1人1台端末かコンピュータ室のパソコンか
同僚の教師から「自分の子供が高校に合格して、学校から1人1台端末購入の案内が来たんだけど、この機種大丈夫なの?。」と質問されることがありました。
また、ネット上でも1人1台端末について、「素人が選ぶからポンコツな端末を掴まされる。」とか、「Sなんとか Goなんて推奨する奴はクビにしろ。」とか、コンピュータ関係に造詣が深いと思われる方々からの辛辣な書き込みが見られます。
一方で、学校にはコンピュータ室があり、パソコンが整備されています。
Windows端末についてですが、1人1台端末の端末選定の背景や実際の運用をまとめてみます。
文部科学省の最低スペック基準
1人1台端末のスペックについては、文部科学省が通知を出しています。
最新のものだと令和6年1月30日に出ています。
(令和6年1月30日)GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータ最低スペック基準の一部訂正について(事務連絡)(PDF:1,429KB)
30ページからが最低スペック基準になります。
「はじめに」にこのような文言があります。
つまり、1人1台端末はブラウザを通してクラウドにアクセスすることが基本です。
ソフトウェアをインストールしたり、ローカルで環境構築して作業したりすることは推奨していません。
でも、Webブラウジングは結構マシンパワーを使います。
10年くらい前、他校でエイサーのICONIA TABを導入したのを見て、「こんなコンパクトな端末でWindowsが動くのか」と感動し、自分でも購入したことがありました。
https://www2.acer.co.jp/support/catalog/1104/ICONIATAB_W500_0407.pdf
でも、動作も端末の重量も重かったです。
まもなく新製品が出ましたが、どこかのレビュー記事に
「旧製品は、タブレットならWebブラウジングぐらいしかしないから性能が低いCPUで安価に作ればいいという感じだったが、実はCPUパワーを使うのはWebブラウジングだったので、悪評を払しょくするために新製品では高性能なCPUを採用した」
というような趣旨のことが書かれていたのを見て、苦笑した記憶があります。
1人1台端末を現場で使ってみてどうでしょうか。
本校での運用
購入について
本県では特別支援学校の高等部の1人1台端末は保護者が購入することになっています。
購入時は保護者が全額立て替えます(後で就学奨励費のICT機器購入補助が収入に関係なく一定額まで戻ってきます)。
私の勤務している学校は肢体不自由の特別支援学校なので、高等学校に準ずる課程と、知的障がいを併せ持つ課程があります。
準ずる課程はWindows端末、重複課程はiPadの購入をお願いしています。
県教委の共同購入では、Windows端末はマイクロソフト社のSurface Goか、日本のメーカーのタブレットが選べます。
学校によっては推奨機種を1種類に限定していますが、本校では保護者の金銭面の負担を考慮して、2種類から選べるようにしています。
授業で1人1台端末を使ってみて
本校では、生徒が使う分にはどちらの端末でもスペック上の問題は生じていません。
ただ、日本のメーカーのタブレットは、生徒によっては重くて自分で本体を開くことができません。
まあ、これは生徒固有の問題で、スペックの問題ではないですが。
あと、私が私物のSurface Go 3と銀行の通帳を一緒にカバンにしまったら、通帳の磁気データが消えてしまいATMで使えなくなってしまった、ということがありました(うちの県では特別支援学校の指導者用端末はiPadで、学校のSurface Goが無かったので、自分で買いました)。
また、Surface Go 3で授業をしていて、
・Meetで全画面共有
・Wordでプリントを提示
・Chromeで指導者用デジタル教科書を開く
・Miracastでプロジェクターと接続
を同時に行っていると処理がもたつくため、今は指導者用端末はノートパソコンを使うようにしています。
1人1台端末かコンピュータ室のパソコンか
私は準ずる課程の情報Ⅰの授業を担当しています。
生徒には「1人1台端末を使ってもいいし、コンピュータ室のデスクトップパソコンを使ってもいい」と伝えています。
演習ではなるべくブラウザベースで使えるものを選び、ソフトを使ったのはdominoぐらいです。
昨年度(令和4年度)は、全員がコンピュータ室のデスクトップパソコンを使っていました。
理由を聞くと、
この年は、県教委で共同購入した端末が届いたのが夏季休業中で、2学期が始まってから保護者に設定していただき、全員が学校の授業で使えるようになったのは10月末でした。
また、年度当初、コンピュータ室にGIGAスクールのWi-Fi環境がありませんでした。
それまで半年間、コンピュータ室のパソコンを授業で使っていたので、今更変えなくてもいいと思ったのかもしれません。
逆に、今年度(令和5年度)は全員が1人1台端末を使っていました。
理由を聞くと、
最後の理由は凍り付きましたが・・・。
ちなみに今年度は、共同購入した端末が6月末に届き、2学期開始時にはほぼ全員が授業で使える状態になっていました。
生徒一人一人が良いと思うほうを選べればいいかなと思います。
ただ、来年度情報Ⅱが始まると、1人1台端末では厳しくなる時もあるのかなと思っています。
コンピュータ室の今後
文部科学省の考え
とは言うものの、
「1人1台端末があるならコンピュータ室いらなくね?。」
「Windows10のサポートが終わったら更新パソコンを買ってくれないのでは?。」
という声もあり、実際にコンピュータ室が無くなったという学校も聞いたことがあります。
でも、文部科学省は令和4年12月に通知を出していて、コンピュータ教室の充実や更新の必要性の有無等について、考え方を整理しています。
(令和4年12月19日)(事務連絡)GIGA スクール構想に基づく1人1台端末環境下での コンピュータ教室の在り方について (PDF:558KB)
つまり、無くすなということです。
そして、高性能な端末を整備したり、自由度の高い空間にしたりしなさいということです。
文科省としてはコンピュータ室のパソコンは更新してほしいんですね。
高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)
「情報Ⅱの開設」と「デジタルスペース(つまりコンピュータ室)を設置して探求的な学び、対話的・協働的な学びの充実を図ること」を条件に、1校当たり1,000万円まで補助するという事業です。
以前記事を書きました。
一般社団法人 デジタル人材共創連盟(デジ連)のプラン集を見ると、3DプリンタやIoT機器など、コンピュータ室を充実させることができそうです。
モジュール5では
・高性能パソコンを整備すること
モジュール11では
・1人1台端末を27インチモニタ、フルピッチキーボード、マウスに接続して使う
というのも想定しているようです。
結果は4月にわかりますが、採用されれば生徒が使える端末に選択肢がさらに増えそうです。
まとめ
1人1台端末はブラウザでの利用が前提になっているので、本校では今のところは1人1台端末で何とかなっています。
でも、情報Ⅱが始まると厳しい時が出て来るかなと思います。
結論としては、生徒が状況に応じて1人1台端末とパソコンを使い分けられる環境があるといいと思います。