私がコーヒーを好きな理由
三度の飯よりコーヒーが好きだ。挽いた豆にお湯を注ぐあの瞬間のアロマの香り。屈んで顔をひっつけ湯気を吸い込む私の姿は限りなくあやしい。そんな瞬間は誰にも見られたくなかったけど、部下からもらうプレゼントといえばコーヒー関連ばかりになっていたから、まあ見られてたんだろう。コーヒーは基本的にブラックで、夏でもホットが好ましい。
アポイントでカフェを使うことが多かった私は、多い時は一日に4、5杯飲んでいた。アポの前の時間つぶしにも使っていたら、そのときはさすがに手の震えが来て、どうやらあまり質の良くない豆だとそんな反応が出ることもわかった。そうやってたら、万年ルピシア党だった私の身体はイヤでもコーヒー党になるってもんだ。
私が好きなのはこの香りだしこの味なんだけど、やはり何より大切なのはそう、コーヒーを飲む空間。その時間のほうだと思ってる。
コーヒーは、区切りだ。
朝起きて一日のはじまり。
気合いを入れるとき。
アポイント終わって1杯。
仕事が終わってひと息。
どんなに忙しくても、その15分だけは自分だけの世界。香りと味と店内の雑音に包まれて私はひたすらぼーっとする。会社に戻れば上司と部下が待っているんだけど、飲み干したころにはその世界への覚悟ができている。私はお金を払って店を出る。
営業を離れてアポがなくなった私は、それでも毎日コーヒーを飲んでいた。本当は夜も飲みたいんだけど、朝と昼とで我慢する。手が震えたら困るから。いつだって考えてるのは今日のコーヒーをどこで飲むかで、これもカフェイン効果なのだろうか、わからないけど私の生活はコーヒー中心になった。上司と部下はもう居ない。
コーヒーのおかげで気持ちが変わる。気持ちが変わると行動が変わる。行動が変われば習慣が変わってどうやら私の人生が変わった。コーヒーは人生の区切り、なんていうと大袈裟に聴こえるけど、でもほんとなんだよ。コーヒー時間は私の時間。あの日あのカフェで仕事サボって良かった。私こんなんじゃないって気づいたから。
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