マーケティングリサーチにおける企業コミュニティの活用法とその効果
企業コミュニティはマーケティングリサーチに使えるか?
こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
今回のテーマは「企業コミュニティはマーケティングリサーチに使えるか?」ですが、結論から先に言うと、「使えます」。
この「企業コミュニティQ&A」コーナーの第一回「コミュニティ運営のメリットと実践的な手法」でも、オンラインアンケート収集やオンラインリサーチ(MROC)について触れたことがあります。
今回は、企業コミュニティをマーケティングリサーチに使った場合、労力や費用の面で、どう効果的なのか解説していきたいと思います。
マーケティングリサーチの手法
企業が行うマーケティングリサーチを大きく分類すると、マーケティングの仮説を発見する「仮説形成型」と、立案した仮説が正しいかどうか確かめる「仮説検証型」の2つがあります。ここに、「定性調査」「定量調査」の調査手法と、調査をかける対象者も加えると、図のように整理できるでしょう。
みなさんの企業では、どのような対象者に向けて「定性調査」「定量調査」を行っていますか?定性調査の場合、調査対象者は少数で済みますが、設問の量や不定形度合いなどが増すことで複雑となり、労力が必要となります。また、対象者の条件もかなり絞られるため、外部のパネルを集める難易度も高くなるのが一般的です。関係の深い顧客や、社員の家族などを対象に調査を行うこともあるのではないでしょうか。
一方の定量調査のアンケートは、設問の量も少ないですし、昨今はWebで行われるケースも一般的になったので、難易度は低いといえます。大規模な調査パネルを持ち、Webアンケート制作や集計などを一括して受託するサービスも多く登場しています。
また、SNSの投稿分析やWeb行動ログ解析も多くのツールが提供されており、労力の面でも、さほど負担にならないでしょう。しかし、定量調査は不特定の聴取者を集める性質上、調査の確かさを担保するために一定規模のサンプルデータの収集が必要です。
したがって、アンケート調査では規模が大きくなりがちで、規模に応じて調査コストは高額となります。SNSの投稿分析やWeb行動ログ解析についても、大規模になれば、それに応じたデータの保存先や高機能な集計・解析ツールが必要となり、コストは増大します。
コミュニティを活用する際のメリットと課題
では、コミュニティを活用して行うマーケティングリサーチには、どのような特徴やメリットがあるのでしょうか。まず、「定性調査」「定量調査」のどちらが向いているかという点については、私の経験では「どちらも得意」であったと記憶しています。
一般的にコミュニティ会員はその企業や商品へのロイヤルティが高い傾向にあり、定性調査の難易度の高いインタビューやヒアリングにも丁寧に回答してくれることが多いと感じていました。
一方の定量調査では、聴取したいサンプル数がコミュニティの規模に見合っているかという前提はありますが(1,000人のコミュニティに、10,000件のアンケートを集めることは無理ですよね)、スピーディーに丁寧な回答を得ることができます。
両者に共通するメリットは、「低コスト」ということです。調査に協力してくれたコミュニティ会員への謝礼のコストはもちろん必要です。しかし、コミュニティ会員はその企業への思いが強く、何らかの役に立ちたいと考えている人が少なくありません。よってこうした調査への協力は、コミュニティ会員にとっても気軽にその思いを実現できる、いわば“自己実現の場”だといえます。
調査への協力によって何らかのインセンティブが得られれば、尚のこと嬉しいでしょう。昨今のロイヤルティプログラムでは、ポイント還元などのコモディティ化したインセンティブよりも、体験志向にしたほうがファン化しやすいとしてトレンドになっています。インセンティブにどういった特色を出し、いかにコミュニティ会員を喜ばせるかが、調査協力へのモチベーションや回答品質の向上にもつながるといえますね。
最後にコミュニティでマーケティングリサーチを行うときのデメリットについても触れておきます。コミュニティ会員は好意的なスタンスであるが故に、偏った意見になることもあります(いわゆる、「バイアス」です)。そのため、あまりにも高い評価や好意的なコメントは、ある程度割り引いて捉える必要があります。重要な調査などでは、コミュニティ会員への聴取を行いつつも、少数での他のパネルへの聴取も同時に実施し、その差を把握して補正するような方法をとるとよいでしょう。
「企業コミュニティQ&A」第10回まとめ
今回は、企業のマーケティングで重要となる「マーケティングリサーチ」に対して、コミュニティ活用がどのような効果をもたらすかについて考察してみました。大企業になると、新商品発売や既存商品のリニューアルの都度、今回取り上げたような調査をブランド単位で行うでしょうから、少ないコストと手間でスピーディーに実施することが重要です。また、コミュニティの運営部署が調査企画のたびにブランド側との仲介役として動いていては、その手間だけで運営が行き詰まってしまうことも考えられます。コミュニティを全社の資産と考え、複数の部署で主体的に取り組んでいくことも大切でしょう。
次回もお楽しみに。