【2024年大統領選】共和党予備選 初回討論会後の情勢変化
こんにちは。雪だるま@選挙です。8月23日に、共和党予備選の初回討論会が実施されました。首位を独走するトランプ前大統領は参加しませんでしたが、2位以下の候補者7人が参加し、初の討論会に臨みました。
この記事では、初回討論会の形勢と、討論会を視聴した予備選有権者の評価に概観し、討論会が各候補の支持率に与えた影響について分析します。
初回討論会の「形勢」は
参加した候補者8人
今回の討論会に参加したのは、演壇中央から順に次の8人です。
デサンティス氏は、この候補の中ではトップの支持率を維持し続けてきましたが、3月以降は支持率が低下し続けていて、正念場を迎えています。
ラマスワミ氏は、7月以降に支持率を急上昇させました。世論調査の結果を分析すると、デサンティス氏への期待感がしぼむにつれて、支持層の一部を吸収したとみられます。
ペンス氏やヘイリー氏は、出馬表明の段階から支持率が上向かず、5%程度の支持率は確保していますが、停滞していました。クリスティ氏やスコット氏は、一定の知名度を持ちつつも、支持率は数%に留まっていました。
ハッチンソン氏やバーガム氏は、支持率の点では泡沫候補となっています。
討論会の形勢と結果
討論会では、実業家のラマスワミ氏に攻撃が集中しました。支持率を急速に伸ばし、デサンティス氏を凌ぐ勢いになっていたこともあり、今回の討論会の「主役」はラマスワミ氏だったといえるでしょう。
ヘイリー氏は、外交政策を中心にラマスワミ氏を攻撃しました。ヘイリー氏は、ラマスワミ氏が参加者の中で唯一、ウクライナ支援を「支持しない」としたことについて、討論会の前日にプリゴジン氏が死亡したことを引き合いにしながら、ラマスワミ氏をロシアに弱腰だと非難しました。
その他、ラマスワミ氏の外交を素人的だと批判し、会場からは拍手が上がりました。
ペンス氏も、ラマスワミ氏を攻撃しました。温厚な人柄で知られるペンス氏が、ラマスワミ氏を激しく攻撃したことは、意外性を持って受け止められました。
クリスティ氏は、ラマスワミ氏を挑発する言動を繰り返し、またトランプ氏への批判も最も強く展開しました。トランプ氏に共和党の多数派には響かなかったとみられますが、一部の根強い「反トランプ」勢力には好意的に受け止められました。
デサンティス氏は、ラマスワミ氏をめぐる攻防には参加せず、討論会での発言機会も多くありませんでした。失点を抑える戦略だったとみられますが、注目度も低くなり、支持率を反転させるきっかけにはなりませんでした。
討論会の評価
好感度と知名度
予備選有権者は、討論会の結果をどのように捉えているのでしょうか。次の調査は、討論会の前後で、候補者の好感度がどう変わったかを示しています。
ヘイリー氏の好感度が大きく上昇していることがわかります。unfavorable=非好感度は討論会前と同じ水準であり、好感度だけを上げることに成功しています。このことから、討論会はヘイリー氏にとって大きなアドバンテージとなったといえるでしょう。
これに対し、ラマスワミ氏の評価は分かれていることがわかります。ラマスワミ氏は、討論会後に好感度も上昇しましたが、非好感度も同時に上昇しています。今回の討論会で最も注目されたラマスワミ氏は、知名度を向上させることには成功しましたが、同時に一定数の有権者には反感を持たれたことになります。
ペンス氏とクリスティ氏は、討論会では積極的に発言しましたが、好感度の改善は見られず、これ以上の浸透は厳しい情勢です。
討論会では守りの姿勢に入ったデサンティス氏ですが、候補の中では討論会前から認知度が高く、討論会後も大きな変化は出ていません。
デサンティス氏の強みは、この高い知名度と好感度です。共和党の中では、トランプ前大統領に並ぶ水準であり、他の予備選候補者に対してリードしています。
各候補者の期待値と実績
デサンティス氏が他の候補者を上回っていることは、次の調査からも分かります。次の図は、横軸が「討論会前の期待値」、縦軸が「討論会後の評価」を表しています。最大5.0ptで評価され、候補者の位置が左上にあれば「期待値を超えた」、右下にあれば「期待値を下回った」ことになります。
デサンティス氏は、候補者の中でも高い期待値で、討論会の評価も最も高くなっています。討論会のパフォーマンス自体は「守り」の姿勢でしたが、トランプ氏以外の候補者に対してはリードを守っていることが分かります。
この調査でも、ヘイリー氏は事前の期待値を上回っていたことが分かります。対するラマスワミ氏やスコット氏は、事前の期待値ほどの評価を得られなかったことが分かります。
その他の候補者は、総じて期待値は上回ったものの、討論会後も関心の低さは改善されていないことが分かります。。
討論会後の情勢変化
ラマスワミ氏の停滞、ヘイリー氏の追撃
討論会後、予備選の情勢はどのように変化したのでしょうか。まず、目立つのは「ラマスワミ氏の停滞」です。
次に示すのは、予備選の支持率推移です。
討論会以降、ラマスワミ氏の知名度は上昇したはずですが、支持率に大きな変化はありません。調査によっては、討論会前を下回るものも出始めていて、支持率の停滞が明らかになっています。
これに対し、ヘイリー氏の支持率は上昇しています。討論会直後から支持率が上昇し、トランプ氏、デサンティス氏、ラマスワミ氏に次ぐ4番手に浮上しています。
ペンス前副大統領と競り合う調査もあり、今後の課題は4番手の地位を確実にし、ラマスワミ氏を追い抜くことができるか、ということになります。
また、ヘイリー氏は初期州のアイオワ州やニューハンプシャー州では、さらに支持率を上げている調査があります。同様に序盤のサウスカロライナ州では知事を務めていた経験から、ヘイリー氏にとって戦いやすい環境となっています。
スコット氏は、第1回討論会では埋没し、期待値の点からみても十分なアピールはできませんでした。支持率にもこの評価は反映されていて、討論会前は同程度の支持率だったヘイリー氏に突き放される結果となっています。
クリスティ氏は、トランプ氏への拒否感が特に強いニューハンプシャー州を中心に支持を伸ばしていますが、最も不人気な候補の1人であり、支持率をさらに上昇させる見通しは立っていません。
ペンス氏は、反トランプ姿勢を鮮明にしていますが、非好感度が高く、支持率を上昇させるための伸びしろも少ない情勢です。クリスティ氏と同様、これ以上の支持拡大は望めません。
トランプ氏の支持率
共和党予備選では、トランプ氏が独走状態となっています。3月の起訴以降、デサンティス氏を突き放す形で支持率を上昇させ、8月の討論会にも出席しませんでした。
トランプ氏が支持を集める構図や背景については、次回以降の記事で分析しますが、ここでは支持率の状況について見ておきます。
トランプ氏の支持率は、3月の起訴以降上昇しましたが、2回目の起訴からは支持率に大きな影響を与えていません。ただし、デサンティス氏が支持を落としているため、リードは拡大しています。
アイオワ州やニューハンプシャー州などの初期州では、全米平均よりも支持率が10ポイント程度低くなっています。
アイオワ州では宗教保守の影響力が強いですが、トランプ氏は中絶などの問題に関して穏健な立場を示しています。レイノルズ州知事との対立も伝えられていて、少し逆風が吹いている状況です。
ニューハンプシャー州は、穏健層が多く反トランプ色が強い州の1つです。クリスティ氏やヘイリー氏など、政治的立場が穏健な非トランプ候補が支持を集める傾向があります。
トランプ氏がこれらの初期州で苦戦すれば、予備選全体の構図にも影響を与える可能性があります。
9月前半までの予備選の情勢
第1回討論会では、その後の支持率上昇も含め、ヘイリー氏が明確な勝者となりました。ラマスワミ氏は、討論会で目立ったものの勢いを失いました。デサンティス氏は反転攻勢のきっかけを掴むことが出来ていない状況です。
トランプ氏は独走状態で、指名に大きく近づいていますが、初期州を中心に懸念材料は残ったままとなっています。
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