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【料理人インタビューVol.1】「子供の成長を見届けられることが宝」—3児の父であり、コペンハーゲンの人気和食店の料理長が語る、デンマークの働きやすさと住みやすさ【伊藤慎也さん】

コペンハーゲンの人気日本食料理店、Posh Jahで料理長を務める伊藤慎也さんは3人の子を持つ父でもあります。伊藤さんがどのようにして海外での挑戦を決意し、異国の地で日本食を提供するための工夫と努力を重ねてきたのかを詳しく伺いました。また、日本とデンマークでの働き方の違いや、家族との生活についても語っていただき、海外での生活が自身や家族に与える影響についても触れています。

伊藤慎也さんプロフィール
日本の料亭で経験を積んだ後、公邸料理人としてデンマークに赴任。その後、フランスのレストランで2年半働き、銀座の懐石料理店に転職。パリ店のオープニングスタッフとして半年間パリに勤務した後、再び銀座に戻る。さらなる挑戦を求めて銀座の職を辞し、自ら海外の求人を探し、家族と共にスイスへ移住。デンマークに移住してきて今年で7年目。現在、デンマークの人気和食店「Posh Jah」で料理長を務めている。店内はカウンターを併設し、寿司や天ぷらをメインに提供している。



月の休みは15日。幸福度世界一の働き方って?

最近日本でも耳にするようになってきた「Hygge(ヒュッゲ)」という言葉。デンマーク語で「居心地がいい空間」や「楽しい時間」を意味し、デンマーク人の大切な価値観となっているんだそうです。例えば、コーヒーやアルコールを片手に仲間と語らい合う時間、暖かい昼下がりの公園でお昼寝を過ごす時間など、人それぞれ大切な人と過ごす居心地のいい時間のことを言います。
「幸福度ランキング」や「世界競争力ランキング」で常に上位にランクインすることで知られているデンマーク。労働時間の短縮や柔軟な働き方が推奨されている背景には、日常の中でヒュッゲを大切にする習慣を持つデンマーク人の性質によるものがあるのかもしれません。
とはいっても、飲食業界ではどうなんでしょうか??気になる休日について伺いました。

-仕事のお休みはどれぐらいありますか?
伊藤さん:デンマークでは月の労働時間が160時間と決まっていて、出勤の日は、30分の休憩と食事を含めて朝11時から夜11時までの12時間働くので、週3休みと週4休みが交互にある感じです。…週3ですからね。自分の子供の方が忙しいですからね(笑)あと、5週間のバケーション制度が定められているので、毎年3週間ほど日本に帰っています。日本の友人には仕事やめたのかって驚かれますけど(笑)日本ではあり得ないですからね。

-週3ですか(笑)休むことに対して理解もあるし、制度が整っているのですね。
そうですね。逆に休み取ってくれないと困るよっていうぐらいですね。働きすぎるとみんな心配してくれるというか。特にうちの会社は和食レストランで2店舗、その他含めると16店舗あるグループなので、調整できる範囲で人数をちゃんと確保しています。

-お休みの日はどのように過ごしていますか?
何もない日は、朝は自分が焼いたパンを子供達が勝手に食べてくれて、お昼はラーメンとかうどんを作って一緒に食べて、午後は近くの公園の花や野菜を摘みに行ったり、子供にデンマーク語を教えてもらったりしています。あとは車で地方に遊びに行ったり、飛行機に乗って周辺の国に行ったりします。この間はサッカー日本代表がドイツ遠征に来るということで、ドイツに行って楽しんできました。


「一緒にいる時間が長いと親子の関係性も変わってくる」子供との時間も割けなかった日本での生活を振り返って

日本では料亭や懐石料理のお店で働かれていた伊藤さん。現在はワークライフバランスを体現されていますが、日本での生活はどうだったのでしょうか。仕事とプライベートの様子を振り返っていただきました。

-日本で働かれていた時はどうでしたか?
ハードでしたね。銀座で働いている時に一人目の子供が生まれたんですが、忙しい店だったので子供との時間が取れず大変でした。朝7時から築地に仕入れに行って仕込んで、夜10時にラストオーダーなんですけど、そこから掃除を徹底的にやって、仕込みもして、帰るのは毎日2時3時。週1の休みはあったんですけど撮影が入ってきたりして実際休みがない週もありました。休みの日もヘトヘトじゃないですか。子供との時間を積極的にとりたい気持ちもありますし、厳しい日々でした。

-そんなハードな日々から一転、海外に環境を移して最初に感じたことは?
銀座のお店を辞めてスイスに来た時に、子供と過ごせる時間が増えて、周りに自然がいっぱいあったので良かったですね。日本ではお父さんと子供が疎遠になるって結構あると思うんですけど、こっちでは大人になっても関係性が良かったりするんですよ。一つの理由として、家族と一緒に過ごしている時間が長いからだと思っていて。どの職業でもこれ以上は働いてはいけないという決まりがあるので、必然的に家族との時間が増えてくるんです。親子の関係性にプラスの影響を与えてくれるワークライフバランスの充実という点でとても魅力的に感じていますね。

-日本の有名店で忙しく働いていたからこそ、そのギャップが浮き彫りになったのかもしれないですね。
そうですね。やっぱり家族との時間が持てなかったりして人生を振り返った時に、もっとああしとけば良かった、自由な時間あったらこうしたかったな、ってなってくると思うんですよね。特に子供が成長していくのは一瞬で、その貴重な時間に子供と一緒に過ごせるっていうのは、自分の人生の中で宝みたいなものだと思っているので、それができるこの国は自分にとっては働きやすいし、人生においてよりエンジョイできる国だなと思います。

子供のスキルを伸ばす。広い視野を培うデンマークでの子育て

デンマークでは出産費、医療費、小学校から大学までの教育費が基本的に無料。10歳以下の子どもを持つ母親の約8割がフルタイムで働いていると言われており、子供向け施設の拡充、経済面の補助など国による子育て支援が充実しています。学校教育では、非競走的な教育が根付き、学歴社会とは異なる、“個”を尊重した「自分らしい生き方」が優先されているのも特徴的です。
現在11歳、9歳、6歳の3人の子供を持つ伊藤さん。デンマークでの子育てを親としてどう感じているのでしょうか。

-子供を育てる環境としてはどうですか?
みなさん子持ち家庭に協力的で、地下鉄乗る時も席を譲ってくれたり、ベビーカーひいていたら階段上がるのを手伝ってくれたり、ヨーロッパ全体で文化として息づいているのを感じます。なんならベビーカーが一番偉いんじゃないかって感じることも(笑)子育てしていて肩身狭い思いをすることは一切なくて、うちみたいなカジュアルなレストランでも子供はウェルカムですし、子供がはしゃいでいてもみんな微笑ましく見ている感じですね。

-国を跨いで子育てをされてきましたが、お子さんは環境の変化にどのように順応されていったのでしょうか?
子供って親が思っている以上に適応する力があると感じます。住む場所が変わっても知らぬ間に友達できてたりとか、どちらかと言うと内気な子なんですけどみんな楽しくやってますね。現地校に加えて土曜日に日本語学校に通っているので、現地の文化もわかっているけど、周りとの協調性も大事にするような日本人的振る舞いもあって、そこのバランスが取れているのかなと今は見ていて思いますね。

-デンマークで子供を育てていくにあたって、どのような期待をしていますか?
言語という面ではデンマーク語に加えて、学校で第二、第三言語として学ぶ英語、ドイツ語またはフランス語を学ぶので、大人になった時にそれだけで大きな武器を持つことになると思うんです。こっちの子供達を見ていて気づくのは、政治の話も自分の意見を持って話すことができているし、グローバルな視点を持っているなということ。将来世界に出ていくってなった時に、自分の強みになるものを持って成長できるのがデンマークかなと思っています。

デンマーク発祥の「森のようちえん」自然の中で主体的に学ぶことを目的としている



子育てをする中での海外移住には多くの困難が伴いますが、デンマークは国全体で子育てしやすい環境が整っています。伊藤さんの経験からも、長時間労働に頼らない働き方で自分の時間をしっかりと確保し、その結果仕事にも良い影響が及んでいることがわかりますね。

この記事を通じて、読者の皆様が少しでも北欧での挑戦に興味を持ち、次のステップへの一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです!

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