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四行詩集「北海道」

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#四行詩

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 風の強い町」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 風の強い町」

「風の強い町」/ Ветреный город

僕は別に あなたに会いに来たわけではない
たまたまこゝにたどり着いたゞけのことだ
いつ来てもこゝは風が強い
函館の知られざる碑の前で足を止める

「風の強い町」 2022年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 江差追分」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 江差追分」

「江差追分」/Эсаши Оиваке

のびて響く 響いて届く
哀歌のような情熱が波濤のように届く
今日の夕陽もまた紅かった
江差の音が一つ混ざってゆく

「江差追分」2022年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 松前挽歌」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 松前挽歌」

「松前挽歌」/Мацумаэ Элегия

こゝまで来れば北海道とは雖も
こゝまで来て尚北海道は感じ難き
思いのほか行きにくいこの町
今日も津軽海峡が輝いていた

「松前挽歌」 2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 神恵内」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 神恵内」

「神恵内」/Камоэнаи

一年目 あの温泉には入れなかった
二年目 やっぱり入れなかった
塩分がとても強くて いつまでも入れなかった
そして今 施設そのものがなくなってしまった

「神恵内」 2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 南十一条」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 南十一条」

「南十一条」

南だったことは覚えている 問題は十一条だったか
それとも十二条だったか ハッキリと思い出せない
そんな七丁目なんて言われても せいぜい三丁目くらいにして
札幌でありがちな迷子への落とし穴

「南十一条」2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 南十一条」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 南十一条」

「南十一条」

南だったことは覚えている 問題は十一条だったか
それとも十二条だったか ハッキリと思い出せない
そんな七丁目なんて言われても せいぜい三丁目くらいにして
札幌でありがちな迷子への落とし穴

「南十一条」2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 北斗」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 北斗」

「北斗」/ Хокуто

北海道にも新しい市がまだできるんだ
名前がそれっぽい 場所もそれっぽい
おまけに新幹線もやってくる
もう誰ももとの二つの町名など思い出せない

「北斗」2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 遠軽」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 遠軽」

「遠軽」/Энгару

白滝も生田原も丸瀬布も
みんな遠軽へと帰っていった
併合されたんじゃない もとの名前に戻った
戻ってひとつの 遠軽になった

「遠軽」2021年

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 青春」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 青春」

「青春」/ Молодость

レールの上で明け暮れることもまた青春
湖畔にテントを張って過ごすのもまた青春
人も町も次第に減っていこうとも 夢は潰えることなく
北の見慣れぬ植物も視界から外れていけども

「青春」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲

【詩作日記】「四行詩・北海道 / あと一つ」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / あと一つ」

「あと一つ」/ Еще один

道内の市町村でたった一カ所だけ行っていない所
今回も対岸から眺めるだけだった
波は灰色に荒れ 海鳥が風に流される
今回も対岸から眺めるだけの島 いつ行けるのか

「あと一つ」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 釧路」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 釧路」

「釧路」/ Кусиро

札幌からの移動時間 おそよ4時間
長くて遠くて 何よりも退屈
札幌への列車待ち合わせ時間 およそ15分
短すぎて何も買って食べることさえできない

「釧路」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 廃屋」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 廃屋」

「廃屋」/ Заброшенный дом

以前にも増して廃屋が増えてきた
押しだまる集落が 確実に増えてきた
住みやすくさせた町が だんだん住みにくゝなる
廃屋のすぐそばにだって 花は咲いているのに

「廃屋」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 灰色の家」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 灰色の家」

「灰色の家」/ Серый дом

新興住宅地に立ち並ぶ 灰色の家
比較的新しく 小ぎれいに立ち並ぶ
朽ちていく家よりも 数は少ない
留寿都村長の家も 灰色だった

「灰色の家」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 札幌の路面電車」

【詩作日記】「四行詩・北海道 / 札幌の路面電車」

「札幌の路面電車」/ Трамвай Саппоро

市電はのんびりと走る 札幌の街の中
始発から終点まで乗っている人は
運転手か 暇人のどちらか
途中で降りない限り 旅人は道に迷わない

「札幌の路面電車」 四行詩集「北海道」より
2002年初出 2021年再推敲