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「自己紹介しか話せない」やる気だけで9か月アルバイトをした話 in パリ

私は2023年9月から2024年6月まで、フランスのパリにある国立東洋言語文化大学へ交換留学していました。

日本の大学ではフランス語を第二外国語で楽しく学んでいた程度。留学当初は簡単な挨拶と自己紹介くらいしか話せなかった私が、これまでの留学生活の振りかえって様々な学びを書いていこうと思います。

建前はもろもろ、本音はなんとなく

そんな中途半端な気持ちで留学した私の留学生活振り返り第1弾は、アルバイトについてです。

働くことが好き、だからパリでもアルバイトを探した

まず最初に、私はかなりのバ畜(過剰にアルバイトする人)です。日本にいるときからかなりの時間をアルバイトに費やしてきました。お金が欲しいというよりは、働くこと自体が楽しく感じ、家でダラダラするくらいなら働きたいと思っていました。

フランスは学生ビザだと週に20時間まで働くことができます。
留学が決まった際には、お金ももらえてフランス語も学べる、一石二鳥じゃん!と思い、アルバイトをすることを決めていました。

留学当初の私の語学力では簡単な挨拶と自己紹介くらいしかできず、日常生活も厳しいくらい。

そんなことであきらめきれなかったのが私です。

留学が始まって1か月がたたないうちに、パリの求人情報がのっているサイトを毎日チェック、語学力は問わないという条件の日本食屋さんを探しました。

パリには日本食のレストランが多く、働いている人が日本人だとフランス語を話せない私でも働くことができるのではないか、と思ったからです。

そしてパリに到着して約1か月後、日本食カフェの求人を見つけました。
語学力は問わない、金曜日に出勤できる人、お昼の勤務など、私の探していた条件にピッタリ。迷うことなくメールを送りました。

お店側からの返信も早く、応募のメールを送った2日後には面接、その場で採用していただけることが決定しました。

環境に恵まれたアルバイト先

私が働くことになった日本食カフェは、ひとりの日本人男性(以下、店長)が経営していました。

お昼の営業時間は12:00~14:00の2時間、同じ時間に働くのはキッチンを担当する店長とホールを担当するアルバイトの計2名だけという小さなカフェです。私以外のアルバイトもみんな日本人ということで安心しました。

初日はホールを担当するアルバイトの先輩に教えてもらいながら、接客で使うフランス語や食事の提供の仕方、スーパーマーケットへの買い出しについて丁寧に教えていただきました。

そして2回目の出勤からはひとりでホールを担当することに。
最初はフランス語を話すことが怖く、ミスを犯さないようにするために注文をとる際には指でさして確認、空いた時間はメニュー表に載っているフランス語を勉強するのに必死でした。

しかし、回数を重ねるごとに仕事にも慣れていき、お客さんからの質問には自分で答えることができるようになり、買い出し先のスーパーの店員さんとも言葉を交わす仲になりました。

ここまで書くとそんなに簡単な仕事だったのかと思いますが、思い返してみると確かに、つらい思いをしたこともありました。

フランス語を話せないと知られるとすぐに英語で話しかけられたり、ほかの人に代わってと言われたり。お客さんからの質問に答えられず忙しい時間に店長に迷惑をかけたり……。

しかし店長が時間がある際に単語やフレーズを教えてくれたおかげで、あきらめずに続けることができ、より実践的にフランス語を学習できました。

人数が少ないという環境と、教えることが好きな店長に恵まれ、本当に自分にとってはもったいないくらい贅沢なアルバイト先だったと思います。

アルバイトで確実に伸びた“話す力”

留学が終わってから、絶対にアルバイトのおかげだと思える成果があります。
交換留学先のフランス語のOral(スピーキング)のテストで前期は20点中20点、後期は20点中19点をとったことです。日本にいるときは第二外国語としてゆるく勉強していた私にとって、この点数はとてもうれしいものでした。

テストの内容自体難しくなかったこともあるかもしれませんが、アルバイト先で知らない人と話すことに慣れ、覚えたフレーズだけでなくその場で文章を組み立てながら話す力がついたおかげでもあります。

私がパリでアルバイトできた理由

「私はフランス語が話せないのになぜ採用してくれたんですか?」と聞いたことがありました。
実際に留学先の大学には、フランス語学科などで専門的に学んでいる日本人が多く、正直お店としてはフランス語を話せる人を雇いたいというのが普通だと思ったからです。

話を聞いてみると、実はアルバイトの募集をかけた際に1番に応募したのが私だったそうです。

「話せるかどうかは関係ない、行動力がよかったんだよ」との言葉をもらい、自分のあの時の行動は間違っていなかったんだと確信することができました。

その言葉をもらうまでは何かを教えてもらうたびに、私なんかが働いてて申し訳ない、もっと役に立てたらと思うことも多々ありました。

しかし、その考えは今までの自分が「話せない」ということに甘えていたからだと気づかされました。自分のフランス語がうまく伝わらないときに「私は話せないから」と、どこか自分を擁護するような感覚を持っていたのです。

「話せないからとあきらめるのではなく、必要としていなかったらお店側から不採用になるはずだ」と強気で応募したはずなのに、なぜか自信を無くしていた自分にとって、もう一度喝を入れなおすようなお話でした。

フランスならではの働き方

フランスで働いてみて感じた文化の違いが2つあります。

1つ目は、おもてなしとおせっかいは紙一重ということ。

私は日本にいる頃、ファストフード店でアルバイトをしていました。そこではファストフード店でありながらもおもてなしの精神を大事にしており、短時間の接客の中でもお客様に気持ちよく過ごしてもらえるような心がけを学びました。

しかしフランスでは日本ほど丁寧なおもてなしはありません。サービスは必要最低限。
お水がなくなっていても積極的に注ぐのではなく、お客さんが必要な時に呼んでくれる。もちろん気づいたら行動するのが優しさになることもありますが、大抵は必要のないおせっかいにもなってしまいます。

慣れるまでは大変でしたが、慣れてからは楽でした。
その代わりに、お客さんに呼ばれたときは笑顔で対応し、要望に応えることができるように努めました。

一見不親切にも見えるフランスの接客ですが、不思議と雑だとは思いません。店員もお客さんも気持ちよくお店で過ごしているという印象を受けました。

2つ目は、チップについてです。

フランスではチップは義務ではありませんが、ときどきもらうことがあります。私のアルバイト先でも、たまに1ユーロから2ユーロほどお客様から頂くことがあり、自分のお小遣いになりました。

最初は自分がチップをもらうに値するような接客ができていないと思い、もらえないなと思うことも多かったのですが、店長に「えじまさんの接客がよかったんだよ」と言っていただき、ありがたくもらうことにしました。

チップの使い道はというと、帰りにクロワッサンを買ったり、スーパーでお菓子を買ったりなど、自分のために日常のプチ贅沢を楽しんでいました。

しかし次第に、自分もお店でチップをおくようになりました。

最初はお金がもったいない、とまで思っていたチップの文化ですが、お金を渡すという行為には、サービスへの感謝も含まれているのだと気づいたのです。

以前アルバイト先の先輩と食事をしたときに、先輩が帰り際にチップをおいていました。

「取り皿をとってもらったから」
「少し汚れていたスプーンを交換してもらったから」

理由は様々ですが、自分から減るものというよりも相手に増えるもの、感謝を送る文化だと考えると、チップという文化も本当に素敵だなと思います。日本だとお客様アンケートや口コミでお礼を伝えるような感覚に近いのだと思います。

日本に帰ってからはチップの文化はありませんが、その代わりに言葉でお礼を伝えることのできる人になりたいですね。

やっぱり私は働くことが好き

フランス語が話せなかった私がパリでアルバイトをできたのは、店長やお客さん、スーパーの店員さんなどたくさんの人に恵まれた、助けられたからです。

こんな私がパリでアルバイトをしていいのかと思うこともありましたが、それは自分がフランス語を話せるという自信がないからであり、自信をつけるための努力をしていないからだと気づきました。

もし、この記事を読んでくださった方がフランスに留学に行く場合、可能ならばアルバイトをすることを強く強くお勧めします。
自分の想像以上にたくさんの人との出会いがあり、店員とお客さんの関係はその場限りだとしても、その一瞬の出会いすらも財産。得るものがあると身をもって感じたからです。

異国の地で働くという経験はハードルが高いと感じがちですが、私が働けたのできっと私以外の人はもっと大丈夫だと思います。

やっぱり私は働くことが好き。フランスで働いた経験をしたことで日本の丁寧(すぎる)おもてなしの魅力を再確認した私は、これからもスマイルを0円で売っていきます。






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