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翻訳を仕事とすること【弱小翻訳者のつぶやき】

英日翻訳を仕事として始めてから21年になります。

翻訳という仕事はとても誤解されているとつくづく思います。

在宅で翻訳業をしています、というと反応が主に二通りに分かれます。

すごーい!かっこいいーー!!優雅ですねー!さぞかし儲かるんでしょう??

という過剰評価な反応と

英語できるならこれくらい簡単に訳せるでしょ、ぱぱっと訳してくれたらいいから、

という過小評価な反応。

そして、多少英語に心得のある人によくあるのが

「私は英語ができるから、翻訳もできる」

という誤解。

どんな職業もやってみないとわからない苦労や誤解がつきまとうものですが、翻訳業ほど大きく誤解されている職業もないように思います・・・。


21年間やってみて私が到達した、翻訳業の正体とは。

・TOEIC900点を超えていようが、英検1級を取っていようが、翻訳はできない。

・英語と日本語とその分野のプロに匹敵する専門知識、この3つのスキルを常に磨いていないと仕事なんてもらえない。

・そんなスキルを磨くためにはかなり自己投資しないといけない。

・なのに、お金と時間と体力をかけてスキルを磨き続けても、現在、翻訳業は驚くほど稼げない。


最近、SNSなどで話題になっていたのですが、

うちの翻訳講座を受講すれば、中学生レベルの英語力でも、あっという間に稼げるレベルになって、子育ての合間のスキマ時間にちょちょっと作業をするだけで月○十万円、ちょっと頑張れば年収1000万円も夢ではない!

という翻訳者養成講座があるそうで。

頭から「嘘だ」と否定することもできないのでなんなのですが、私の経験からいいますと、

そんなうまい話があるんなら私はこんなに苦労していない!

と思います・・・ 

百歩譲って私が翻訳者適性が皆無で要領ゼロで稼げないのは自己責任、だとしても、私なんかよりもはるかに大活躍していらっしゃる大御所の翻訳者さん方がそろってムリ!とおっしゃっているので、おそらく、私のこの感覚も間違っているとは思いません。

思い返せば私が在宅翻訳を始めた20年ほど前、バブル後の不況が悪化の一途をたどっていたり米国の同時多発テロ事件があったりして先行きに不安が広がっていた時代、在宅ワーク詐欺がはやっておりました。ある程度まとまった額のお金を払って申し込むと在宅ワーク用キットが送られてきて、すぐに仕事を始められます、と謳っていながら、在宅ワーク用キットが届くだけで仕事の依頼はさっぱり来ない・・・という形式の詐欺でした。

さすがに明らかな詐欺行為であったことと、お金を稼ぐための仕事を始めるのにお金を払うなんておかしい、という一般常識が働いて、この類いの詐欺は最近聞かなくなりました(知らないだけでまだあるのかな?)。

でもあれから20年・・・今度は新型コロナ不況のせいで、より手の込み入った詐欺まがいなあれこれが横行しているようで、心が痛みます。

なので、稼ぎが非常に少ない弱小翻訳者ではありますが、こんな私のこれまでの来し方を振り返ることで、みんながみんなすごい稼げるわけではないんだよ、ということと、でも翻訳者ってもうちょっと高い評価を受けてもいいんじゃないの?という二方向から、翻訳者の実像に迫ってみたいと思います。

(次がいつになるかわからないけど続く)


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