《「外国語」授業動画配信 PROJECT 》学校現場での活用レポート ~ 安城市立安城西中学校 第2学年 ~ その2
実践編 ① Small Talk編 (1)
プロジェクト全体の把握から前半の Small Talk
安城市立西中学校 久保田 香直 先生
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英語教員向けに「授業づくり」や「授業改善」に向けた情報を発信している「英語情報web」では、臨時休校期間中の特別企画として、小・中学校の児童生徒に「英語の学び」を継続して欲しいという願いから、「外国語」授業動画配信プロジェクトに取り組んできました。
本プロジェクトの復習動画や指導パッケージを、実際に「外国語」の授業で活用いただいた中学校から、実践報告としてシリーズでお届けしています。今回はその第2回です。
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★「その1」の内容はこちらから ↓ ★
プロジェクト START!
《1回目の授業》
Back-to-School チャレンジ!指導計画全6回の1時間目。
◆学びの見通しをもたせる
新しいクラスメイトに自己紹介を行うこと、それに向けていくつかの Small Talkで話す練習をしていくことを告げました。発表につながる練習をしていくと知らせることにより、長い休校中に、英語を使う機会がほとんどなかった生徒たちが、前向きに取り組めるようにしたいと考えました。
◆目指す姿の共有
まず、上の「ルーブリック」のシートを配りました。今、自分が知っている表現を並べた自己紹介ではなく、話し方や伝え方、内容などについてどのような点に気を付けて自己紹介ができるとよいかをここで示しました。
そして、イメージをもたせるために、私が自己紹介の例をデモンストレーションしました。
” I show you my self-introduction. You judge my performance. OK?”(evaluateという難しい単語より、なじみのあるjudgeをあえて使用)
わざと、無表情、抑揚のない話し方、少ない文で自己紹介をしました。”How was it? Do I get A for all?“ とたずねると、生徒たちは口々に「ここは B」「ここは C」と厳しくジャッジを下してくれました。「2番のところ(話しかた)だけは、先生 A だったよ。声の大きさと話すスピードはよかった。」と返してくれた生徒に対して、周りの生徒も賛成。これで、生徒たちとルーブリック評価について共有できたと感じました。
次に、上に示した「復習ワークシート」と「My English Portfolio」を配りました。自己紹介という GOAL に向かって、どういった流れで Small Talk をしていくのか、それをどの程度できたのか振り返りながら自分の自信がもてる部分とまだ難しい部分を確かめていくことを話しました。そして、Google Classroom も活用して「英語情報web」上にある授業動画を家でも視聴できるようにすることも伝えました。
◆Small Talk に初めてチャレンジ!
さあ、Small Talkの1回目です。「復習ワークシート」の②③にペアで取り組みました。②のアルファベットを読むこと、シート下の「チャレンジ1」(1~20、曜日を英語で言う)は、2年生には楽勝だったようです。それでも、英語が苦手な生徒にとっては、スタートポイントが「楽に超えられる高さ」の方が安心できるので、ちょっと簡単すぎると思うくらいでよかったと思います。③は、生徒たちにトピックを選ばせました。あるクラスは「好きな動物」あるクラスは「好きな果物」というふうに。
ある生徒2人の会話です。〔原文ママ〕
A: Let’s talk about favorite animal.
B: OK. What animal do you like?
A: I like dog.
B: Oh, me, too! Anything else? What… animal …do you like?
A: I like panda. How about you?
B: I like cat.
A: I see.
生徒たちの会話の中で、"I see. Me, too." などのあいづちや "How about you?" など、教科書で学習したことだけでなく、1年生の時に Small Talk で学んだ "Why?" や "Anything else?" などの表現を使えている生徒がいました。言葉を自分のものにできていることが分かり、うれしく思いました。
続いて1回目の会話で言いたかったけれど英語にできなかったことをたずねました。私は1回(1分間)の会話が終わるごとに” Do you have any questions about English words?” と全体にたずねるようにしています。英語で言いたかったけれど言えなかった言葉を、時に生徒から引き出したり、時には私から提示したりして、次の会話でそれらを使うように促します。
同じトピックで相手を変えながら3回ほど Small Talk を行います。そうすることによって、話すことに慣れ、自分の言いたいことをできるだけ英語で表現しようとする気持ちを育てたいと考えています。
T: Do you have any questions about English words?
S1: What’s ハリネズミin English?
T: It’s a hedgehog in English. (黒板に簡単にイラストを描く)
S2: What’s ナマケモノ in English?
T: It’s a sloth in English. (黒板にイラストを描く)
相手を変えてさらに2回の Small Talk。1回目に硬かった生徒の表情がだんだんと柔らかくなりました。
◆学びを振り返る
その後、「My English Portfolio」で振り返りをしました。3匹のネコの違いを説明し、今回扱った項目について、チェックをしました。
以下が実際の生徒の振り返りです。
まだまだ「振り返りのしかた」についての指導が必要であることが分かります。すなわち、Can-Do 形式でまとめてある目標1つ1つについて、自分がどの程度「自分の力」でできるようになっているのか、「まだ難しい」とすればそれはどこなのか、を具体的に生徒自身の力で気づけるようになることが振り返りの目標です。それに対して、「できる or できない」だけの記述に留まってしまったり、「~できるようになる」ためには具体的にどうすればよいのかについて考えが及んでいなかったり、「頑張りたい」という一言で、何にどのように取り組んでいきたいのかを記述できていなかったりしています。この「振り返りのしかた」については、1つ1つ、具体例を示しながら指導(支援)していく必要があると感じています。
初回のSmall Talkの活動はここまで。
次回の予告をしました。誕生日と誕生日にほしいものについて話すことを「復習ワークシート」を示して説明しました。関連する授業動画を一部切り抜いて Power Point でスライドを作り、それを視聴しました。
さらに Google Classroom でも今日から見られるように動画を配信することを伝え、次への準備ができるようにしました。
《2回目の授業》
2回目の Small Talk では、「復習ワークシート」④「誕生日と誕生日にほしいもの」について話しました。今回の一連の Small Talk において、最も多くの生徒が「自信をもってできた」と感じているトピックです。そして、のちの自己紹介の発表の中でも自分の誕生日について話す生徒が半数以上いました。
先ほどとは別の生徒2人の会話です。
C: When is your birthday?
D: October 9.
C: What do you want your birthday?
D: I… want… a new T-shirt. How about you?
C: My birthday is May 19.
決められた(聞こうと思って用意している)ことを聞いたり、それについて答えることは予想がつくので「言うことができた」と感じ、自信をもってできたと多くの生徒が感じたのではないかと考えています。しかし、会話をつなげ、内容に幅をもたせるようなやり取りができるところに達している生徒は多くはありません。即興で返答する力はまだまだこれから伸ばしていく必要があると感じています。
上の C と D の会話の場合、D が ”I want a new T-shirt.” と言うのに対して、例えば C が ”What color do you want?” のように質問するなど、相手の言葉に関連した問いかけができるように指導していきたいと思っています。生徒たちの約半数が「すぐに反応したり、会話を続けられるようになりたい」と振り返りにも記述しています。
Small Talk を終えて、振り返りを行い、次回の予告動画を見ました。方法は前回と同様にスライドの中に動画の一部を取り入れた形です。「復習ワークシート」の⑥を見ながら、朝起きてから寝るまでにすることを5つ考えておくように伝え、この日の活動を閉じました。
久保田 香直 先生
〈記事2につづく〉