#56 E・M・フォースター「アーサー・スナッチフォールド」〜ジャニーズ性加害問題を考えるテキストとして の感想
※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です
今回の本
今回のキーワード
カナリア色のシャツ「おはようさん、ええ天気やね」
「得たりやおう」
ノブレス・オブリージ=高潔な振る舞いをしたのはアーサー・スナッチフォールドの方だった
これを読んだらその時代のイギリスの社会のメカニズムがわかる。読ませる短編。指折りの作品
コンウェイ卿は魅力的
フォースターの表現が上手なせいか、コンウェイ卿が魅力的に感じる。
現代風に言うと紛うことなき「リア充」じゃないですか。旅行、読書、スポーツ、恋愛に腰を据えて取り組まない人間を軽く見ているのだから。大いに学び、大いに遊べ、というまさに上流階級の紳士という感じ。
だからコンウェイ卿が一瞬自白しようとして「しかしそれが何の役に立つというのか?」と思いとどまったところで、「コンウェイ卿の立場ならしょうがないよな~」と思ってしまった。確かに誰も得しない選択になるのだから。
アーサー・スナッチフォールドはなぜ誘いに乗ったのか?
アーサー・スナッチフォールドだけが罪を負う形になるので気の毒ではあるのだが、彼自身もこれが犯罪行為だとわかっているので、あまり悲壮感がないような印象を受ける。そこまでわかってて何故・・・という。身分違いなだけに、何かあったら自分だけが損するということは十分にわかっていたような。でもアーサー・スナッチフォールドもとても魅力的だ。
読んだ本
番組で紹介されていた本と違う版を読みました。他の収録作品もこれから読む予定。