見出し画像

新しい学びの実現へ、求められる「教育CIO」の養成(後編) | 【月刊 学校法人】連載企画 2023年5月号

月刊「学校法人」に連載している「教育テックで変える未来社会」から、過去掲載された記事をnoteでご紹介させていただきます。
転載元:月刊 学校法人(http://www.keiriken.net/pub.htm

前回の記事はこちら



教育経営を担う「教育 CIO」が不可欠

 ヒアリング調査を経て明らかになったのが、 民間企業で導入が進むCIOの役割を教育分野で 担う、「教育CIO」の必要性である。CIOとは Chief Information Officer の略で、一般的には「情報統括役員」と訳される。ほかにも「情報システム担当役員」や「最高情報責任者」などと訳されることもある。教育CIOは、公立学校であれば教育委員会や自治体で任命される役職であり、私立学校であれば学校法人で任命される役職である。なお、文部科学省では教育CIOと学校CIOを区別しているが、OCC教育テック総合研究所ではそのような区別はせず、「教育テックの導入・活用を社会全体から俯瞰して捉え、 経営視点でビジョンを描き、リーダーシップを発揮して推進する責任者」と定義している。 「教育CIO」は、教育の情報化の理念に沿った学校の ICT化のビジョンを構築し、それに必要なマネジメントや評価の体制を整備しながら、総括的な責任をもって地域の学校のICT化を推進する人材である。 
 文部科学省は、「教育 CIO」を 教育委員会に配置することを期待しており、同 時に教育CIOの機能が教育、技術、行政のいずれの分野についても十分発揮できるよう、「教育CIOの補佐役」も必要であると指摘している。 OCC教育テック総合研究所としても、教育CIOは不可欠であると考えており、また教育CIOおよび教育CIO補佐官を採用するための予算の確保と受入れ態勢を整備することが、自治体および教育委員会にとっての急務であると捉えている。 なお、注意いただきたいのは、CIOが Chief Information Officer の略であり、最高情報責任者と訳されるように、CIOというと「ITに関する専門的知見を持った人材」と思われるかもしれないが、ITのバックグラウンドを持つ人である必要はない。プログラミングができる必要もない。教育CIOに求められる素質は、「デジタルで変化する教育環境に合わせた変革を推進す ること」である。 ただし、全国的に見ても、素質はあっても一人でこの役割を担える人材はほとんどおらず、権限の大きな教育長、教育事業部課長、首長部局CIO等の管理職を教育CIOに任命しつつ、教育、 技術、行政のいずれの分野についても十分力を発揮できるよう、民間や大学からICT活用に精通した教育CIO補佐官を迎えることが現在の主流となっている。そのほか、教育情報化推進委員会などの組織を設置することによって横断的な 取組み体制をつくり、全体として実効ある教育CIO機能を実現しようとする自治体もある。

「教育 CIO」は、教育長や校長が 兼務できるか

 ここで、一つ問題提起をしたい。全国的な潮流として、教育CIOの役割を、実質的に教育長や校長、もしくはその次席者が兼務している実態について述べた。大変僭越ではあるが、果たして教育長や校長に、任務範囲が非常に広がっ たGIGAスクール構想の第2フェーズ以降における教育CIOが務まるだろうか、という疑問がある(もちろん、コロナ禍の未曾有の危機において、GIGA スクール構想の実現に、大変な尽力をされた教育長・学校長 への敬意を十分に払うべきである)。経営とITの両方がわかる教育長や学校長であれば、第2フェーズ以降も兼務することも可能であろう。だが、現実的には、なかなかそのような人材はいない。また、民間企業の社長と同様に、教育長や学校長の業務時間は限られるので、別に立てることをお勧めしたい。 さらに、教育テックの導入・活用が公立・私立両方の教育機関の経営そのものを変革していく状況では、教育CIO一人のみでは到底任務を遂行することはできず、必ず教育CIO補佐官が必要となり、民間企業と同様に複数人でのチー ムを組み取り組んでいくことになる。

専門職としての「教育CIO」の養成

 これらを踏まえて、OCC教育テック総合研究所では、2023年6月から10月にかけて、教育CIOを養成する「教育CIO養成課程」を開講する。 従来の研修では、I T・アナログの双方で現場視 点でのプログラムが主だった。また、マネジメ ント視点の研修も存在したが、現在のように教 育テック(ICT)を本格的に導入・活用する前提に立ってはいなかった。
 そこで当研究所では、 従来にはなかったITとマネジメント視点の双方に立 った「教育CIO養成課程」を設立した ( 図 )。 この中で、専門職として教育 CIOおよび教育CIO補佐官を目指す人材を育成するとともに、 教育CIOを必要とする自治体・教育委員会とのマッチングを支援していく予定だ。従来にはない新たな課程であり、挑戦的な取組みとなるが、 より良い教育の提供のために、教育関係者の皆様と共に尽力していく所存である。

図 教育 CIO 養成課程と従来の研修の違い

(著者紹介)
原山 青士(はらやま せいじ)
「保育 DX 人材養成プログラム」をはじめとしたリ カレント/リスキリング教育をプロデュースして いる。教育テックベンチャーである株式会社 H&E テクノロジー代表取締役も兼任。
織田 竜輔(おだ りょうすけ)
OCC教育テック総合研究所 上級研究員、大阪キ リスト教短期大学 特任教授。 実務家教員、学校経営ディレクター。『環境ビ ジネス』編集室長、月刊『事業構想』編集長、月 刊『先端教育』編集長を務め、全国の初等教育~ 高等教育、社会人教育、リカレント・リスキリン グ教育を取材、専門職大学院において社会人向け の教育・研究プログラムを企画・実施した後、現職。 環境・教育・メディアを研究。
根岸 正州(ねぎし まさくに)
OCC教育テック総合研究所 所長、学校法人大阪 キリスト教学院(OCC) 理事長、大阪キリスト教短 期大学 教授。 大手シンクタンクにて、民間大企業、省庁、私 立大学法人等の顧客に対して、経営戦略コンサル ティング業務を提供後、現学校法人を事業承継し 理事長に就任。短期大学の他、幼稚園・保育園・ こども園を計 9 園、IT 企業や不動産業、人材紹介・ 派遣業を経営。

転載元:月刊 学校法人 http://www.keiriken.net/pub.htm



教育テック大学院大学について

📢入学に関する説明会を順次開催中!
申込はこちらから