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#15 映画『西原村』
以前、「#8 私の専門」で紹介したとおり、被災地の創造的復興に向けて、コミュニティが回復・適応を図る能力である「コミュニティ・レジリエンス」を研究しています。
そもそも災害は「非日常」よりも、更に稀な「非常事態」なわけで、例外中の例外的な事例になるわけですが、個人としての再起力、集団としての迅速な合意形成、更には、個人、家族、コミュニティ、地域、国といった多層間の摩擦や協調、自己組織化に崩壊、あるいはレジーム・シフトと、注目すべき要素が多々ある事象であると考えています。
このような極限状態とも言える状況下で、発揮される地力や潜在力が、個人やコミュニティ、地域社会の真価ではないかと思って、言葉は悪いかもしれませんが、興味深い対象として、研究に取り組んでいます。
そんな中で、ふとした経緯から入手することになった、映画『西原村』のDVD。
2016年4月の熊本地震で甚大な被害を受けた西原村の住民たちが、復興に向けて歩んだ2年間の記録を描いたドキュメンタリー作品で、地震により、一夜にして約1,200人が住居を失い、住民たちは地元で再建するか、断層から離れた場所へ移り住むかという選択を迫られる中、 地域や家族内でも意見が分かれ、苦悩しながらも、村全体で復興に向けて取り組む姿が描かれています。(映画公式サイトはこちら)
先日、訪問した和倉温泉でも感じたことですが、心に空虚感が満ち、宙づり状態になっている住民や事業者に対して、「今後のこと」を伺うのは非常に心苦しいものがあります。
また、刻々と変化する復旧・復興状況に応じて、地域の人々の心の揺らぎも大きくなったり、変化したりということで、災害の復旧・復興に関する研究を行うのであれば、時間をかけて、その地域の人々と向き合う必要もあります。
個人の研究としては、時間もコストもかかる研究分野になるのですが、この作品のおかげで、2年間にわたる地域住民をはじめとした主要なアクターの言動や心情を概観することができ、どのような視点でリサーチデザインを組み立てるか、大いに参考になりました。
また、映画作品としても、危機や苦難から立ち上がる人間の強さや、災害によって分断されたつながりが自己組織化、そこから再生へと至る軌道に乗る様子も丁寧に描かれていて、私の心象風景に近い西原村の様子も相まって、私自身の涙腺もかなり緩んでしまいました💦
自分にとっては縁遠かった「災害復興とその後の地域振興」がどんどん近くなっていることを感じています。