作品紹介 #017~#019
こちらでは、
能「国栖」「土蜘」「船弁慶」を描いた作品を紹介していきます。
更に詳しく解説が知りたい方は、ぜひHPのほうでご覧になってみて下さい!(ページ下部にLINKあります)
Kuzu Zao Gongen/Noh Art #017
能「国栖」より
吉野山と蔵王権現
舞台は奈良県の国栖の里
蔵王権現は修験道の本尊であり、釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩の三尊の合体した仏だとも言われています
奈良県吉野町の金峯山寺本堂(蔵王堂)には、三体の蔵王権現像が本尊として祀られています
この能は天智天皇が崩御した後に大海人皇子と大友皇子が皇位継承を巡って争った、壬申の乱を基になっています
能面は「不動」という面を描きました
この不動という面、まさしく不動明王を現わした面で、悪魔を降伏させる威力をもつと言われます
右目が天を、左目が地を向いてるので「|天地眼《てんちげん》」と呼ばれ、天と地を一度に見渡せるのだそうです
「王をかくすや。吉野山則ち姿を顕し給ひて天を指す手は胎蔵、
地を又さすは金剛」
(おうをかくすやよしのやま すなわちすがたをあらわしたまひて てんをさすてはたいぞう ちをさすはこんごう)
蔵王権現は天皇を吉野に隠し奉ったのである。
その姿を現わし天を指す手は胎蔵界を、地を指す手は金剛界を指す
吉野山の守護神・蔵王権現が出現する場面
Tsuchigumo/Noh Art #018
能「土蜘」より
源頼光の従臣らに蜘蛛の糸を投げかける場面
能の中で登場する源頼光は平安時代中期の清和源氏の棟梁で、鬼退治で有名です。
彼には頼光四天王と呼ばれる4人の優秀な従臣がいます。
この能は、その従臣らと一緒に妖怪土蜘蛛を退治した話を基に作られています。皆さんも妖怪の「土蜘蛛」はご存じではないでしょうか?
見た目は巨大な蜘蛛の化け物の妖怪です
実際の能舞台でも土蜘蛛役の演者の手から蜘蛛の糸が飛び交い、迫力があり大変面白い能です
「蜘蛛乃精霊 千筋の糸を繰りためて 投げかけ投げかけ白糸の 手足にまとハり五体をつづめて 倒れ臥してぞ見えたりける」
(くものせいれいちすじのいとをくりためて。なげかけなげかけしらいとの。てあしにまとはりごたいをつづめて。たおれふしてぞみえたりける)
”土蜘蛛の精霊は千筋(ちすじ)の糸を引き出しては投げ、幾度も掛けるので、白糸は独武者の手足にまといつき、五体を締め付けられて倒れ伏したように見えた”
土蜘蛛の精霊が千筋(ちすじ)の糸を次から次へと引き出して、
頼光の従臣らに投げかける場面より
Hunabenkei TairanoTomomori/
Noh Art #019
能「船弁慶」より平知盛
知盛が自分が源氏に沈められたのを怨み、義経も同じ目に合わせようと襲い掛かる場面
この演目は、『平家物語』や『吾妻鏡』を基にして作られた作品です
源義経、武蔵坊弁慶、静御前、平知盛と、比較的誰もが知っている歴史上の人物が登場する人気演目の一つです
この曲の前後のシテは、前半は静御前、後半は平知盛の怨霊という全く異なった役柄となっているので、
前半では静御前の美しい舞い姿が、
後半では知盛が長刀を振るいながら勇ましく舞う姿が見られる変化に富んだ能です。
源義経が平氏を討伐したのち、頼朝に疑われて西国に落ちる場面から話が始まります
「抑(そもそも)是は桓武天皇九代の後胤、平の知盛幽霊なり あら珍しやいかに義経」
(そもそもこれはかんむてんのうきゅうだいのこういん たいらのとももりのいうれいなり あらめずらしや いかによしつね)
平知盛が自分が源氏に沈められたのを怨み、義経も同じ目に合わせようと襲い掛かる場面
曲中では、狂言方も義経達の乗っている船の船頭を演じます。
舞台の上にあるのは簡素な作りの船一つのみですが、まるで義経の船が本当に荒波に飲まれるかのような緊迫感が伝わってくる演出が見られます
ここまで御覧いただきありがとうございました。
下のリンク先の作品紹介ページにて、
演目の詳しい内容や、登場人物、使用している面や能装束、縁のある史跡等について解説しています。宜しければぜひご覧下さい。
「Mizuraho」… https://mizuraho.eisui.space/
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