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「養生」を現代的に思考する

時間のあるときに、日中の養生に関する本を読み、自分なりに考察を深めています。きっかけは老子の道徳経を読んだことでした。現代人が失ってしまった、あるいは退化している五感や感性を沸き起こすためにも古典から古の感性を学び実践していくことで、新しい息を吹きかけるような新しい目覚めがあり、現代社会の様々な過多な部分とバランスをとることに役立っています。

さまざまな本を目にすると古来から《養生》という言葉はあり、人間が真っ当に生きるために健康と医学に向けられた関心が時代とともに大きくなり、また社会の繁栄に伴い、貴族や僧侶などの一部の層しか知り得ることができなかった知識が少しずつ庶民に拓かれていき、地方色や時代の様々な変化とともに伝播されてきました。

たとえば、日本に現存する最古の医学書であり国宝の「医心方」第二十七 養生篇には、以下のような養生知識(技術)を身に付けるべきと提唱しています。


注)  参考 / 槇 佐知子氏の「医心方:全訳精解」


1) 精神衛生。精神と肉体についての認識論、道学根底にある意識の調整方法。
2) 身体の養生法。自然環境と季節の変化による人体への影響の理解と対応法、日常の大便・小便、行動が適度であるかどうかの把握方、事件、事故、災害などを回避する方法。
3) 呼吸法。呼吸法の応用により生命力の強さが変わる。
4) 導引術。身体内外の「気」を整理、調整する方法、気功術。
5) 立ち居ふるまい、行動上の注意点と養生の調整、実施方法。
6) 起き臥し、睡眠と養生。
7) 言うこと、語ることと養生。
8) 衣服と養生。
9) 住居、方位、季節と養生。
10) 養生のために回避、禁止すべき事項。


日本の古典を考えるうえでかかせない中国との関連。日本は古来から様々な方面で中国の影響を受けていて、もちろんこの医心方:養生篇も中国の古典医学が参考にされています。けれど、医心方は日本人の生活や食に合わせて必要に編纂されたようです。《養生》という、 "思想" や "管理能力" 、そしてある種の「美意識」を伴う追求がただ単に健康面に及ぶもののみにあらず、社会全体と繋がる「洗練された躾」という感覚で捉えていくことがわたしにはしっくりきました。養生の根本には人間の生活、社会の中に生まれ得るあらゆる欲に対する接し方に対する啓発が組み込まれています。とくに老子の論ずる養生論はとにかく節欲をまず一番に、そして内省と慎み、陰陽(静と動)のバランスを大事にすることが肝になっており、野心の達成や自己実現、とかく繁栄を良しとするような現代の考え方の反対側にあるものです。どんどん増えていく物や情報。果たしてその全ては私たちに必要な物でしょうか。

古典がえりばかりが良いわけでもなく、また、完璧にこなすのはなかなか難しい。けれど、事足りきを知り、古代の感性から知恵をいただき、自分の中の過剰なものや余分なものを節制していけば、拓いた感性と思考、そして健やかな体と生活を人生を通して楽しむことができるのではないでしょうか。

さらに考察を深めていきたいと思います: )

お読み下さりありがとうございます!


月 花 美 茶


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