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【映画レビュー】狂気の愛が作家を絶望の淵に突き落とす『ミザリー』
人気作家のポール・シェルダンは、雪道で事故に遭い、意識を失っていたところを元看護士のアニー・ウィルクスに救われる。人里離れた彼女の家で手厚い看護を受けるポール。彼は最初のうち、助けられたことを幸運だと思っていたが、次第にアニーの様子がおかしいことに気づく。彼女はポールの最新作に激怒し、彼を監禁してしまうのだ。熱狂的なファンだったアニーの愛は狂気に変わり、ポールは絶望的な状況に追い込まれていく。雪に閉ざされた山荘で、一体何が起こるのか…。
この映画の見どころは、何と言ってもその緊迫感だ。逃げ場のない密室で、徐々に狂気をあらわにするアニーと、絶望に打ちひしがれるポールのやり取りは、観ているこちらまで息が詰まるほどだ。特にアニーを演じたキャシー・ベイツの演技は圧巻だ。普段は優しそうな彼女が、ふとした瞬間に見せる狂気の表情は鳥肌ものだ。彼女の怪演が、この映画の恐怖を何倍にも引き上げていると言っても過言ではない。
それから、この映画は心理描写が本当に丁寧だ。ポールの焦燥感や恐怖、アニーの歪んだ愛情がこれでもかというほど伝わってくる。特に、アニーが過去の出来事を語るシーンは、彼女の心の闇を垣間見るようで、ゾッとする。
本作を観終わった後、しばらく放心状態だった。人間の心の闇、愛と狂気の境界線、そういうものをまざまざと見せつけられた気がした。アニーの歪んだ愛情は本当に恐ろしい。愛が深すぎるあまり、相手を自分の所有物のように考えてしまう。それはもはや愛ではなく、ただの執着、狂気なのかもしれない。