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イギリスがやってきた月曜日のスコッチエッグ
すんごいものを発見した。
しかも、近所のスーパーでだ。
白と黄色のコントラストが綺麗なゆで卵が
ひき肉に包まれた後に揚げられた
あの究極の1品、スコッチエッグ。
かつて、私の10時のおやつだったスコッチエッグ。
イギリスに住んでいた頃、
小さな街でバリスタとして働いていた。
8席ほどの小さなカフェの隣は
ブッチャーと呼ばれるお肉屋さん。
そこで売られているちょっとしたホットスナック。
ソーセージロール。
ブレックファーストロール。
スコッチエッグ。
朝7時から働く小腹の空いた私は、
お客さんの途絶えた時間を見計らい、
金ピカに輝くポンドを握り締め、
その日の気分でホットスナックを選ぶ。
スーパーのお惣菜コーナーで、
プラスチックのパックに入った
スコッチエッグを見るだけで、
あの頃の日常がぶわっと蘇る。
最近はお惣菜を定価で買うなんて
贅沢すぎでできなかったが、
(スーパーよ、ごめんなさい。)
今日は迷うことなく手に取った。
家に帰り、少し温め、
お皿にうつし、写真におさめ、
熱いうちにかぶりつく。
…
…
違う。
全然違う。
いや、スコッチエッグは何も悪くない。
君はただ、ひき肉を纏い、油で揚げられたゆで卵なんだから。
もちろんお店だって悪くない。
これはれっきとしたスコッチエッグなんだから。
ただ私の舌は、
あのお店のスコッチエッグ以外を
スコッチエッグとしては認識せず、
ただの「揚げゆで卵」として対応するようだ。
でも残念ながら
コロナ禍の中、閉店を余儀なくされたお隣のお肉屋さん。
あの思い出のスコッチエッグは、
人生で唯一のスコッチエッグとして、
その座を占め続けるだろう。
でもスコッチエッグを見るたび、
一瞬にしてあの日に戻れるのであれば、
それはそれで幸せなのかもしれない。