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11月のフィンランドは曇り空の下で輝いていた
こんにちは!ライターのひらふくです。
めっきり寒くなって今年も終わりですね。
話は変わりますが、このあいだ人生で2回目のフィンランド旅行に行きました。
アパートを借りて首都ヘルシンキに1週間ほど滞在。たまたま有休とマイルが貯まっていたのでチケットをとり一人旅を計画したのです。
しかし、それは観光に最悪の月と言われる11月…。
紅葉も終わりクリスマスはまだ先で、フィンランドに住む日本人も「何もないから」と日本に帰省するとのこと。実際、1週間ほど街を歩いてみて日本人は5人しか見かけませんでした。
毎日が曇り空で気が滅入るとまでいわれる11月のフィンランド。
でも、そんな普通の日に、どの観光サイトにも書いていなかったフィンランドの魅力を私は知ったのです。
今回はそんな旅日記をひもといてお話させてください。
初日から寂しさホームシック
私がヘルシンキに着いたのは朝7時。朝早いから暗いんだなと思っていたら、日中もほぼずっとこの暗さでした。照明のオレンジ色が目に沁みます。照明は、夜だけでなく昼間も気持ちを支えてくれるのだと知りました。
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夕方ごろアパートにたどり着くと窓の外は川沿いの住宅街。人がまばらに歩いているのですが、この風景を見ながら私は突然寂しい気持ちに襲われました。
普段からひとり旅が多い私。こんなホームシックのような気持ちになったのは10年以上前です。天気や暗さがそうさせたのか、日中も5℃という寒さからなのか、人の少なさにさびしくなってしまったのか。
この夜はテレビを点けて人の声を聞いたままでないと眠れないほどでした。
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サウナとマリメッコの本当の価値
翌日も寂しい気持ちが消えません。ヘルシンキの街並みを歩き、カフェに入ったりスーパーで買い物をしたりと行動してみました。フィンランドの人と少し会話もできて嬉しくなるものの、家に帰ると身の置き場がない気持ち。
何かないかと必死に探してたどり着いたのが部屋についていたサウナです。
フィンランドはサウナが盛んで家にも会社にもあるほどですが、実は私はサウナの良さがあまりわかっていませんでした。身体にいいとは思うのですが、スポーツやレジャーのような非日常で特別なものだと感じていました。
さて、アパートのサウナは2畳に満たない小さな部屋。電気ヒーターが上に乗った石を温めて部屋全体を熱くします。冷え性の私は足先をヒーターに当てじっくりと温まるのを待ちました。
その時の気持ちをなんと言ったらいいのでしょうか。
身体が温まるにつれて、寂しかった気持ちがしぼんでいき悲しいことを考えられなくなるのです。胸に凝り固まっていた思い出も今なら口に出せそうな、そんな緩んだ心持ちになりました。
日本で健康のためにサウナに入っていた時とは違います。寒いから、やるせないから、サウナに入る。そこで心が温まり前向きな気持ちになれる。こんな経験は生まれて初めてでした。
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今までその魅力がよくわからなかったものがもう一つあります。それはフィンランドを代表するブランド、マリメッコ。鮮やかな原色や大きな花柄は日本でも大人気ですが、自分には少しビビッドすぎる気がしていました。
でも、黒やグレーのコートが行きかう街の中でマリメッコのショーウィンドウがくれる明るさときたら!
青空の下で見るマリメッコとは別物です。デザインや色がいい悪いではなく心に元気をくれるのです。
百貨店ではマリメッコ以外のブランドもたくさん展開していました。色合いもデザインも多様なのですが、それでもマリメッコが一番カラフルで一番私を鼓舞してくれるように感じました。
心を明るくしてくれるテキスタイル。曇り空の下で見て初めてその必要性がわかった気がします。
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図書館に行くのは、誰かに会いたいから
イベントが少ない11月。1週間ヘルシンキの街中を歩いていたのですが、一番人が集まっていた場所は実は図書館でした。
ヘルシンキにはOodiというフィンランド最大の図書館があります。会議室スペースもあれば、カフェやスタジオ、3Dプリンターが使える図工室まで設置されています。
でも人々が図書館に集まる理由は「便利だから」ではない気がしました。
日曜日の夜19時にOodiに行きました。明日は平日ですし、きっとみんな家でゆっくりしてるのだろうと思いきや席はどこも満席!
勉強をする大人たちもいれば、幼稚園くらいの子供たちが走りまわっていたり座ってボーっと外を眺める人も。Oodiのカフェにおしゃべりしに来る人もいるようです。
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階段状になったスペースでは、座って友達とゲームをする人、音楽を聴く人、寝ている人。小学生の女の子に宿題を教えているお母さんもいました。
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不思議なのは、どうしてみんなは図書館に集まるのかということ。
ミーティングならまだしも、寝たり宿題をするなら家の方が集中できそうですし、図書館がある街中にはカフェもたくさん開いています。
そこで私が思ったのは「人の気配の心地よさ」。
国土に対して人口密度が低いフィンランドでは、街も広く人同士の距離も開いていて、街中にいても見える範囲に人がいないなんてこともありました。
それは人目を気にしないで済むので清々しくもありましたが、一方で人に会えない寂しさもあったのです。
そんな中、図書館に行けば誰かがいてくれるということは安心そのものでした。図書館ではそれぞれ自分の好きなことをしています。それでも、一人でいても同じ空間に誰かがいてくれる、そんな距離感の心地よさがOodiにはあり、またフィンランド全体にもあると思うのです。
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曇り空だから気づけるものがある
観光にむかないと言われる11月のフィンランド。
でも、寒くて人が少なくて曇り空が多い時だからこそ知ったことがありました。
サウナは心を温めてくれること、マリメッコは心を明るくしてくれること、図書館は誰かがいるという安心感をくれること。
どれも観光シーズンのフィンランドでは味わえなかったかもしれない、素顔のフィンランドの魅力です。
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そして、それは日本での生活でも同じことが言えるかもしれません。
日常の中で、元気が出なくてなんとなく寂しかったり少し落ちこんだり。私は日々の6割くらいそんなモヤモヤと雲がかかっている「曇り空な日」があります。
毎日を充実させないと!と思いつつ、スマホを見て終わった休日や誰とも直接会わなかった日は、「今日は何もしなかったな…」と自分をうっすら責める気持ちになったり。
本当は毎日が青空のように輝いているほうがいいのでしょう。
でも、曇りだからこそ心に染みる心地よさもあるのかもしれません。
できなかった自分を責めるよりも、今日気づくことができた心地よさを大切にしたい。
そう願いながら、今日も曇り空を見上げています。
Text by ひらふく(おとな教育の実践人事)