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「翻訳文学試食会」の感想

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ポッドキャスト番組【翻訳文学試食会】の感想まとめです https://open.spotify.com/show/2HHp4JBHtqBf6ziqgKo6Rj
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【質問】ポッドキャストリスナー同士のコミュニティってどうやって作るの?

ポッドキャスト番組『翻訳文学試食会』を聞き始め、番組の感想を不定期にnoteに記録しています。他にもXで番組の感想をつぶやいたりしているうちに、だんだん他のリスナーさんのお名前なんかもわかるようになってきたところです。 つい先日、番組ホストの大東先生と干場さんが参加されているシンポジウムにZoom参加したのですが、後日他のリスナーさんもやはり参加されていたということがわかりました。 そこで以前から思っているものの、まだ実行できていないのが表題の「同じ番組を聞いているリスナー同

日本比較文学会 第60回関西大会プログラムでの「翻訳文学試食会」

※ポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」内で告知されていた「日本比較文学会 第60回関西大会プログラム」にZoomで参加。その際の感想です。 2024年11月9日(土)14時にZoomに入ろうと思ったらまさかのアップデートを要求されて焦る。Zoomプライベートであんまり使わないから、何かの折に久々に使おうとするといつもこれなんだよなぁ。で無事ログインできたものの始まらないな?と思っていたら14:00開始じゃなくて14:15開始だった。良かった。 わくわくしながら待っていると、

#76 ジーン・リース「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」〜迷惑おばさんの怒りと悲しみ の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード いつ頃の話かよくわからない 若いか歳をとっているかもわからない 若い女の人とは思わなかった、「若い女の子と一緒になった」という記述があるから(主人公は)はあまり若くないはず 典型的な中年女性。行為だけを切り取ったら「迷惑おばさん」でしかない 助けてもらえる才能、甘えられる才能 完全なアルイー 熊本の水道水と東京の水道水はどっちかわからない イギリス版林芙美子 滲み出るよう

#68 ケヴィン・ウィルソン「地球の中心までトンネルを掘る」〜モラトリアムはどんな味わいかね? の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード モラトリアム「結構なご身分ですなぁ」 大学まではお客さん、社会に出たらお客さんの相手をせなあかん お金を稼ぐことに対する嫌悪感、その気持はどこから来ているのか? 「奇妙な味わい」、アイディア一発、ユーモア、リリシズム HSP、傷つけられる心配がない小説に慰められる どんなおとぎ話も荒々しさにたどり着く、さなぎにくるまったままではいられない、いつかは出ていかなくてはならない

#64 カーソン・マッカラーズ「家庭の事情」〜アルイーとの向き合い方 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード 断酒して人生の後半を素面で生きていく干場さん 「家庭の事情」は絶品のつけあわせ 人間は環境の変化に弱い。アラバマからニューヨーク、共同体を失ってバランスを崩すエミリー 南部作家、カポーティー、フォークナーの面白さ どこに行っても特に臆しない大東先生 ほっこりするユーモア派と感じ悪いユーモア派(マッカラーズvsオコナー) 夫があかん。ケアできてない。妻はもともと他人、奥さんの危

#61 パトリック・ジュースキント「ゾマーさんのこと」〜加害の記憶という問題 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード 共同体の絆を確認する ゾマーさんは戦争加害者? ヴァイツゼッカー元大統領の演説 帰還兵の苦しさ 日本の戦争の物語は被害者側から描いている 罪の意識、加害の記憶に自分が傷つけられる 葛藤の物語が好き 「ぼく」の成長 ゾマーさんのことが主題ではあるのだが、主人公「ぼく」の物語としてもものすごく素敵なお話だと思う。自転車のサドルとペダルに同時に足が届かないから、しばらく立ち漕ぎ

#60 リチャード・ブローティガン「西瓜糖の日々」〜生々しくないとダメですか? の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード 全編これ心象風景。現代芸術。因果関係はない 学生の頃に読んだときは嫌悪と苛立ちしか感じなかった(干場さん) 30年ぶりに読んだら「これはええもんやな」 青春時代の終わりは小さな死 もっといろんな葛藤あるやろ。欺瞞 目をそむけたくなるものを生々しく伝えるのは伝わらない 抽象化して伝えれば伝わるのか? 西瓜糖って何? この小説の題名自体は以前から知っていて、「西瓜糖」っていう

#56 E・M・フォースター「アーサー・スナッチフォールド」〜ジャニーズ性加害問題を考えるテキストとして の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード カナリア色のシャツ「おはようさん、ええ天気やね」 「得たりやおう」 ノブレス・オブリージ=高潔な振る舞いをしたのはアーサー・スナッチフォールドの方だった これを読んだらその時代のイギリスの社会のメカニズムがわかる。読ませる短編。指折りの作品 コンウェイ卿は魅力的 フォースターの表現が上手なせいか、コンウェイ卿が魅力的に感じる。 現代風に言うと紛うことなき「リア充」じゃないです

#44 ホーソーン「ウェイクフィールド」〜承認欲求モンスター爆誕!の巻 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード 夫婦間の義務不履行(結婚は契約) 義務の中には何が含まれているのか? 経済的に困窮させてないのであれば義務を果たしているのでは? 奥さんは途中で気づいていたのではないか? 破滅願望と蒸発願望 夫婦間の義務とは何か?(日本の民法の場合) というように、日本の民法はまず「同居」っていうのが義務なんだということを知らなかった。(もちろん単身赴任等の事情は除く) となると、現代の日本

#42 フラナリー・オコナー「田舎の善人」〜天国に持って行けるものは の感想

配信を聞いて、絶対読みたい!と思った作品。紹介されているちくま文庫がすぐに見つからなかったので、こちらを読了。 今回のキーワード Vulnerability (ヴァルネラビリティ):脆弱性。自分の不完全さを認めることで強くなる オコナーはアメリカ南部の親鸞 ファンダメンタリスト(原理主義者)は善意の人 (作中の)セールスマンは自分を善人だと信じている? 民放を見ている人がNHKを見たときの感覚 オコナーはNHK説 ジョージア州怖すぎるやろ 同じ南部文学でも、

#40 ジョン・チーヴァー「泳ぐ人」〜アメリカという若者、あるいは老いについて の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 感想 「近所のプールを泳ぎついで自宅に帰る話」 先に配信を聞き、何を言ってるのかと思い、図書館で借りてみた。 のっけから「彼は自宅の階段を滑り降りて」 ここ干場さんも触れていたけど、もう嫌な予感がする。大人になってこんなことやるやつはあぶない。 知り合いのプールでにこやかに次々と調子良く泳がせてもらうネディーが水着姿で路肩に立っているあたりで、ちょっと徘徊老人のことを想起してしまった。 ビスワンガーさんのところ

#31 ディミトリ・フェルフルスト「美しい子ども」〜少女が酒を飲み、道端で用を足す問題作 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード かつては周りの人がどんどん死んでいった。50まで生きるとは思わなかった 昔といまの人生観、健康意識が全然違う この小説の衛生観念について 誇りをもつような暮らしぶりなのか・・・? 家族と土地に対する誇り、寅さんにつながる誇り 関西弁、方言の翻訳について(じゃりン子チエのような) アメリカ文学の黒人ことばは東北弁?? 下町の美人・ロージー叔母 ふと「中学時代のヤンキーの美人

#29 ブッツァーティ「神を見た犬」〜見た目は怖いがとんだ良い人だった件 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード イタリアの信仰心が土壌にある 一言でいうと生ぬるい、とらえどころがない 神様はいないけどいる、いるけどいない 見ようとすれば信じようとすれば神はいる=神が持ついかがわしさ、まやかし 「虚像であっても神という存在は必要」と言いたかった? メッセージがあるんだか、ないんだか、意図をくみとっていいのか 孤独の影がないから物足りない? 一見コワモテ、人懐こい良い人、親しみやすい鬼才

#27 リング・ラードナー「弁解屋(アリバイ)アイク」〜ふたたびクリエイティブライティングを考える の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です 今回の本 今回のキーワード 新潮文庫を読んで選んだわけではない、というアリバイ(弁解)、あえての福武文庫 漫才の台本のような小説。エンタツ・アチャコ なぜアイクはこうなったのか?不要なことまで言い訳する悲哀 アメリカ人、フロンティアスピリット、アメリカンドリーム、フレンドリー 自意識過剰な言い訳、人間関係をうまく築けない自信のなさ、過剰に相手の顔色を伺う アイクとバートルビーは非常に似ている、不気味さ、孤