姉に電話をかける
朝から降っていた雨は昼前にあがり
いやに蒸した午後
首筋の汗を拭きながら
遠くに暗く立ち込める雲を見る
ずっと南に嫁いでいった
姉に大事はなかろうか
おもむろに電話をかけてみる
『えいた?そっちは大丈夫?』
俺がいうより先に
覇気のある姉の声が訊く
俺がどんなにジジイになろうが
姉は俺が心配らしい
『今度実家に行く時も
ひよこ饅頭買っていくわね』
思わず『うん』といって電話を切ったけど
ねぇちゃん
今どきひよこ饅頭はこっちでも
買えるって知らないのかな
久しぶりに少しだけ
声を出して笑った