プラネタリウム
壮大な星空を操るのって、どんななんだろう。
ボタンひとつで星座を結んで映したりして。
この世の奇跡も、他人事みたいな遠い予報も、全部この手の自由。
それって、どんな気持ちなんだろう。
願ったつもりはないけれど、知りたい気持ちもなくはない。
優しい照明を落として、劇は幕を開ける。
私の命がどんなに挑んでも及ばない世界。
今だけは目の前に広がる、美しい景色。
されど、知れば知るほど恐ろしい世界。
そして、それらも全部ひっくるめて美しい世界。
そんな巨大な恐ろしさを隠すように、癒しの音色を流す。
そうして、神秘の物語を優しい声でなぞる。
すべてを優しさで覆いつくしてしまおう。
こっちの宙は、この手の自由なのだから。
ひとりでもいい、誰かと一緒でもいい。
この部屋でだけ手に入れられる星空の操縦権を振りかざして、ただ美を愛する。
ねえ、それってどんな気持ちになるんだろう。
そうだ、そうして史実に飽きたら、叡智を背景に虚構を魅せよう。
知らないことだらけの真実の星空に、知っている気持ちの幻影を乗せよう。
そう、この部屋では、すべてが思い通り。
どうしたってちっぽけな、だけど私にとっては心のすべてを覆いつくす、私だけの物語も、上映できるのだ。
そうして物語にしよう。
あとのことは知らない。
ただ、どうせ暗い部屋を求めてしまうのなら、一度はそこに辿り着いたっていいと思うのだ。
どんななんだろう。
どんな気持ちなんだろう。
手に入るはずなどない一番大きなものを、自由に操るなんてことは。
そして、自分が観るときには、いろいろ考えてたまには眠る。
それだけで私は、きっと。
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