第2章 今さら聞けない名刺交換の話
名刺の準備3つのポイント
名刺は絶対に切らさない
顧客訪問の前に、カバンに名刺が入っていることを確認しましょう。会社から支給された名刺の場合、受け取った時点で記載内容にミスがないか確認しておきます。新しい名刺を受け取ったら、情報が古い名刺は破棄します。
カバンに入れる名刺は、名刺を切らさないように多めに用意しておくことが重要です。基本的には、その日に会う人数にプラスアルファで20枚程度持っておきましょう。予備の名刺は、百円ショップで購入できる薄型の名刺入れに入れてカバンに忍ばせておくと安心です。
名刺は自分の分身として扱う
名刺は自分の分身だと考え、大切に扱いましょう。折れたり汚れたりしたものは使用せず、破棄します。名刺を持ち歩く際は、名刺入れに入れてカバンかスーツの内ポケットに入れておきます。ズボンのお尻のポケットから、お尻でしっかりプレスされて反り返っている名刺を渡されたりしたら相手はかなり嫌な気分になります。
良い名刺入れを持つ
商談中は名刺入れを必ず机の上に出しておくため、お客様の視線に入ります。そのため、百円ショップで購入したようなアルミやプラスチック製の安価なものは避けましょう。すでに持っている場合は、予備の名刺入れとして活用しましょう。
高級ブランドの派手な色や柄の名刺入れも営業には適していません。男性であれば、黒、濃紺、こげ茶などの落ち着いた色の革製品が好ましいです。革製品は高級感があり、耐久性も高いです。また、仕切りが1つとポケットが1つあるシンプルなデザインが使いやすくておすすめです。
価格は3千円から1万5千円前後で高見えするものを探すと良いでしょう。名刺交換は営業にとって重要な場面ですから、適切な名刺入れを使って好感度をアップしましょう。
名刺入れを選ぶ基準
国産の名刺入れがおススメ
私が名刺入れを選ぶ基準は、財布を選ぶ基準と同じで、価格よりも使いやすさを重視しています。
お客様と名刺交換をする際に相手を待たせたくないので、名刺が取り出しやすい形状のものを選んでいます。ファスナーやボタン付き、ベルトで止めるタイプの名刺入れがありますが、実際に触ってみて名刺が取り出しやすいかを確認しています。材質も合皮、牛革、馬革など様々なものがあるので、柔らかいものを選んでいます。海外メーカーの名刺入れは、名刺のサイズが微妙に違うので実際に手に取って検討しましょう。
名刺は分けて収納したい
もうひとつの選択基準は、自分の名刺を入れるところとお客様の名刺を入れるところが区別できるものを選ぶことです。以前、慌てて名刺を取り出したら、別のお客様の名刺を手にしたことがあります。取り出したところで気づいたので、気まずい状況にはなりませんでしたが、余裕がないように見えてしまったかもしれません。それ以来、私は名刺入れは通販で見栄えの良いものを買うのではなく、店舗で手に取って購入するようにしています。
名刺交換のタイミング
名刺交換は、お客様に良い印象を持っていただける第一歩であり、営業活動において非常に重要な要素です。営業担当者が初めてお会いするお客様と最初に行うのが名刺交換であり、営業職以外でも、名刺交換のマナーは必要とされます。新しい部署やプロジェクトに配属されたとき、セミナーや研修などで他社の人と知り合ったとき、取引先や顧客と初めて会うときなど、名刺を交換する機会は必ずあります。
名刺交換は、コミュニケーションの最初の入口を開く役割があり、相手に与える第一印象となる重要な場面です。正しい名刺交換の手順を覚えて、相手に好印象をもってもらうようにしましょう。
名刺交換時の注意点
名刺交換の手順
社会人となって日々の仕事の中で慣れてしまった名刺交換の手順ですが、惰性になっていないか見直してみましょう。次に名刺交換の手順を示します。
名刺を渡す前に軽く会釈する。
名刺を出し、名刺入れの上に乗せ胸の高さで両手で持つ。
差し出すときに相手の目を見る。
名刺を渡す前に一呼吸「間」を置く。
相手の視線を確認し、名乗ってからお辞儀をする。
右手を使って自分の名刺を差し出し、相手の名刺入れの上に置く。
同時に自分の名刺入れに置くように、左手で名刺を受け取る。
名刺を交換後、読みにくい名前はその場で確認する。
名刺の裏側を確認する。
相手のことを確認する。
自分の名刺交換の手順と比べて抜けているところや雑になっているところはありませんか?
手順が多く感じるかもしれませんが、慣れてくると流れるような所作で名刺を交換できるようになります。特にお客様の視線を確認する点は重要です。自分がお客様の立場になって名刺を交換すると分かりますが、視線を合わせることなく名刺交換をすると、相手に興味を持っていないという印象を与えてしまいます。
名刺交換は立って行う
名刺交換は、必ず立った状態で行います。法人営業の場合、受注側(お金をもらう方)から先に名刺を差し出します。また、複数の人が商談に参加した場合、他のメンバーが名刺交換を終えるまで立って待ちましょう。
目上の人から順番に交換する
複数人と交換する場合は、役職が高い順に名刺交換を行います。既存のお客様に上司を紹介するために連れてきた場合は、「上司の○○でございます」と名刺交換の前に伝えましょう。受け取った名刺は商談中、順番通りに並べておきます。
名刺は相手が見やすいように向きで渡す
名刺は、自分の会社名や名前が相手に読みやすい向きで名刺入れの上に置いて渡す準備をします。自分が読める方向で持ち、時計回りに回して向きを変えてから渡す方法もありますが、簡潔に渡すことが望ましいです。
名乗ってからお辞儀をする
相手の顔を見ながら「A社の営業のBと申します。よろしくお願いいたします」と名乗り、その後お辞儀をします。相手の名刺を見たり、名乗りながらお辞儀をして頭を下げたりしないように注意しましょう。顔を下に向けると、お客様が声を聞きとりにくくなります。
名刺に書き込まない
お客様からいただいた名刺にメモを書き込んではいけません。名刺は、会社の顔であり、メモ帳ではありません。例えて言うなら、顔にペンで何かを書かれたような気持ちになります。名刺を渡した相手も、良い気分ではありません。
名刺のコラム
ここまで、名刺に関して偉そうに御託を並べてきましたが、実は営業人生最大の失敗にして汚点、黒歴史があります。
それは、大事な商談で名刺を切らしたことです。
その日の午後は、上司と先輩に同行して大手のお客様を訪問する予定でした。前日に客先から直帰して、朝から他のお客様に直行をしたため名刺を全て使い切っていたのです。名刺交換が始まったところで「申し訳御座いません。名刺を切らしておりまして」と謝罪しながらお客様から名刺を受け取りました。
名刺を切らしてしまったことにテンパっていた私は、商談中にお客様に名刺を渡せなかったことしか考えられなくなり、なんとかしなければいけないと焦っていました。そして、「先輩の名刺3枚貰えますか?」と隣席に座っていた先輩から名刺を3枚譲ってもらいました。
商談の最中にあろうことか先輩の名前に線を引いて自分の名前を書き換えたのです。そして、商談終了後に「先ほどは、名刺を切らしてすいません」と言ってお客様に渡してしまったのです。
今から考えるとあり得ない行動です。お客様にも、先輩にも非礼な行動です。今の私が隣にいたら必ず制止していたと思います。
仕事を長く続けていると名刺を切らしてしまうという失態は、一度や二度はある事です。しかし、それを正しい方法でリカバリーすることが大事です。