『昔話の深層』河合隼雄
河合隼雄がユング心理学の視点から古くから伝わる昔話を考察した本です。
私たちが知っているグリム童話を中心に紹介されているので、よく知る話も多く新たな角度からもう一度読み直したくなる内容です。
特に序文でユングの体験を通して、昔話を通底する“瞬間”の考察はとても興味深かったです。
ユングが東アフリカの山中に滞在中、住民が日の出の際の太陽を崇拝するのを知り「太陽は神様なのか」と尋ねます。すると住民はまったく馬鹿げた質問だ!とそれを打ち消しました。
ユングは、そのとき空高く昇っていた太陽をさして「太陽がここにいるときは、君らは神様じゃないというが、東の方にいる時は神様だという」と、さらに追求しました。
すると老村長が「あの上にいるときは太陽が神様でないことは本当だ。しかし、太陽が昇るとき、それが神様だ」と説明しました。
これを受けてユングは「私たち人間の魂には古くから光への憧憬があり、暗闇から脱出しようという抑え難い衝動があったのだと理解した。」とあります。
朝日の生誕は解放をもたらす。
つまり、光の来る“瞬間”が神で“ある”。
太陽が神だといってしまうと、その原体験は失われ、忘れられてしまう。
この体験は合理的な解釈は困難かもしれないが、確かに人間の心には存在するのだ。
そして「瞬間が神である」という決定的な瞬間を数多く、われわれは昔話に見出す事ができる。と記しています。
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