そのゲームの「体験版」、逆効果かも……。
というお話をいくつかの視点からします。
「体験版」の意味
ゲームの体験版、あるといいですよね。ゲームのパッケージから面白いか面白くないかが断片的にしか伝わってこないのに、5000円~9000円をポンと出すのはなかなか勇気がいることです。
そんなときに役立つのが体験版! ゲームの冒頭部分を遊んで、このゲームが自分にとって面白いかどうか、もっとこれを遊びたいと思うかどうか判定することができます。ありがたいですね。
得をするのはユーザだけではありません。予め not for me な顧客を弾いておくことで、レビューの内容が上向きになります。人によってどんなゲームに惹かれるかは千差万別なのですから、うまく棲み分けることで平和を模索できます。
……が。実際のところ、ゲームの体験版は諸刃の剣で、盲目的に出していいものではないのではないか、というのがこの記事のテーマです。
発売前にゲームの体験版を出す意味は無い!
一例として、Steamでゲームを見た時のユーザの行動心理をフローチャートに起こしてみます。
……お気付きになりましたか。体験版が存在することで、かえって潜在的なプレイヤーが失われてしまうのです。
もっとも、その体験版が完璧に製品版の面白さを体現していて、ここで離脱するプレイヤーは絶対製品版も楽しめない、と思うのならこれでいいかもしれません。が、体験版は体験版。開発中の体験版で100%そのゲームを評価できるユーザーはいません。ましてや、PV を見た時点では面白そうと思ってくれたのです。
「面白そうだけど、体験版が無いならスルー」みたいな奇特なユーザーが増えれば話は別ですが、今の所無視して良い母数でしょう。とりあえずウィッシュリストに入れておけば後で見られるんですから。
もっと言えば、現状 Steam の仕様として、体験版を落としたからといってウィッシュリストに登録されるとは限りません。ウィッシュリストに登録するかどうか試すために体験版を落としておいて、面白かったけどウィッシュリストに登録するの忘れてた!→発売日スルー、なんて悲劇も普通に起こりえます。い、意味ない……。
何故こうなる?
発売前のゲームでは、「このゲームに興味がある」プレイヤーが起こせるアクションが「ウィッシュリストに登録」で止まってしまうためです。例えば、ゲームをリリースした後はウィッシュリストに登録させるだけでなく購入まで進んでもらうために、プレイヤーに試遊してもらうのはありでしょう。が、ウィッシュリストに登録してもらうために体験版を出す必要はないのです。
Steam 以外は?
プラットフォームに因ると思います。ウィッシュリストに準じる、お気に入りにチェック・リマインダーに追加的なアクションがあるものでは、大体同様のことが言えるでしょう。逆に、体験版しかないプラットフォームにおいては、体験版をDLすることでライブラリにゲームが一旦入りますので、導線になる可能性があります。
例外
ただし、どんなものにも例外はつきもの。Steam の公式ドキュメントにもこうあります。
ゲームの内容がわかりにくい
そもそも PV を見てもゲームの面白さが全然わからないゲーム、ありますよね。特にサンドボックス系ではその落差が顕著です。ゲームの内容がわからなければ、ウィッシュリストにも登録してもらえませんし、他の人に「面白そうなゲームだよ!」と伝えてもらうこともできません。そういったゲームは、遊んでもらってナンボでしょう。
*冒頭のスクショのゲームはまさにこのパターンですね。
ただ、大多数のゲームにおいては、PV を見て内容が伝わらないのは PV やストアページの作りが下手くそすぎるせいです。体験版出しても登録数が全然伸びないならそういうことなのでがんばりましょう。
展示会 / Steam Next Fest
展示会での試遊は全く違う側面を持ちます。ここでは、熱量が命です。展示会の最も大きな目標とは、対面で自分のゲームのファンになってもらうこと。その熱量が、他の人へと伝わっていくのです。それなら、ムービーだけの展示なんてもってのほかですね。体験こそが命です。
Steam Next Fest. (知らない?今すぐ調べましょう)も同様で、体験版ありきのイベントです。しっかりとプラットフォーム側で動線が用意されているイベントは、その作法に従いましょう。
ちなみに、こういった試遊が前提のイベントでは、ロケーションテストも兼ねますので、作ったゲームが想定通りにプレイヤーに受け取ってもらえるか、そういったことを試す場としても有効活用できます。
有料体験版 / 同人即売会での体験版
有料で売る体験版もまた、無料体験版とは別の性質のものです。偉い人は言いました。体験版は七回までOKだと。
同人ゲームの文脈では100円~300円くらいで体験版を売る行為が文化としてありますが、それは進捗報告とサポーター作りを兼ねています。金銭的には微々たるものかもしれませんが、お金を出してまで自分のゲームを買ってくれる人がいるというのは大きな励みになるものです。そう、ゲームクリエイターはみな孤独……。孤独な戦い……。
え? 本当は製品版を出すつもりだったけど全然間に合わないから体験版になった? 知らない話ですね。
発売後にゲームの体験版を出す理由?
じゃあ、発売後ならいいのか?
基本的には○です。購入を迷っているプレイヤーに、とりあえず体験版をダウンロードさせる、というハードルの低いアクションを用意することは間違いなく購入に繋がるでしょう。
ネット対戦できる体験版がバズる話もたまに聞きます。
ただし、あなたが個人開発者なら、「体験版を出すコスト」のことを考えましょう。確かに、そこまで高くはないかもしれませんが、体験版専用の処理の切り分け、フローの整理、動作確認、古い体験版ROMの更新……。意外とめんどくさいです。その作業に追われるよりも、アップデートを頑張った方がいいかもしれません。Steam や一部のプラットフォームにはそもそも返金制度とかありますし。
まとめ
発売前に体験版を出すのはよく考えてから。
発売後に出す場合も、コストも考えましょう。
オマケ:クラウドファンディングとかパトロン系サービスはどうなの?
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