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参加者から「感動!」の声も上がった養生論とペットボトル温灸 ゲスト:鍼灸師・若林理砂さん
2月5日(水)、株式会社エイト日本技術開発の東京事業所にて、鍼灸師の若林理砂さんをゲストに招き、朝活イベント「冬を元気に乗り切るためのセルフケア~養生のための食とペットボトル温灸」が開催しました。
企画・コーディネートは、川内イオさんが担当。2014年より、「世界を明るく照らす稀な人」を追う稀人(まれびと)ハンターと名乗り、記事のライティング、イベント企画、講演、催事などを行っています。
以下、この朝活イベントのレポートをご覧ください。
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▼養生の基本は「寝る、食う、動く」
若林さんは高校卒業後に鍼灸師免許を取得し、鍼灸院での勤務を経て2004年にアシル治療室を開院した。これまで20冊を超える書籍を出版し、カリスマ鍼灸師とも呼ばれる若林さんは常に予約でいっぱいで、新規の患者は受け付けていないという。それでも「診てほしい」という依頼が引きも切らないことから、書籍や講演で「養生」や「ペットボトル温灸」を説くようになった。
「セルフケアをして、鍼灸師に頼らなきゃいけないという状態をできる限り減らしたいんです。リアルに調子が悪くなる手前のところで、なんとかしたいんですよね。人生のゴールがいつ訪れるかわからないわけですよ。もしかしたら明日死ぬかもしれないのに、毎週、毎週、1時間も治療に通うの、もったいなくないですか?」
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若林さんによると、セルフケアの基本は、養生。養生できると、自律神経を整えることができる。養生に欠かせないのは、古代中国の思想に出てくる「飲食起居」で、若林さんは「寝る、食う、動く」と訳す。
まずは、「睡眠」について。国内外の複数の調査により、健康に過ごすためには7時間の睡眠が推奨されている。7時間を下回り、5時間、6時間程度になると睡眠不足状態になり、判断力が低下し、自律神経も乱れる。しっかり睡眠をとるために、若林さんは「早起き」を勧める。
「1日のリズムを整える場合は、首根っこを掴むような形で朝を掴んでください。どんな時間に寝ても、朝早く起きる。そうすると、夜になったら早く眠くなりますから」
睡眠は、季節によっても変化が起きる。春と夏が陽気の季節、秋と冬は陰気の季節。陽は外に向かっての爆発力、陰は内側に向かっての収縮力を表す。秋冬は、体のなかに溜め込む時期にあたり、特に冬は睡眠が長くなる。冬に睡眠時間が短くなると身体への負担が大きくなるそうだ。年末年始や年度末を含み、自律神経が乱れがちな冬にしっかりと眠るために、ペットボトル温灸で身体に熱を加える。これを「補(ほ)」と表す。その方法は後述する。
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続いて、「食事」について。若林さんが提唱するのは、「プレート法」。オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマさんが健康的な食生活を促進する栄養ガイドラインとして発表した「マイ・プレート」をベースにしている。20センチの円形プレート(お皿)の半分に野菜、4分の1に炭水化物、4分の1にたんぱく質を含む食材を載せる。「この割合で食べれば、大体なんとかなるよっていう方法です」。
中国の古典には「季節外れのものは身体に悪い」と書かれているそうで、季節の旬のものを食べることを意識したほうがいいそうだ。冬は体温を維持するために夏より消費カロリーが増え、さらに乾燥しがちなので、粘膜を守り、潤いを保つために油脂を多めに摂る。冬場の調理法は揚げる、煮る、炒める、茹でる、蒸す。生野菜は身体の負担になるので、冬は避けたほうがいいという。
▼ペットボトル温灸のポイント5つ
次に、ペットボトル温灸の話に。使用するのはオレンジ色のキャップがついたホット専用のものか、ホットとコールド両用のもの。大きさに関係なく、水を3分の1、沸騰直後のお湯を3分の2の割合で入れると、水温70度から80度程度になる。それがだいたいお灸と同じ温度だそう。
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ペットボトル温灸のメリットは、お灸と違って火を使わず煙が出ないことと、ピンポイントでツボ(経穴)の位置がわからない素人でも、だいたいの位置があっていれば効果を得られること。使い方はいたってシンプル。ツボに当てて、離す。それだけだ。ポイントは、5つ。
① 肌に当てるのは長くても3~5秒で、当てっぱなしにしないことと
② 衣服の上からではなく肌に直接当てること。
③ 何度も当てるとお風呂に入りすぎたような症状が出るので、当てる回数は3、4回。
④ バランスが崩れるので、片方ではなく両方に当てること。
⑤ 狭い範囲の時はペットボトルの底の部分を当て、広い範囲の場合はボディ部分を当てる。
今回の朝活では、最初に手の甲の親指と人差し指の付け根にある「合谷(ごうこく)」というツボが紹介された。若林さんが参加者の手を取り、さまざまな不調の改善に効果があるというこのツボをギュッと押す。すると、あちこちから「イタタタッ!」という悲鳴があがった。そこにペットボトルを当てる、離すを繰り返す。
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ほかに、肩や首回りが楽になる「手三里(てさんり)」、肩こりに効き、目が覚める効果もある「肩井(けんせい)」、身体の気を増やす足ツボの「湧泉」、同じく足ツボで足のむくみを取ったり、よく眠れるようになるという「失眠」の場所を教えてもらった。「手三里」や「肩井」にペットボトル温灸を当てた参加者からは、「身体がポカポカする!」という感想が聞こえてきた。
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▼身体の可動域をチェック
最後に、「運動」について。まず、「加齢によりさまざまな機能が低下して、運動能動力が失われていく状態」を表す「フレイル」の予備軍になっていないか、チェックした。椅子に座り、胸の前で両手をクロスして、片足で立ち上がる。この簡易テストでふらつくと、予備軍にカウントされる。参加者の多くがスッと立ち上がることができず、若林さんは「フレイルって70代、80代がなるもので、今の時点でふらついちゃまずいよ」と声をかける。
次に、腕をまっすぐに伸ばし、肘を曲げずに耳の横を通して後ろまで回せるかチェック。これができないと肩関節の正常な動きが失われている状態で、五十肩に近づいているそうだ。若林さんは当たり前のようにぐるぐる回しているが、参加者のなかには肘が曲がってしまったり、耳の横まで腕が上がらなかったり、うまくできない人もいた。
「この動きに柔軟性は必要ありません。もともとできたはずの動きが失われているということです。一か所動かないということは、これと類似していることが身体のいろいろなところで起こっているということなんですよ」という若林さんの言葉が会場に響く。
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ほかにもいくつかの動作をして、参加者の身体の可動域をチェック。見た目では簡単な動きなのに、あちこちから「できない!」「わからない!」という声が上がる。参加者の動きを見て回りながらアドバイスを送っていた若林さんは、最後にこう結んだ。
「人間の身体は食べる、動く、休ませるという3点セットでできています。養生を主体に考えて、ペットボトル温灸でちょっとした不調を改善してください」
▼参加者の声
Aさん
もともと、お灸はよくするので(せんねん灸)なじみはありましたがペットボトル温灸は、気軽にできる、煙もでない、布団に持って入れる、という手軽さがいいなと思いました。最近のホットのペットボトルは電子レンジにも対応しているので水があればできる!というのも魅力、旅行先のホテルなどでもできそうで、いろいろ活用していきたいです。
Bさん
ためになるお話を聞けるだけでなく、同時に身体も目一杯動かせて、朝にピッタリなイベントだったと思います。(お話と運動のバランスがちょうどよかったです。)ペットボトルのぬくもりが気持ちよく、家でいろんな部分に当ててみたいと思いました。肩や背中がガチガチなので、簡単だけど難しい運動?は続けたいです。
Cさん
ペットボトル温灸に感動しました!若林先生に教えていただいた通りにやってみたところすぐに肩甲骨周りや目の周りがすっきりした感じになり、え、これだけで?こんなに効果があるの?と驚きました。最後の体を動かすパートで、資料にあった「動かなくなったら、ただの物」という言葉にドキッとしました。ちょっとした動作でしたが、全然動かせないことにショックでした。先日の山田さんの朝活も含めて動くことに意識を持ち、習慣化するようにしたいです。
Dさん
本日の若林さんのお話も、とっても参考になりました。質の良い睡眠をとることが、心と身体の健康につながっていくことを知りました。寝る前には、経穴を刺激して良い睡眠がとれるように気を付けていきたいです。身近なもので、簡単に健康促進が図れるので、休みの日には実践したいです。先週と今週と2回朝活に参加させていただきました。長時間労働で時間が取れない中、手軽にできる健康法を知ることができてとても良かったです。素敵な企画をありがとうございました<(_ _*)>
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企画・コーディネート・記事執筆:川内イオ(「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター・川内イオのホームページ)