誰に頼るか問題【子宮体がん記録⑤】
告知から一週間。
記事をアップしたあと、案の定揺り返しがどーんと来た。
まあ当たり前である。
まずは体がおかしくなった。
あちこち痛い、気持ち悪い、つらい、疲れがひどい。
その度、「これは転移しているのかも」と思い、死にそうになる。
心はアップダウンが顕著で、「大丈夫!治るよ!」とスーパーポジティブになった数時間後には「あ、駄目だ、もう死ぬわ」のハイパーネガティブに落ちる、を繰り返している。
もともと双極性障害なので少なからずこの性質はあるのだが、もはや薬で制御出来ない。
衝動的に自傷や危ないことに手を出してしまわないよう、とにかく外に出るようにした。
部屋にこもっているとろくなことにならないからだ。
私は独身である。
結婚を考えたこともないし、妊娠出産も望まない。
子宮をとるのに抵抗もなく「どうぞどうぞ」という気持ちであり、その点の不安は一切ない。
では何が不安か。
死ぬこと?ではない。
私は極度の不安障害で、特に嘔吐恐怖症がひどい。
自分だけでなく、他者が身近でえずく音だけでも過呼吸とパニックを起こす。
過去に友人が胃腸炎にかかり一晩中トイレで戦っていたとき、恐怖でストレス性の胃潰瘍を起こした。たった数時間で。
友人は翌朝回復し、私は病院行きとなった。笑えない。
なので、とかく抗がん剤治療になったら吐き気の副作用があるという情報だけで、死んだほうがマジだという恐怖に支配されていた。
あとはASDであるがゆえの、ルーティンが崩れることへのストレス。
今まで通りの生活が出来なくなるのが、苦しい。
この恐怖だけでもパニックを起こす。
顕著に頓服の抗不安剤の量が増えた。
あらゆる情報を検索しては落ち込み、「辛い気持ち、苦しいときは身近な人へ頼ろう」との記事を見ては「いや、おらんのよ」と突っ込んでしまう。
長い付き合いの友人は一人いて、彼女にはたくさん支えられているけれど、なんでも頼るわけには行かない。なにせ彼女には彼女の生活がある。
たまに話を聞いてもらい、休みの日に一緒にいてもらうだけで十分だった。
しかも彼女には今回の入院手術において保証人になって貰うことになっている。
これ以上は求めたらバチが当たる。
私の家族はいわゆる機能不全で、母は幼い頃に離婚してどこにいるかもわからないし、父とは二十年以上断絶している。この先もたぶん変わらない。
兄弟もいないし、親戚ともまったく付き合いがない。
むしろ父に関しては、新しい家庭を持っているし、正直生きているかも分からない。戸籍上では、義母と義妹と義兄がいるのは知っているが、一度会っただけで連絡先も知らない。
二十年以上前、しんどくて、前触れなく実家に戻ったとき、家には知らない母とその連れ子さんである人たちと、連れ子さんのお子さん、旦那さんが仲良く暮らしていて、私の部屋は彼女たちの部屋になっていた、そういうこと。
場違い感と邪魔者感を露骨に向けられた。言葉でも。
「あ、ごめんなさい、帰ります」と回れ右してからは、一度も帰っていない。そんな場所はない。
生まれた家は母方の実家だが、すでに離婚しているし、祖父母恋しさに数年前Googleマップのビューで見たら、廃墟になっていた。
そういうことである。
友人も殆どいない。作り方が分からないからだ。
。なんでもストレートに物を言い、言葉の裏が読めない私は、特に同性に嫌がられる。共感性がものすごく低い。
「私は人を傷つける人間だ」と自覚を持った二十代から、とにかく深い関係にはならないように心がけて生きている。
年上の友人Hさんは、十代の無自覚だった私を知っていて、なおかつ「この子は放っといたら駄目だ」と見放さないでいてくれた貴重な人である。友人だが、一回り以上年上なので、感覚的には姉か母かというポジである。
人間嫌いのフシがある彼女は、何を考えているかわかりやすい小動物のような私が楽だと言っていた。なりは大きいが、反応が小動物らしい。
こんな人間なので、人に頼るなんて難しすぎて無理なのである。
SNSやnoteですら、コメントしたくても、「いらんことを書いてしまうに違いない」から、出来ない。人を不快にさせてしまうかもしれない恐怖のほうが、上回る。だから一方的にファンでいる。
苦しいなぁ、と思う。
誰かと話をしたい。してみたい。だけど、私は人を傷つける、配慮の足らない人間である。
病気になると、心が弱る。
話をしたいし、聞きたくなる。
独身であることには後悔はないが、カウンセリングとか支援センターとかに頼るべきなの?ハードル高い。
リアルで出来ない私は、毎日ネットで片思いをしながら、誰かの文章に頼っている。
つづく