「よそはよそ。うちはうちだよ。」
東京に住んで5年になる。住み始めた当初、居場所が欲しいと思った。誘われたホームパーティーに参加し、大規模フェスイベントに出かけ、夜な夜な将来を語る自称アーティストと知り合った。なんとなく、自分が東京を楽しんでいるかのように思い込もうとしていた。
半年ほど経ったある日、長年の友人と久しぶりに会った。「自分がちっぽけな存在に感じる。居なくてもいい存在。」彼女はそう語っていた。
個性を持っている人が集まる街。情報が溢れる街。
人と自分を比べてはため息が出る。彼女の気持ちが良く分かった。
深い関係になることはなく、新しい出会いは桜のように散っていく。薄い関係に疲れ、出かけることはなくなった。
必死に何者かになろうとして、自分がどうしたいのか?分からなくなる度に母によく言われた。「よそはよそ。うちはうちだよ。」
東京は刺激的な街だと思う。自分の知らない世界が広がっている。その世界が触れる近さにある。一方で、孤独を感じやすい街である。私利私欲、感情が至る所で漂っている。飲み込まれてしまうと自分を見失う。
アドラー心理学の一節にもある、他者からの承認を求める生き方は「他人の人生を生きること」
人と比べる必要はない。自分が心からやりたいこと、楽しいと思うことをするだけで良いのだ。
「よそはよそ。うちはうち。」
そう思えると東京はとても楽しい場所だ。
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