「自分のペースで仕事ができる」コペンハーゲンの人気和食店の料理長に聞いた、海外に挑戦するきっかけと、海外の文化と仕事への向き合い方【現地料理人インタビューVol.2 伊藤慎也さん】
前回の記事では、三児の父としてデンマークで働くことについて、主にプライベートの側面からお話を伺いました。今回は、海外に行くきっかけとなった話や、異国で日本食を作ることにどうやって向き合っているのか、伊藤さんが感じた日本とデンマークの違いという点に着目してお話をお聞きしました!
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「とりあえず行ってみよう」海外で働きたいと思ったきっかけと挑戦するに至った経緯
これまで複数の海外経験を持つ伊藤さん。日本での修行から始まり、フランスやスイス、そしてデンマークと、さまざまな国でその腕を振るってきました。そんな伊藤さんが、海外での挑戦を決意したのはどのような理由からだったのでしょうか?
-なぜ海外に出てみようと思ったのですか?
銀座では三つ星レストランで働いていたんです。パリに出店するということで半年ほど準備に行ったんですけど、そこで現地の三つ星シェフと会う機会がありました。彼らはたまに厨房をチェックするぐらいで、休みをしっかりとっているんですよね。そうやって悠々自適な暮らしをしている彼らと、方や毎日朝から晩まで働いている私たちがすごく対照的に見えたんです。同じ三つ星のシェフなのにこんだけ働き倒して、すり減らして働いている自分たちとこんなにも違うものかと衝撃を受けて、海外で働くことを考えるようになりました。
-実際に海外で転職をしようと思った時、どのような行動を取られたのですか?
パリから帰国した後、銀座のお店はしばらく働いて辞めました。転職活動をしていて、結構良いお店の総料理長ポジションの求人で最終段階まで行ったんですけど、なんか雰囲気が気に入らなくて(笑)。すごく働かされそうと思ったんで丁重にお断りしました。それでたまたま海外の求人サイトを見てスイスの和食店で料理人募集していますみたいな求人があったので、直接やりとりをしてみたらすぐにでもきてくださいという感じだったので、しばらく条件等の確認でやりとりを続けて、とりあえず行ってみようかなという感じで行きましたね。
料理人として働いて感じる両国の違いと、日本食との向き合い方
Posh Jahでは、地元で取れる新鮮な食材を使って料理を提供しているのだそう。実はデンマークの国土は海に囲まれており、世界でも有数の漁業国として知られ、EUでは第一位の漁獲量を誇ります。確かに、北欧産の鯖やサーモンをスーパーで見る機会が多い気がしますね。食材をはじめとして、料理人として感じる違いを聞いてみました。
-食材の違いはありますか?
魚の種類は日本と比べると少ないですが、寿司に使える旬の魚もありますし、天ぷらで言えばアスパラガスはすごくいいものが入りますし、季節の葉野菜、新玉ねぎ、新じゃが、なす、ズッキーニ、ヤングコーンなど、フレッシュで美味しい野菜があります。魚は卸売の業者に簡単にオーダーできて、悪いものがあればクレーム対応をすぐにしてくれるので、助かっています。
-日本とデンマークで料理人として働くことの違い
考え方の違いとしては、特に和食だと、日本ではいかに職人としてのスキルが高いかが一番重視されていると思うんですけど、こっちの料理人さんはいかに新しいアイディアを考え出すかという方が重要視される傾向にあると思います。あとは、スタッフとの温度差はあると思います。例えば早く料理を持っていく意識が低かったり、日本と比べるとちゃんとしてないと感じることもありますが、それは高級店でも同じなので、そういうものとして認識しています。
-逆にデンマークだからこそできていることはありますか?
都心でもすぐ近くに公園公園や森があるので、野生の食材をとりに行けるのは楽しいですね。自分がとってきたもの料理に使えるっていうのはスペシャルなことですし、旬を感じたり、料理に対しての意識の高まりにつながってくると思います。
▼伊藤さんが近くの公園で取ってきた食材
もちろん文化も環境も違うので違い色々あるんですけど、ある意味ないと言えばないんですよね。結局は自分がやるだけのことなので。ただ、こっちでは自分が頭としてやっているからっていうのもあるんですけど、自分のペースで仕事できていますね。日本だと周りの目を気にしたり、色々気にしなきゃいけないことがいっぱいあったんですけど、今は気楽にやらせてもらえるっていうのは大きく違うところです。仕事に人生を捧げるっていう考えももちろん素晴らしいと思うんですけど、少なくとも自分にとって仕事は人生の一部であって全てではないので、今の働き方がとても合っていると思います。
世界一のレストランを持つデンマークの人々の食に対する意識の変化
noma(ノーマ)というレストランをご存知でしょうか?。2003年にコペンハーゲンで開業して以来、ミシュランの星や、「世界のベストレストラン50」において世界1位を5度獲得するなど華々しい称号を得て、世界に様々な影響を与えたレストランです。特に発酵食品や北欧産の自然の素材を活かした料理が特徴です。
公邸料理人として働いていた15年前の様子と比較して、nomaの発展を機に人々の意識の変化を感じると伊藤さんは話します。
-15年前と現在で、デンマークの食文化にはありましたか?
自分が最初にデンマーク来たときは全く違いました。お腹の中に入れば一緒という感覚の人が多かったように思います。外食も高くて行かないし、スーパーに並ぶ食材も豊富とは言えなかったですね。特に大根や白菜、魚など、日本の食材は探すのが大変でした。それに比べると今は他のヨーロッパの国と同じく、食材は手に入れやすくやりやすさを感じています。というのも、nomaが有名になってから、”私たちは世界一のレストランを保有している国”という意識もあるし、そこから派生したレストランも増えて、徐々に食への意識が高まってきたんじゃないかと思っています。
-デンマーク料理に学ぶところはありますか?
一般的な西洋料理の技術はもちろん、デコレーションや盛り付けは勉強になりますね。フレンチともまた違った独特でセンスのある盛り付けだなと思うんです。家具を例にとってみても、無駄のない曲線美が特徴の一つですけど、フランスの豪華絢爛な装飾とは違う美しさがありますよね。そういう違いは料理でも表れているなと感じます。
「正直寿司と天ぷらのクオリティは日本のクオリティではないなと思ってるんです。」Posh Jahは 現地の食材を活かした本格的な日本料理で、多くのリピーター客を持つ人気店ですが、料理のクオリティという点では落とし所を探る必要も出てくると伊藤さんは言います。スタッフの意識の違いや、店のオペレーションなど、その要因はさまざま。その環境の中でできる最大限の工夫をしながら日本料理の可能性を追求している姿が印象的でした。プライベートとのバランスを大切にし、自分が望む働き方を実現されているのは、職種関係なく憧れる生き方ですね。
この記事を通じて、読者の皆様が少しでも北欧での挑戦に興味を持ち、次のステップへの一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです!
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