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女性が毎月経験する『アレ』の話〜科学的にどこまで解明されているの?

女性ならば誰でも1ヶ月に一回来る『アレ』。早い子は小学生高学年くらいから始まって、50代、60代になるまで続きます。『アレ』が来る前はイライラしたり、疲れやすかったりするし、来たら来たで腰が痛かったり、お腹が痛くなったり...女性はなんで毎月毎月こんな苦しい思いをしないといけないんでしょうね?そう、『アレ』とは「月経」のこと。

女性が毎月苦しむ「月経」についてどれだけ科学的に解明されているの?とふと疑問に思ったので、2019年11月号の日経サイエンス、特別リポート「抜け落ちた視点 月経の科学的解明」を参考にまとめておきたいと思います。

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◇ そもそも「月経」って必要なの?

実は、「月経」があるのはヒト・チンパンジー・コウモリ・ハリネズミなどの一部の動物に限られています。大部分の哺乳類は発情することで生殖可能のシグナルを出し、メスは排卵し、生殖器の膨張や行動の変化、体臭の変化などによって性的受容性を表します。

この発情期がある哺乳類は月経周期の終わりには子宮内膜組織を再吸収します。それに対して、ヒトは大胆にもその組織を剥離してしまうのです。

月経がナゼヒトで起こるのか?80%以上の女性で月経開始前に痙攣・腹部の膨満・疲労・怒りの衝動が起こるのか?わかっていないことが多いようです。月経周期研究会の会長のTomi-Ann Robertsは「月経についてはほとんど何もわかっていない」と言っているそうです。

◇ 「月経」の研究が進まない理由

女性にとっては毎月やってくる大問題。でもなかなか研究が進まないのはなぜでしょう?それは、月経に対する「タブー感」。月経に対して表立ってサンプルを募集しようとしてもなかなか集まらなかったり、研究費の確保が難しかったり...この分野での研究費の規模はかなり小さいようです。

この「月経」に対するタブー感は、様々な民族の文化風習にもみて取られます。1920年のウィーンの小児科医の研究では、月経中の女性に花を活けてもらうと数分で萎れるなど、なんの根拠で言っているのかわからない研究を色々とこじつけて月経中には毒素が出る「メノトキシン」なるものが出ているという議論もされていたそうです。

1950年代になると、看護師のMargaret Sangerが「受胎調節は女性にも男性にも開放を意味する」と書き、今の「ピル」の研究を始めます。この「ピル」は1960年にアメリカ食品医薬局(FDA)に承認されます。が20%程度の女性が吐気、頭痛、めまいなどの副作用を訴え、臨床試験から脱落します。副作用が強すぎると一般的には薬として認められないはずなのですが、「ピル」は飛躍的な進歩だと絶賛され市販されるようになります。

人類は、「なぜ月経が起こるのか?」よりも「月経を止める方法」を先に見つけてしまったのです。

「なぜ月経が起こるのか」という問題に科学者が本気で取り組み始めたのは1980年代後半になってから。

◇ 現代の女性は「月経」回数が多い 

進化生物学者のBeverly I. Strassmannは、ヒトの歴史を通して見ると月経はかなり頻度の低い出来事だったという論文を1997年にCurrent Anthoropology誌に発表しました。

現在のような避妊しにくい社会の女性は、若い年齢で妊娠し、より多くの赤ちゃんを産み、より多くの時間を授乳に費やす傾向があった。マリのドゴン族の女性は一生に100回程度しか月経を経験しません。それに対して平均的なアメリカの女性は生涯に400回も月経を経験します。単純計算で四倍も数が違うのです。

月経がそれほど頻繁ではなかったということは、月経で出血という自ら不利益になること(鉄分やタンパク質などの栄養分を失うこと)を進化させたのかの手掛かりになるのではないかと考えられています。

また月経前と月経中の1週間程度、女性にとって精神的にも身体的にも辛い期間に(月経前症候群:PMS、月経前不快気分障害:PMDD)関しても研究が進んでいるようです。2014年のMichael Gillings(分子進化学者)の論文では、PMSはつがいの間に緊張感を引き起こし、女性が生殖能力のない男性との関係を解消するのを促すことで、自然選択状有利に働いたのだと主張しています。が、この主張にも様々な反論があるようです。

◇ 「月経をなくす」よりも科学者がやるべきこと

1950年代に開発された「ピル」によって多くの女性が「月経」から解放されました。でも「ピル」を服用することで乳がんのリスクや、血栓ができやすくなり卒中が起きるリスクが上昇することがわかっています。

それよりもまず、「月経とは?」の原点に立ち返って研究を進めて「月経」と向き合えるようになれると良いのではとも思います。(毎月来て辛いんですけどね...)そして、その研究成果を男性の方々にも広めることができたら、もう少し女性の毎月経験する辛さを分かち合えることができるのではないかとも...(期待しすぎ?)

「月経を止めること」で得られるメリット・デメリット、「月経を止めないこと」で得られるメリット・デメリットをもう一度整理してより女性に優しい・有効な治療法が開発されることを期待しています。


それでは、また!

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