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あやしい絵展_2021_03

開催館:東京国立近代美術館
観覧料:1800円(音声ガイド+600円)

どんな内容の美術展?

見ていてどこか不安になるのに不思議と惹きつけられる。そんな「あやしい」作品で構成されている展示。

退廃的だったり妖艶な作品の「あやしさ」の本質について、時代背景を含めて掘り下げた解説が多く、エンターテインメント性だけではなく教養的な部分のウェイトもあって充実した内容だな〜と思った。

明治〜大正時代の作品を中心として、幕末から昭和初期まで幅広くテーマに沿った作品が並んでいた。

目玉の作品は?

公式ホームページを見ると、上村松園の〈焔〉とか?
(公式HPの力の込め具合が他の展示にはないレベルなので、是非みてほしい…)

え〜幽霊?もう既に怖そう。

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行ってみようと思った理由は?

タイトルと美術館が推しているメインの作品をみて「怖そう」と思いつつも、ずっと気になっていた(近美って、他にはない斬新な切り口をテーマにした展示をよくしている印象がある)。

音声ガイドに声優の平川大輔氏(みんな大好き 鬼滅の魘夢ちゃんだったり、ジョジョの花京院さんを担当)を起用したり、公式HPも力が入っていたりと、なんか豪華だね?というのもあり、実際に行きました。

美術展全体の構成や印象は?

<印象>

「あやしい」というテーマで作品をピックアップされているのはもちろんだけど、その作品が作られた時代背景や作者の思想、どうして「あやしい」作品に女性がよく登場するのか、といった考察が含まれた展示だった。

<構成>

第一章は幕末の作品(この時代のおどろおどろしい作品が作られた理由)

第二章は明治〜大正の作品(西洋からの影響、前時代より個性や内側に存在する感情への問いかけといったテーマが増えた)

第三章は大正〜昭和初期の作品(時代の変化に伴い、社会の中の女性の立ち位置を反映するような内容が多い)

印象的な作品 BEST3 と簡単な理由

①北野恒富〈道行〉ー画面を構成する内容は控えめなのに、画面全体に悲哀さが美しく詰まっていた。

②甲斐床楠音〈畜生塚〉ー作品の大きさの作用もあって、作品の表現する絶望や悲しみのパワーが強い(怖い)けど、なぜか目が離せない。

③歌川国芳〈城四郎長茂空中に怪異を見る〉ーおどろおどろしいのに見ていてユーモアさを感じた。雷神のへそからも雷?風?が出ていてちょっとかわいい。

1番の推し作品を詳しく

北野恒富〈道行〉、二曲一双の屏風、1913年頃

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<どういう作品?>

戯曲を題材にしたもの。男女の道ならぬ恋を貫くために心中しようとしている。左側の黒い鳥は「死」を暗示している。

<好きなところ>

見よ、この画面上の絶妙な配置と余白のバランス!そして悲哀さの詰め込み!

よりかかっている女性を象る曲線の色っぽさと物憂げな表情。
男性の後ろ姿と、後ろで手を握っている感じの人目をはばかる恋感。
グレーや黒といった彩度の低い色で、希望や救いのなさを強めている印象。

左側の黒い鳥の存在が画面を引き締めているのも良い。

登場人物のマイナス方向の感情を表現しつつも美しさを両立していて、ずっと見ていられるね。

(観に行く前、女性の妖怪が男性に憑いている怖い絵かな?って予想していたけれど、違うタイプの狂気だった。)

最後に

近代日本画に触れる機会が少なかった自分としては、「あやしい」という切り口で、作家や作品を知ることができてよかった。

「『あやしい』絵の大集合!」で終わりではなく、時代背景や感情の表現に関する説明もあって、充実した内容の展示だったと思う。

特に、「なぜ『あやしい』絵には女性が多く登場するのか?」という考察のキャプション。
この考察が、展示にさらなる深さを提供していると思う。

(※考えられる理由として、ファム・ファタル、異界の住人として男性中心社会から排除されやすかった女性をモチーフにした等。まだまだあるけれど詳しくは会場で是非。勉強になる考察なので。)

この展示を担当した学芸員さんは本当にすごい。
後期の展示入れ替え、行きたいな……。

おまけ

目玉作品で挙げていた、上村松園の〈焔〉の女性。

源氏物語に登場する人物で、嫉妬で「ぐぬぬ」ってなるあまり生霊と化した女性でした。「ぐぬぬ」パワーが強い。



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