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病牀二十一貫

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短歌集「病牀二十一貫
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【短歌日記】 「病牀二十一貫」21−2(終)

【短歌日記】 「病牀二十一貫」21−2(終)

病棟を離れる前に計量し数字は変わらぬ二十貫なり

外に出て太陽の下佇めばいつしか冷えた空気に戸惑う

病牀は新たに二十一貫のまだ終わらない戦い続く

短歌日記「病牀二十一貫」は今回で終了致します。お読みいただきありがとうございました。

【短歌日記】 「病牀二十一貫」21−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」21−1

疑いに上がる頭を押さえられたゞひっそりと写経続ける

雲高く細く開いた窓からの空気冷たし十月の昼

日も満ちて妻が迎えに来る時を穏やかに待つ退院の朝

【短歌日記】 「病牀二十一貫」20−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」20−2

早すぎる消灯時間に従えば夜の帳は深く静かに

病室で実習生と大声で喋る患者に我慢ができず

これ以上この病棟に居たくない気持ち募るに居場所もまたなく

【短歌日記】 「病牀二十一貫」20−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」20−1

朝起きて夜寝るまでの行動にすっかり慣れた病院暮らし

病室を避けて陽だまりの部屋に逃げ一人ラジオに耳傾ける

病棟の看護実習生慣れぬ手つきで脈を測って

【短歌日記】 「病牀二十一貫」19−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」19−2

安静にすればするだけ虚無感に包まれ気持ち焦りを感じ

歩行器を捨てゝ二本の杖を持ち歩く訓練再び始め

気がつけば写経のノートも四冊目稚筆で祈る般若波羅蜜多

【短歌日記】 「病牀二十一貫」19−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」19−1

長期間入院を経て治癒はした代わりに激しい人嫌いになる

歩くのをやめて安静を選べども腰の痛みに変化が見えず

莫迦程に電話の声は大きいとデイルームにいてつくづく思う

【短歌日記】 「病牀二十一貫」18−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」18−2

お天気に体調全てを決められて天気予報はこの先も雨

いつの間に病院食のマンゴーが姿を消した十月の夜

今とても危険であると見せられたCT画像が脳裏に浮かぶ

【短歌日記】 「病牀二十一貫」18−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」18−1

売店で飲むコーヒーも昨日からホットに変わる秋の早朝

朝目覚め腰の痛みに嘆いては写経始めて全て誤魔化す

いつの間にいない患者は悉く記憶の縁へと押し流される

【短歌日記】 「病牀二十一貫」17−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」17−2

これまでと同じ生活態度では危険であると突然言われる

今日もまた同室の患者退院し我一人だけ取り残される

この廊下歩いた全てが間違いと悔やんでみても悔やみきれない

【短歌日記】 「病牀二十一貫」17−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」17−1

リハビリは退院するまで続けたい何かゞ足らぬ不安に怯え

早朝にスピッツ六本採血し病気は完治とお墨付き来る

退院しあれもこれもと待ち望む全てが更に遠のいていく

【短歌日記】 「病牀二十一貫」16−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」16−2

より強いコルセットひとつ注文し完成までに入院延びる

できるだけ横にはならず座るよう言われてもなお腰鎮まらず

部屋を替え新たな窓の正面に懐かしき我が家の灯が点る

【短歌日記】 「病牀二十一貫」16−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」16−1

退院の日は遠のいて伏す度に廊下で狂女の叫びが響く

朝晩と止まることない断末魔心の病新たに誘う

痛みなら日を追うごとに増してゆき不安と共に夜が深まる

【短歌日記】 「病牀二十一貫」15−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」15−2

面会で外から来てる人の服見ては季節の変わり目を知る

体調で見ずともわかる曇り空退院予定の日もまだ見えず

腰椎の壊死止まらずに進行と現実を知る中秋の夜

【短歌日記】 「病牀二十一貫」15−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」15−1

毎日のワークアウトが退院を早めてくれると信じたかった

自分以外患者はすべて狂人か人事不省と思い続ける

腰以外快方へとは向かえども何か変化の兆しは見えず