い」と言った。そう、確かに誰が相手でもその角度は私にとっては痛いのである。「ああ、ごめん。あまりに良すぎて初めてだってこと忘れてた。」それちゃんと信じてくれてたのね。チョロい男。シャワーを浴びた男は「パンツ持ってきた?」と聞いてくる。なんだそのいらない気遣い。
翌朝、起きた時にはすでに朝食の時間は終わっており、そのホテルで唯一評価できそうなポイントである食事は取れずじまいだった。ホテルを出て、駅前のパン屋さんでモーニングセットを頼み、解散した。