【イベントレポート】フィンランドと和文化の融合を体感!エラマ文化祭@飛騨高山(2022年11月13日)
2022年11月13日(日)に「エラマ文化祭〜フィンランドと和文化〜」を岐阜県高山市のウッドフォーラム飛騨にて開催いたしました。エラマ史上初の大規模イベントとなり、関東から関西までの幅広い地域から、オンラインコミュニティ「エラマの森」の会員さんや地元の方など、約160名の方にお越しいただきました。
初開催となるエラマ文化祭のテーマは「フィンランド × 和文化」です。どこか似ている、フィンランドと日本。フィンランドと日本とのつながりを感じてもらえるイベントとなりました。
当日のタイムテーブルはこちらです。
フィンランドを感じる
フィンランドから来日するゲストと交流しよう!&北欧雑貨のエラマセレクトショップ
フィンランド東部の湖水地方の地方都市「プンカハリュ」から、ナチュラルウェルビーイングの第一人者であるマリ・ペンナネンさんと、妹で写真家のマリアンネ・アホネンさんが来日し、エラマ文化祭に遊びにきてくれました。彼女たちが住む街の紹介や、フィンランドの職人さんたちが作った木工雑貨、マリアンネさんの写真作品のポストカードの販売をしていただきました。
販売ブースには、お客さんが入れ替わり立ち替わり訪れ、マリさんとマリアンネさんと楽しく会話されていました。中には英語で交流したり、日本語で身振り手振りで一生懸命会話したり、普段触れる機会がない生のフィンランドの人たちとの交流を楽しまれている様子でした。
「フィンランドの人たちとは、とても話やすく、日本人に似ている!」といった感想や、
「マリさんの話を聞いて、彼女の街”プンカハリュ”がとても魅力的に感じました。来年の春、彼女たちに会いにフィンランドを訪問することに決めました!」
と早速フィンランドに行くことを決意された方がいました。
マリさんとマリアンネさんの商品が人気で、「欲しいと思っていたポストカードが売り切れていた」と声を漏らす参加者もいらっしゃいました。
別のコーナーでは、エラマプロジェクトのメンバーが厳選した北欧雑貨を販売。日本初輸入のブランドや、フィンランドや北欧の職人さんの作品など、「豊かな気持ちになれる」をテーマに厳選したアイテムがありました。
そのほか会場では、地元高山のコーヒー屋さん「Falo Coffee Brewers」の出店と、エラマの人気オンラインコンテンツ「哲学バー」のリアル版「哲学カフェ」があり、北欧雑貨に触れながらも、コーヒーを飲みながらゆっくり対話ができる空間になっていました。
よくイベントにみられるバタバタした雰囲気ではなく、程よくお客さんはいつつ、会場内にはコーヒーの香りと対話できるゆったりした時間が流れ、お客さんの滞在時間が長いことも特徴でした。
フィンランドと中継で繋ぐ!ライブ対談「豊かさとはなにか」
「豊かさとは何か」というエラマプロジェクトのコンセプトをメインの問いにして、
フィンランドのライフデザインコーチのミッラ・クンプライネン
(フィンランドからオンライン出演)
×
フィンランド生涯教育研究家の石原侑美
(会場で司会。エラマプロジェクト代表)
の公開対談を行いました。
ミッラさんの豊かな日本語表現で、参加者を巻き込んだ深い対話が始まりました。
会場入ってすぐのメインステージで行われた対談ではいくつかの観客席を用意し、それ以外の方は立見で参加されていました。
当初は石原とミッラの二者対談の予定でしたが、「フィンランドの幸福度の高さについて、フィンランドの人たちに直接聞きたい!」というモチベーションで長野県からお越しになった参加者のお一人に急遽出演していただくこととなりました。
「フィンランドの職場では、周りより早く退社しづらい雰囲気にはならないですか?」
「そもそもどうやって休んだらいいんだろう」
「私は休むと生活リズムが崩れてしまう。でも休むことが必要なのは感じる。生きるってなんだろうか」
働くこと、休むこと、生きることについてフィンランドと日本のクロス対話になり、石原によるフィンランドの文化的解説を挟み、他の参加者さんの意見を聞きながら大きな対話の輪ができました。
最後に、ミッラさんからのメッセージで締めくくられました。
「自分の人生をどう過ごしたいか、自分の命をどう使いたいか、自分に向き合って考えよう。自分に合ったやり方やペースで、具体的な活動に落とし込んでいけばいい」
まさに、豊かな生き方を考える場、エラマが実写化されたような場になり、最後はミッラさんから大きな宿題をもらったような気持ちになりました。
モルック体験
当日のお天気はあいにくの雨予報。しかしイベント開始直後はまだ、雨が降っておらず、「泣き出しそうな空」とも言えそうな、灰色の雲が空を覆っていました。お越しいただいた来場者から、「これをやってみたくて、今日は来たのよ〜!」と言わせたモルックを、雨が降る前にやってみましょう!
ボーリングみたいに、ポイントが書かれたピンを並べて2メートル離れたところから、棒を投げます。えいっ!
倒れたピンは倒れた場所にそのまま立て直します。
2本以上倒れた場合、倒れたピンの数がポイントとなります。1本だけ倒れた場合は、倒れたピンに書かれているポイントが入ります。11と書かれたピンを1本だけ倒すと、11ポイントです。50ポイントに到達した人が勝ちます。
他にも細かいルールはあるのですが、プレーする人は投げるだけなので、老若男女どんな人でも楽しめそうです。審判には、ポイントの計算で暗算能力が試されますので、今回は地元の中学生にお願いしました。
最初はあまり乗り気でなかったブルーのジャケットを着た彼は、1試合終わったあと、もう1回やる!って言ってました。
日本を感じる
国語×吟剣詩舞
20人ほどの参加者が和室で待っていたら、見城星梅月さんの舞が始まりました。優美で美しい所作ですが、どことなく物悲しい雰囲気が伝わります。彼女にはいったいどんな情景が見えているのでしょうか。
舞の後、踊り手である星梅月さんが、まずは「吟剣詩舞」について説明くださいました。「吟詠(ぎんえい)」と、吟詠に合わせて舞う「剣詩舞」の総称で、さらに、「剣舞」と「詩舞」があるのだそうです。今回は「詩舞」であり、女性でも男袴を着用して、詩に描かれた情景を踊ります、ということでした。
続いて、現役国語教師でもあり、エラマプロジェクトの和文化エバンジェリスト・橘茉里から、今回の舞のテーマが語られました。今回は、「かぐや姫」こと「竹取物語」の中から、かぐや姫から不死の薬を渡された帝が詠んだ和歌をモチーフとして選んだ、ということでした。
そして、ふたたび星梅月さんが、見どころを解説してくださいました。
白い衣をかぐや姫に見立てているので、星梅月さんが演じる帝の衣の扱いを見てほしいこと、かぐや姫と二度度会えなくなってしまった帝が幻想を見るほどに、彼女を想っている心情を想像してほしい、ということでした。
そして、同じ舞がふたたび踊られました。竹取物語の作品の解説と、見どころを聞いた後では、伝わってくるものが全然変わりました。参加者にも、帝の感情がより深く伝わっているようでした。
2回目の舞の後、自分が感じたことを周りの方と共有してください、というのがエラマ的でした。自分が見たこと、感じたことをアウトプットして、相手のアウトプットを聞いて、また新たに気づくことがあります。このように「学び」と「対話」の場を設けているのがエラマ文化祭の特徴です。
終了後、見城星梅月さんにお話を伺いました。
「今回のようなワークショップでは、1回目は事前情報なしで舞を見てもらい、2回目には、鑑賞ポイントを伝えてからもう一度見てもらっているんです。漢詩や和歌とコラボした舞をやりたかったところに、橘さんから声をかけていただいたので、これからも続けていきたいです。」
和室遊び場
フィンランドのカードゲームや、日本のトランプや折り紙などが置かれており、参加者のみなさんの交流場所になっているようでした。
写真では、地元の中学生と人生の先輩方が一緒にオセロをやっています。どちらも真剣です。ちなみに、今日初めて会った人たち同士なんですって。…黒が有利かな?
KOIVU木工スプーン作りワークショップ
会場2階のエラマ図書館の一角で、KOIVUの鈴木岳人さんによる木製のスプーン作りワークショップが開催されていました。KOIVUとはフィンランド語で「白樺」という意味だそうです。フィンランドで木工留学された鈴木さんの木工家具に囲まれた空間で、木と対話しながらもくもくと作業に集中されていました。
己書体験ワークショップ
己書(おのれしょ)とは、自分だけの書という意味なんだそうです。今回は「楽」や「心」、「笑」などの字を普段とは完全に逆の方向から書く、という脳みそ大混乱のワークショップです。点はぐるぐると大きな丸に、縦の棒は下から上に、横の棒は右から左に書くという「学校で習った書き順や書き方を忘れる」と教えていただいたのですが、これまでのマインドセットを壊すのは簡単ではありませんね。「文字として綺麗に書かなければならない」という強迫観念がないので、本当に自由に文字を書くことができる体験だったと感じます。
フィンランド×和文化
日本のお香×フィンランドの森・瞑想ワークショップ
お香をつくる香司・橘茉里が今回のイベントのために調合した日本の伝統的なお香を焚きながら、フィンランドのライフデザインコーチであるミッラ・クンプライネンさんによるフィンランドの森のガイド付きの瞑想タイムです。
森を感じてもらえるように、ヒバの練香を温めて利用していました。練香を温めて利用するのは、平安時代の貴族の間でも行われていたそうです。途中で柑橘系の香りのスプレーで香りの変化もありました。
参加者が目を瞑ったら、呼吸を整えるところから始まりました。そして、フィンランドの森へ入っていきます。ミッラさんの落ち着いた穏やかな声で、「今、どんな香りがするか」「どんな気持ちを感じているか」「足元はどんな感じか、やわらかいのか、かたいのか」などの問いかけとともに、それぞれの参加者が、自分の中にフィンランドの森を創造していくような瞑想でした。
ミッラさんは動画での出演でしたが、自然と触れ合うことの大切さを伝えてくれました。「必要としない気持ち(イライラや疲れ)を大空に解放する」という言葉が印象的でした。
11人の参加者が1時間弱の瞑想を楽しみ、出口では森の匂い袋をもらって和室を後にしました。
フィンランド×和文化パフォーマンス
イベントの最後はメインステージにて、和室で吟剣詩舞に出演いただいた見城星梅月さんの舞がスタート。
主催のエラマプロジェクト石原侑美いわく、「エラマ文化祭のテーマであるフィンランドと和文化の融合の芸術的な実験」と位置付け企画したパフォーマンスです。。
内容は、フィンランド出身のプロのアカペラグループ「ラヤトン」の曲に合わせて、星梅月さんが日本の伝統芸能のスタイルで舞うというものです。
フィンランドの音楽と日本の伝統芸能の舞は合うのか?
優しい曲調でフィンランド語のラヤトンの音楽が流れ始め、星梅月さんが舞い始めた瞬間、来場者も、フィンランドから来日したゲストも、ぐっとパフォーマンスに引き込まれます。観劇していた5歳の女の子も一歩も動かずじっと星梅月さんを見ています。
一般的にイメージする日舞的な女性らしい曲線的な舞ではなく、星梅月さんが舞う吟剣詩舞の特徴は、男性的な勇ましい直線的な表現です。その勇ましい表現が、フィンランドや日本に共通する雄大な自然を表現し、フィンランドと日本の豊かさを感じる唯一無二のパフォーマンスとなりました。
また、青と白を基調にした星梅月さんの扇や着物が、どことなくフィンランドを感じさせます。
見ていたお客さんからも拍手喝采で、フィンランドのことをあまり知らずにふとイベントに立ち寄っていただいたある来場者さんがから、「このパフォーマンスをきっかけに、フィンランドにとても興味を持ち、イベント当日にラヤトンの曲をダウンロードしました」と後日メッセージをいただきました。
フィンランドから来日したマリ・ペンナネンさんは、
「フィンランド人と日本人は繋がりがあり、似ている。現代に生きるフィンランド人が忘れた、自分たちの繊細さや美しさ、魂が重なり合ってるのを感じた」
と感想を共有してくれました。
このパフォーマンスを通じて、フィンランドの人たちも、私たち日本の人たちも、確かにフィンランドと日本のつながりを感じる時間となりました。
参加者の声
参加者の方に、今回のイベントの感想を伺いました。
“フィンランドと日本は似ている”にとどまらない
エラマプロジェクトでは、これまで「フィンランドと和文化のつながり」について、ウェビナーやWebメディアで発信してきました。ヨーロッパのフィンランドとアジアの日本が似ているのは意外だと思われる方もいらっしゃいますが、昨今のサウナブームやムーミンの人気、フィンランドのライフスタイルや教育・福祉への注目を見ると、フィンランドへの憧れだけではなく、どこか日本や自分たちの文化に近いという感覚があるからではないでしょうか。
今回のエラマ文化祭では、リアルにフィンランドの人たちと触れたり、芸術を融合させることでフィンランドと和文化のつながりを感じるプログラムがたくさんありました。
けれど、フィンランドと和文化のつながりを感じることは、ただの通過点にすぎません。そのつながりを感じた上で、豊かに生きることを考える、対話が生まれる、これがエラマが実現したいことです。
そういった意味で、エラマ文化祭はまさに豊かに生きることを考えたり、他人や自分、自然と対話できる環境だったのではないでしょうか。
雨が降りしきる中、ある人は1日中会場に留まり、芸術鑑賞や他人との対話、エラマ図書館で本を読みながらゆっくりと時間を過ごされていました。
テンションの高い興奮した「楽しい」ではなく、一人ひとりがゆっくりと長く滞在し、穏やかで豊かな「楽しい」を感じていただいた1日でした。
多くの方にお越しいただき、ありがとうございました。また、本イベント開催にご協力いただいた皆様に改めて感謝申し上げます。
穏やかで豊かな「楽しい」を感じていただけるイベントをこれからも開催したいと思いますので、エラマプロジェクトにどうぞご期待ください!
Text by 石原侑美(エラマプロジェクト代表)/ひらみなおこ(ふつうの会社員)