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詩集

16
芸術と愚痴が混在する散文詩
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#文学

開花

風が枝から葉を払い春を迎える支度をする
今日は綺麗な冬の空
あらゆる兆しを感じながら
僕は僕だけが変わらないことに焦る

風が木の葉を巻き上げて冬を連れていく
今日は綺麗な冬の空
あらゆる兆しを感じながら
僕は僕が萌芽するまで寄り添う

望郷の詩

とても懐かしい感じがする
あの頃の希望に満ちた
あの春の日の
あの夕暮れの
あの自分
今日、心が死んだ。

錆び

憎しみとは錆びである。
時と共に侵食し、その身を覆い尽くす。

崩壊

体ばかりが大きくなって
今でも心は子供のままで
部屋で蹲って泣いている
淋しさとだけ身を寄せて
僕はずっと子供のままか

逃げて疲れてまた泣いて
それでも日々は続いてく
枯れて萎れてまた朽ちて
それでも日々は続いてく

過去の苦しみは終わらず
僕の心の奥から来襲する
不安は喚起し神経は震え
理由もわからず涙を流す

苦しみや痛みの朝が来て
僕はまた漂うだけの一日
平日の昼間の住宅街では
その静謐に

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ヒトナツ

渦巻く

風に揺れる草花の影
時代の記憶を舞いあげて
幼少期の声に涙する

遠くの森の闇の中から
太古の巨大な生き物が
こちらを睨んで潜んでる

思想の眠る昼下がり
田の畦を歩いて
風の精霊の嘶きを聴いた

陽射しが誘う眩暈の中で
私は悲痛に叫んだ
なぜだ!なぜだ!

収束

黝い夜が稲の間に染み渡る
田の畦に立ち
凛とした夜の風が田の面を揺らした
僕は風の声を聴いたのだ

星々に隠された世界の秘

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僕は夜の遺失物

夜の瀬にみる切なさは
僕を優しく愛撫する

彷徨う僕にも進む生
惨めに満ちる幸と嫌悪

諦念の先にある暮らし
悲しくなるのは信じた未来

街は目覚めて陰鬱だ
僕は夜の遺失物

記憶

震える神経で歌う叙情
些細なことに掻き乱されて
曖昧なものはそのまま

君の目を見て未来を思う
君の目を見て未来を思う

寂しさ隠して笑うだけ
寂しさ隠して笑うだけ
酔えない僕の強がりか

月夜の樹影に鳴り響く
魂の叫び声を聴く
その声に遠い記憶が揺れている
かつての僕が思い描いた未来