小・中#12-2: What time is it? 「今何時ですか」(後)
前回から “What time is it?” 「時間を尋ねる」をテーマにSmall Talk の展開を考えています。
「時間を尋ねる」言い方として “What time is it?” という表現を導入する時には、「まとまりのある表現」に音声で慣れ親しみ、それを単語ごとに区切って構造を細かく気にすることなく、とにかくそのまま言ってみることを大切にします。すなわち「音のまとまり」として真似て発音しながら、いつのまにか自分で言えるようになっている。授業はじめに毎回、指導者が児童に尋ねることだからこそ、いつの間にか習得できている表現のひとつです。
前回はまず、その慣れ親しみを促すために、時計の実物を使いながら、それが指した時刻を尋ね合うやり取りを例示しました。
T: What time is it?
Ss: It’s seven thirty.
ただし児童が新たな表現に慣れ始めたら、この後に既習表現を用いて一往復程度、対話を発展させることを提案しました。児童が「その時刻と自分との関わり」を少しでも感じられるようなやり取りにするためです。具体的には “What do you usually do at ~?” という問いを使って展開例を示しました。
T: Yes, it’s seven thirty. What do you usually do at seven thirty on Sunday mornings, … S1?
S1: … sleep?
T: Oh, you’re still in bed at seven thirty on Sunday mornings.
こうしたやり取りの場合、いつも指導者が「時刻を尋ねる役」だと、児童が “What time is it?” と「言ってみる」機会が限られます。何度も指導者が言うのを聞いて親しんだタイミングで、今度は以下の表現で児童からの問いかけを引き出しましょう。
Ask me.
これはどのような「尋ね合い」の表現を導入する時にも用いることができる、非常に便利な表現です。
● OK. Now, you ask me.
● Now, you can answer the question. Then, ask me the same question.
● Now your turn. You want to know the time. What do you say?
などと様々に役割交代を告げることができますが、ただ一言 “Ask me.” で「今度はみんなが先生に尋ねる番だよ」というキュー(cue)にしておけば、テンポ良くやり取りを続けることができます。
さらに前回は、いつも「時計などで提示された時刻を英語で言ってみるだけ」の活動ではなく、少し計算の要素を取り入れ、クイズ形式で覚えたばかりの表現を言ってみる展開もご紹介しました。
① It’s three twenty.
② Fort-five minutes have passed. What time is it?
60進法の計算も兼ね、楽しく行える活動のひとつですが、大切なのは①と②を言う時に、立ち位置を変えることです。時間の流れを視覚的に示す。“~ have passed.” の表現が未習であるからこそ、この意味をイメージで理解させておくことが、このクイズを有意味なものとするために必要です。
今回は、このように「時間を尋ねる」⇒「時間を答える」という表現に慣れ親しんだ段階から、さらに「時間を尋ねる」表現に関連してどのようにやり取りを発展できるか考えます。
【展開例3】
すでにお気づきになっておられると思いますが、ここまでの記事の中で、“What time is it?” を「『今』何時ですか」の意味で用いているのは、前回の冒頭で示した「授業はじめのやり取りの場面」のみです。他は示された時計が指す時刻や、話し手が設定した時刻を参照しています。「今」の時刻であれば、“now” を含めて明確に示すか、あるいは状況から判断することになりますが、このことにさりげなく気づかせる仕掛けも可能です。
T: I like playing the piano. So I like music time. My favorite time is music time. What is your favorite time, S1?
S1: My favorite time is lunch time.
T: Oh, lunch time! And what time is it?
S1: Twelve twenty-five.
T: Yes, our "school lunch" time begins at twelve twenty-five. I'm hungry. Oh, what time is it NOW, … S2?
S2: It's twelve fifteen.
T: Yes! It’s twelve fifteen now. Lunch time in ten minutes. We’re almost there.
「今何時ですか?」という質問を授業の中で、自然なやり取りとして繰り返すのは、なかなか難しいものです。児童に "What time is it?" "It's ~." という表現を導入して、ペアでやり取りの練習を行ったとしても、以下のようにしか響きません。
児童1: 今何時ですか?
児童2: 10時20分です。今何時ですか?
児童1: 10時20分です。
だからこそ、上で示したように「好きな時間は何の時間か」を伝え、「それが具体的に何時かを尋ねる」というやり取りに続いて、視点を「今」に戻し、「今の時間を尋ねる」表現を児童に意識させてみてはいかがでしょうか。
その後は、「自分の好きな時間」を児童一人一人が理由を添えて伝えられるように、やり取りを続けます。
T: Hi, S3. S2 likes lunch time. How about you? What is your favorite time?
S3: I like soccer time.
T: You like soccer time. What time is it? What time is the soccer time?
S3: Three forty.
T: It’s three forty. You play soccer after school.
S3: Yes. I like soccer very much.
T: Good. I know you’re a good soccer player.
ここでさらに、1つ新しい表現を導入することもできます。
〔空腹のジェスチャーで教室の時計を見ながら〕
T: I’m hungry. What time is it, … S4?
S4: It’s twelve fifteen.
T: Oh, ten minutes to go before lunch time …
〔約5分後に同じようなジェスチャーで時計を見ながら〕
T: I’m very hungry. Do you have the time, S5?
S5: Time? … twelve twenty.
T: Oh, thank you, S5. It’s twelve twenty. Lunch in five minutes.
時間を尋ねる表現としては “What time is it?” と同じくらいよく用いられる “Do you have the time?” という言い方。せっかく「時刻を尋ねる」活動をするのなら、こちらも一度は紹介しておきたいものです。
ただし “the” を落として “Do you have time?” と言ってしまうと「時間がありますか?」という意味になります(「ちょっと時間ない?(暇ですか?)」と遊びに誘うように受け取られることも)。ですので “the” を少し強調して聞かせるなどして、意識させます。
【展開例4】
上述の【展開例3】のやり取りのまとめとして、「自分のお気に入りの時間についてのスピーチ」を行うこともできます。なぜその時間がお気に入りなのかという理由を伝えるために、様々な既習表現を引き出すことができます。パフォーマンス課題として取り組んでもおもしろそうです。
My favorite time is music time. It’s two p.m. on weekends. I can sing well. And I like playing the piano. I want to play anime songs. I practice the piano every day.
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時刻を尋ねる "What time is it?" という言い方。音のまとまりで覚えて言えるようになる表現だからこそ、実際に Small Talk の活動で引き出す時には、その問いかけをする自然な場面や状況を設定することが大切です。
児童のペアやグループでのやり取りが、単なる機械的な「質問とそれに対する答え」の連続にならないこと。これを常に意識しながら、Small Talk の展開例を考えていきましょう。