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教育テックでグローバルでの教育の質向上と経営革新を(後編) | 【月刊 学校法人】連載企画 2023年7月号

月刊「学校法人」に連載している「教育テックで変える未来社会」から、過去掲載された記事をnoteでご紹介させていただきます。
転載元:月刊 学校法人(http://www.keiriken.net/pub.htm

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教育テックで変える未来社会(第4回)
教育テックでグローバルでの教育の質向上と経営革新を
~日本の学校経営の「ガラパゴス化」からの脱却~

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日常的な学校経営の問題に理論を適用して解決の糸口を得る

 学校経営に携わる教育関係者は、学校で起きるいじめ問題、教職員間での軋轢、情報や知識の共有不足、人材育成、採用、志願者集め、財政、法務など日常的な業務に起因する諸問題に日々対応している。筆者の所属する学校法人においても例外ではない。そうした諸問題に対し て、決して教育学のみの知見で解決できるわけではない。ここまで、経営学に的を絞り、学校経営への適用について論じてきたが、様々な理論が、現実的に起きている学校の経営課題の直接的な解答にはならなかったとしても、現実に試行錯誤する際の道標になり、また解決への示唆を与えてくれることは確かである。

 次に、冒頭に示した日本の学生数の減少とい う構造的な問題に関して、どのように経営革新すべきか考察する。

日本の教育のガラパゴス化 ―グローバル化に活路

 日本の産業界におけるガラパゴス化現象は、 2007年頃より一般でも知られるようになった。 当初よりガラパゴス化に注目し論文や著作を発表していた野村総合研究所8)によると、ガラパゴス化の定義は次の通りである。

1.日本国内には、独特な環境(高度なニー ズや規制など)に基づいた財・サービスの市場が存在する。
2.海外では、日本国内とは異なる品質や機能の市場が存在する。
3.日本国内の市場が独自の進化を遂げている間に、海外市場では「デファクトスタンダード」の仕様が決まる。
4.気がついた時には、世界の動きから大きく取り残される。

8) 野村総合研究所 2015 年プロジェクトチーム(2007)『2015 年の日本―新たな「開国」の時代へ』東洋経済新報社。

 身近な代表例は「ガラケー」(日本独自の進化を遂げた携帯電話)であるが、他にも自動車産業や建設業などでも同様のことが指摘されてい た。それらの産業の全てではないが、その多くで、この十数年の間にグローバル化への対応をしてきた。しかし、教育界、とりわけ学校では大きな遅れをとっているのが現状だ。 日本の大学がグローバル化から取り残されていることを示すものとして、大学の世界ランキングがある。

 英国の高等教育情報誌「Times Higher Education」のランキングでは、東京大学が39位、京都大学が68位であり、100位以内に入ったのはわずかこの 2大学に過ぎない。 ランキングだけではない。欧米の大学がマレー シアなどのアジア各国で相次いで現地校を開校している一方で、日本の大学の海外進出はわずかであるし、日本に進出してくる海外大学も数少ない。
 さらに、世界全体に視野を広げると興味深い。 UNESCO(国際連合教育科学文化機関)による と、世界の高等教育の在籍者数は過去数十年間で大幅に増加している。1970年には、全世界の高等教育に在籍している学生数は約 2,600万人だった。それが2000年には約1億1,000万人に増え、さらに2019年には約2億1,900万人になっ た。2000年~2019年で約1億900万人の増加、 単純計算で1年あたり約545万人の増加、一日換算で約1.5万人の増加である。日本最大の日本大学の学生数は約6万9千人(2022年)なので、 4~5日ごとに日本大学1つ分の大学が必要となる。これは途方もない数値だが、現実には高 等教育の需要はますます高まっている。 このように日本の少子化の一方で、世界人口、 世界のこども人口は増え続けており、初等中等教育はもちろんのこと、高等教育への需要も急速に高まっている。学校・教育機関が足りないことは明白である。
 そこで、日本の学校がガラパゴス化して国内で縮小均衡に陥り衰退するの ではなく、日本の教育の良さを生かし、教育テックを活用してグローバルスクール化を目指す各 校独自の経営革新は、有効な対策になるであろう。


根岸 正州(ねぎし まさくに)
OCC教育テック総合研究所 所長、学校法人大阪キリスト教学院(OCC) 理事長、大阪キリスト教短期大学 教授。 大手シンクタンクにて、民間大企業、省庁、私立大学法人等の顧客に対して、経営戦略コンサル ティング業務を提供後、現学校法人を事業承継し理事長に就任。短期大学の他、幼稚園・保育園・ こども園を計9園、IT企業や不動産業、人材紹介・ 派遣業を経営。

織田 竜輔(おだ りょうすけ)
OCC教育テック総合研究所 上級研究員、大阪キリスト教短期大学 特任教授。 実務家教員、学校経営ディレクター。『環境ビジネス』編集室長、月刊『事業構想』編集長、月刊『先端教育』編集長を務め、全国の初等教育~ 高等教育、社会人教育、リカレント・リスキリン グ教育を取材、専門職大学院において社会人向けの教育・研究プログラムを企画・実施した後、現職。 環境・教育・メディアを研究。

転載元:月刊 学校法人 http://www.keiriken.net/pub.htm


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