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アーユルヴェーダの始まり 乳海攪拌のお話
いつも読んでくださる皆さま。ありがとうございます。
今回はリラックスして読んでいただきたくて、ちょっとおもしろい乳海攪拌のお話をすることにします。
アーユルヴェーダを学んでいくとインドの神話との関係性をどこかで必ず知る事になります。
私はインドでアーユルヴェーダの教授であり医師であるチャウダリ先生のクラスでアーユルヴェーダの神と言われるダヌワンタリと乳海攪拌の話をしてもらいました。
インドの慣れない暑い気候の中で一日中講義を聞くのはけっこう大変なことで先生もそんな生徒を気遣い、タイミングをみてダヌワンタリと乳海攪拌 の話をしてくれました。
乳かい攪拌の話を読んでから、アーユルヴェーダにすっかりハマってしまったという人もいるようです。
ぜひ、リラックスして楽しんで読んでください。
ダヌワンタリ と乳海攪拌
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ダンヴァンタリ
アーユルヴェーダの神と言われており、ヴィシュヌ神のアバターでバラナシの王でした。
ダンヴァンタリは乳海攪拌の中からアムリタ (不老不死の蜜)を持って生まれてきました。
アーユルヴェーダを学ぶ時、必ず最初に登場するのがダヌワンタリ神です。
4つの手にはほら貝、マニチャクラ(円盤)、ヒル、薬草、アムリタの壺を持っています。
ダヌワンタリが持っているものにはそれぞれ意味があります。
・ほら貝 (シャンカ)- ほら貝を吹くとその辺りの空気がきれいになる。
・マニチャクラ - 刃のついた円盤は外科手術を象徴しています。
・蛭(ヒル)- 毒を吸い取る。アーユルヴェーダの治療法 パンチャカルマでは昔は実際に蛭を使っていたそうです。蛭は毒素のある血だけを吸い、毒素がなければ吸い付かないと言われています。
・薬草- アーユルヴェーダで治療に使う薬用植物
・アムリタの壺- 不老不死の霊薬が入っている壺
乳海攪拌のお話
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短気なリシ(賢者)ドゥルヴァーサスは怒るとすぐに呪いをかけるが丁重な扱いをする者には親切でした。
ある日、ドゥルヴァーサスは人間の王様に手厚い招待を受けました。
その後ドゥルヴァーサスは王様からもらった花の首飾りをインドラ神に与えましたが、インドラ神が乗る象にその花の首飾りをかけた時、象が落としてしまいました。
それを見たドゥルヴァーサスは激怒しインドラ神たちに呪いをかけてしまいました。
神々のいる天上界の繁栄を失い、神々は力がなくなり、人間界は堕落しました。
この時とばかり、アスラ(阿修羅)までが天上界に侵攻してきましたが神々は太刀打ちすることができず、シヴァ神やブラフマー神に助けを求めましたがドゥルヴァーサの呪いを解くことはできませんでした。
そこで神々はヴィシュヌ神に相談をしに行きました。
するとアムリタ(不老不死の霊薬)を飲めという答えをもらいました。
そしてアムリタを作るために乳海攪拌を計画しましたが、それにはどうしてもアスラの力が必要になりました。
アスラはアムリタを分けてくれるならやってもいいと言いました。
ヴィシュヌ神は様々なたくさんの植物や種(薬草)を乳海 に入れた後、巨大亀クルマのアバターとなり竜王ヴァスキを絡ませた大きなマンダラ山を背中に乗せ、乳海に入っていきました。
アスラはヴァスキの頭を持ち、神々はヴァスキの尾を持ち、互いに引っ張り合いマンダラ山を回転させました。
そして入海は大きくかき混ぜられたため、入海の生物は潰されて死に、大マンダラ山は燃え山の動物たちも死んでしまいました。
その火を消すためにインドラ神は山に水をかけました。
すると山にあった薬草から出た液体が海に流れ込みました。
巻かれて、尾と頭を引っ張られたヴァスキは苦しみ毒を吐き出しました。
シヴァ神はその毒を飲んでしまったために全身が青くなってしまいました。
その後、入海攪拌は1000年間も続きました。
その入海から太陽、月、インドラ神の乗る白い象アイラヴァタ、7つの頭を持った空を飛ぶ馬ウチャイヒシュラヴァス、ヴィシュヌ神が胸にかけている宝石カウストゥバ、願望を満たしてくれる神の木カルパヴリクシャと聖なる薬草パリジャタ、海の精アプサラス、妙薬の酒スラー酒の神ヴァル二、聖なる牝牛神カーマデーヌ、女神ラクシュミーが生れました。
そして最後に出てきたのがアムリタの壺を持ったダヌワンタリ神です。
アスラは神々との約束を破り、ダヌワンタリ神からアムリタの壺を奪ってしまいました。
ヴィシュヌ神は(ダンヴァンタリ)のアバターである美しい女神モヒ二となり、美女のモヒ二に誘惑されたアスラはアムリタを渡してしまいました。
そして、ついにアムリタは神々のものになりました。
ある日、4本の腕と一本の尾を持つアスラがこっそっりアムリタを飲んでしまいました。
それを知った太陽神スーリヤと月神チャンドラはヴィシュヌ神にそのことを告げ口しました。
ヴィシュヌ神は円盤(チャクラ)でラーフの首を切断しました。
ラーフは首から上だけが生き残り、ラーフの頭は告げ口したスーリヤとチャンドラを恨み、追いかけて食べようとします。
しかし頭から下がないために飲み込んでも太陽神スーリヤと月神チャンドラはすぐに外に出てしまいます。
それからそのアスラはラーフと呼ばれ体はケトゥと言われるようになり星になりましたとさ...
このお話はヴィシュヌ神がアスラを打ち負かすことで終わるのですが、
インド占星術とも関係がある話として繋がっていて、
ラーフは太陽や月を飲み込むこと(日食や月食)を意味しています。
ラーフには頭だけがあり体がなく、月の神チャンドラはラーフの喉からまたすぐ出てくることから、空に月を見ることができるのだと言っています。
※ラーフはその体ケトゥとともに凶兆を告げる星となりインド占星術には日食・月食、スーリヤ、チャンドラ、ラーフ、ケトゥという用語が使われています。
インドの古代神話の中に出てくる、アーユルヴェーダの神ダヌワンタリやアムリタ...
インドに行くとアーユルヴェーダのクリニックやスパにもアムリタを持ったダヌワンタリが飾られていて、花が置いてあったりサンダルウッドのお香が炊かれていたりします。
インドの神話はアバターが出てきたり、首をはねられたり、身体が青くなったり、誘惑されたり、お酒がでてきたりとあまり真面目な感じがなく、アーユルヴェーダには神秘的な部分もありますが、インドの総合病院や大学病院にはアーユルヴェーダ科があり、日本では内科の医師が漢方の処方箋をだしてくれるようにインドの西洋医学の医師もアーユルヴェーダの処方箋を併用して出してくれます。
乳海攪拌のお話、面白かったでしょうか。
楽しんでいただけたら幸いです。