【映画レビュー】昭和の事件が、今、再び息を吹き返す『罪の声』
昭和最大の未解決事件をモチーフに、過去の事件に翻弄される二人の男の姿を描いた作品。新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、30年以上前の事件を追う特別企画班に選ばれ、真相を求めて取材を重ねる。その事件では、犯行グループが脅迫テープに三人の子どもの声を使用しており、そのことがどうしても気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、父の遺品の中にカセットテープを見つけ、その声が自分の幼いころの声と同じであることに気づく。昭和最大の未解決事件の真相を探る二人の運命が交錯し、物語が進んでいく。
この映画の見どころは、実在の未解決事件をベースにしているため、フィクションと現実の境界が曖昧になる感覚だろう。例えば、脅迫テープに使用された子どもの声や、学生運動の挫折がもたらした社会的な混乱など、現代にも通じるテーマが描かれている点が興味深い。観る側としても、事件の真相に対する興味が尽きない。
また、映画全体を通して感じられる映像美と緊張感も素晴らしい。特に、昭和の時代を再現した映像は、当時の雰囲気を見事に捉えており、その時代に引き込む力がある。
私は本作を見て、昭和の未解決事件を題材にしながらも、今なぜこの映画が作られたのかがしっかりと考えられていて、強い説得力を感じた。また、映画の中で描かれる昭和から平成、そして令和への時代の移り変わりも非常に興味深かった。事件の爪痕は現代にも影響を及ぼしているというメッセージは、深く胸に刺さる。
本作は、昭和の事件を題材にしながらも、現代の視点を持って作られている。過去と現在、そして未来をつなぐ物語として楽しめる作品だ。