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遊羽
2021年6月30日 01:33
疑いに上がる頭を押さえられたゞひっそりと写経続ける雲高く細く開いた窓からの空気冷たし十月の昼日も満ちて妻が迎えに来る時を穏やかに待つ退院の朝
2021年6月28日 04:11
早すぎる消灯時間に従えば夜の帳は深く静かに病室で実習生と大声で喋る患者に我慢ができずこれ以上この病棟に居たくない気持ち募るに居場所もまたなく
2021年6月26日 02:30
朝起きて夜寝るまでの行動にすっかり慣れた病院暮らし病室を避けて陽だまりの部屋に逃げ一人ラジオに耳傾ける病棟の看護実習生慣れぬ手つきで脈を測って
2021年6月24日 17:38
安静にすればするだけ虚無感に包まれ気持ち焦りを感じ歩行器を捨てゝ二本の杖を持ち歩く訓練再び始め気がつけば写経のノートも四冊目稚筆で祈る般若波羅蜜多
2021年6月22日 09:45
長期間入院を経て治癒はした代わりに激しい人嫌いになる歩くのをやめて安静を選べども腰の痛みに変化が見えず莫迦程に電話の声は大きいとデイルームにいてつくづく思う
2021年6月17日 13:44
お天気に体調全てを決められて天気予報はこの先も雨いつの間に病院食のマンゴーが姿を消した十月の夜今とても危険であると見せられたCT画像が脳裏に浮かぶ
2021年6月13日 23:31
売店で飲むコーヒーも昨日からホットに変わる秋の早朝朝目覚め腰の痛みに嘆いては写経始めて全て誤魔化すいつの間にいない患者は悉く記憶の縁へと押し流される
2021年6月4日 20:07
これまでと同じ生活態度では危険であると突然言われる今日もまた同室の患者退院し我一人だけ取り残されるこの廊下歩いた全てが間違いと悔やんでみても悔やみきれない